歳をとれば、突然死でない限り、誰でも要介護や認知症になります。
これは自然の摂理であり、当たり前のことです。
でも、どうして、その時にバタバタと慌ててしまうのかといえば、「いつ」「何が原因で」「どのような要介護状態になるのか」を事前に想定できないからです。
ただ、全く想定できないという訳でもありません。
高齢の親が要介護になるルートは、大きくわけて四つあります。
① 身体機能がゆっくりと低下していく
一つは、身体機能がゆっくり低下していくケースです。
歳を重ねるごとに、筋力・体力、骨密度を含め身体の機能は低下していきます。
【ゴミが出せない、お風呂で転んだ、外に出るのが億劫だ・・・】
【目が見えない、耳が聞こえにくい・・・】
わたしも、あなたも歳をとれば、みんなそうなります。
ただ、そうバタバタと慌てる必要はありません。要介護といっても、始めは要支援や要介護一くらいからスタートです。だから、今と変わらない環境で、同じように生活をしてもらうのが基本です。困っていることを聞いて、必要な介護サービスや見守りサービスなどを導入します。

② 骨折や脳梗塞などで、一気に要介護に
二つ目は、病気や怪我で、一気に要介護状態になるケースです。
【自宅内で階段を踏み外して、大腿部を骨折した・・・】
【脳梗塞や脳出血になって、身体に麻痺が残る・・・】
これも多いケースです。特に、75歳以上の後期高齢者の場合、治療が終わっても、麻痺が残ったり、車椅子生活になるなど、一気に要介護3、要介護4となることもあります。突然電話がかかってくると、ショックを受けると思いますが、ゆっくり考える時間はありますから、そうバタバタと慌てる必要はありません。
怪我や病気からの回復状況によって、住宅改修をして家に戻るのか、介護機能の整った施設や高齢者住宅に入居するのか、介護休業を活用しながら、じっくりと、生活環境を整備することができます。

③ 検査で初期・軽度の認知症だと診断された
三つ目は、認知症で認知機能がゆっくり低下していくケースです。
歳を重ねるごとに、身体機能の低下と同じように、脳の機能が少しずつ低下していくことも、避けられません。
【時間や曜日がわからなくなる。何度も同じ話をしたり聞いたり…】
【いつもあっている人なのに、名前や関係性が上手く思い出せない…】
検査などで、認知症だとわかれば、ショックを受けると思いますが、これも、そうバタバタと慌てる必要はありません。
認知症でも、初期の場合、今と変わらない環境で同じような生活が可能です。
今は、進行を緩やかにする薬もあります。お医者さんとも話をして、介護休業制度も活用しながら、困ったこと、できないことを把握し、必要な介護サービスや見守りサービスを導入します。

④ 気づいた時には認知症が相当進行していた
そして、四つ目が気付いた時には、認知症が相当進んでいたというケースです。
【夜間徘徊していて警察に保護されたと連絡があった…】
【近くに住む人から、家の中が大変なことになっている電話があった・・・】
実は、これまでの三つのケースは避けられませんが、この④のケースだけは、普段から電話をしたり、コミニュケーションを取っていれば、避けることができます。そして、このケースだけは何とか避けたいのです。
一人で生活することはできませんから、すぐに誰か家族が付き添わなければなりません。すぐに入所・入院できる老人ホームや病院を探す必要がありますが、そう簡単ではありませんし、本人は納得しないでしょうから、感情的にも精神的にも相当、大変な思いをします。

高齢者が要介護になるケースは、必ずこの四つのどれかに当てはまります。
述べたように、①~③のケースは、避けることはできませんが、それぞれに介護休業を取得して、ゆっくり、じっくりと対応することが可能です。
逆に、バタバタして大変な思いをするのは④の「認知症が相当進んでいた」というケースだけで、それさえ避けることができれば、「親の介護」はそう恐れる課題ではないのです。
しかし、多くの人は認知症を過度に恐れるあまり、「変な話をしているが、勘違いしているだけだろう…」「もう少し、様子を見てから考えよう・・・」と現実から目をそらしてしまいます。その結果、ある日突然、警察から電話がかかって、大慌てで対応しなければならなくなるのです。

そうならないために大切なことは、普段から認知症の話を親としておくことです。できれば、定期的に「健康診断」のつもりで、かかりつけ医で認知症の簡易検査を受けるように話をしましょう。認知症でなければ、それで安心ですし、仮に初期の認知症と判断されても、早く治療ができれば、それは全く恐れる病気ではないのです。
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