親子と言っても、成長につれて、関係性・距離感は少しずつ広がっていきます。
結婚をして、子供が生まれれば、田舎の両親に電話をするのは、数か月に一度、会うのは、お盆かお正月か、年に一回、二回程度となり、言われてみれば、親のことを何もしならないという人も多いでしょう。
そのため、要介護発生率が高くなる75歳、後期高齢者に差し掛かってきたころから、『突然、要介護や認知症になって大慌て…』ということがないよう月に一度は電話をして様子をうかがうなど、少しずつ、その広がった距離感を見直すという作業が必要になります。
ここでは、前回に続いて、親の介護に向き合うにあたって、多くの人がやりがちな失敗、親と介護の話しをするときの注意点についてお話します。
注意点 ③ すぐに答えを出そうとしない
三つ目は、すぐに答えを出そうとしないということです。
どうしても、一歩でも先に進もうとすると、答えを探してしまいます。これは特に、会社員やサラリーマンなど働いている人は陥りやすい失敗です。

子供が、そろそろ、将来のことや介護について考えるべきと思っていても、親はまだ、深刻に思っていないというケースも少なくありません。
高齢期になれば、期間の長短は別にして、ほとんどの人が要介護状態になるということは事実ですが、「介護が必要になったら…」という過程の話だけは、なかなか前に進みません。また、その時の年齢や要介護状態、子供家族の生活環境などによっても、できることや、必要な対策は変わってきます。
また、この段階での話は、『今すぐに、答えをださなければならない』というものでもありません。最初の一歩は『距離を縮める』『一緒に考え始める』ということです。介護の話やお金の話をするまでに半年、一年かかっても良いのです。
注意点 ④ ネガティブな話ではなく、ポジティブに
最後の一つは、ネガティブな話をしないということです。
介護が必要になったら、認知症になったらというのは楽しい話ではありません。
そんな話をしていると、暗いイメージしか思い浮かばず、介護の話や将来の話をすることがお互いにしんどくなっていきます。そうなると、「娘や息子から電話が買ってくるのが苦痛…」と、余計に距離を広げることになってしまいます。

そのため「要介護や認知症になった時にどうするのか…」というネガティブな話ではなく、「いまのまま、できるだけ長く、元気に、安全に、自由に、楽しく暮らせるためには、どうすべきか…」というポジティブな視点で話をするというこ都が大切になります。
実は、これが一番重要です。
逆に、ご両親の方が「介護が必要になったら…、寝たきりになったら…」「子供たちには迷惑かけたくないし…」と、あれこれ心配をしている人もいるでしょう。『認知症になったらどうしよう…』という不安が原因で、鬱病になったり認知症になったりという、笑えないような話もあるのです。
そんな不安に対しては、「いざというときは介護休業取れるから心配しないで…」「できるだけそうならないように、いまできることを一緒に考えようよ…」と励ましてあげてください。
親にとっても、子供にとっても、「介護の備えをする」ということ以上に大切なことは、できるだけ長く、今のまま元気に、安全に自宅で生活を続けてもらうことです。そのために、いま何をすべきか、どんなことをすれば、それがかなえられるのかを一緒に考え始めることなのです。
ここまで、二回にわたって、子供家族が親の介護に向き合い始める時の注意点について解説してきました。まとめると、
『感情的にならない、押し付けない、急いで答えを求めずに、ポジティブに行こう』
です。タイトルを『向きあい始める時』とした通り、親の介護に向きあい始めるときは、その最初の一歩がとても重要なのです。慌てる必要はどこにもありません。少しずつ、距離を縮めて、少しずつ一緒に考え始めることが大切なのです。
それができるのは、家族だけなのです。
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