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介護生活環境の整備 Ⅲ  ~入院から自宅へ戻る~


 三つめは、骨折事故や脳梗塞などによる入院です。
 高齢者にとって大腿骨骨折や脳梗塞は、要介護になる大きな要因です。インフルエンザ、コロナ感染でも肺炎を併発するなど重篤化するリスクが高く、廃用性症候群によって、誤嚥性肺炎など様々な症状を引き起こします。この入院による要介護は、ここまでの「緩やかな身体機能の低下」「緩やかな認知症の発症」と違い、要介護状態が一気に重くなるため注意が必要です。

 まずは病気やケガを直すこと、そして身体機能が低下しないようできるだけ早期にリハビリを行うことです。入院すると、『もうだめだ…』とショックでふさぎ込んでしまう高齢者は多く、そのまま寝たきりになってしまう人は、少なくありません。
 ここで、絶対にやってはいけないことは、「自宅に戻れない」「すぐに入れる老人ホームを探そう」とすることです。「安心・快適」「すぐに入居可」という事業者は、百%、悪徳事業者か素人事業者です。「聞いた金額と違う」「こんなはずではなかった」となります。
 身体機能を完全に戻すことができなくても、「杖を使って部屋内の歩行やベッドへの移動が可能」「車いすだけど、排泄は一人でも可能」となれば、自宅に戻って生活することは十分に可能です。
 入院中の要介護認定申請から退院、自宅に戻るまでの流れとポイントを整理します。

入院から自宅に戻る時の生活環境整備のポイント

 入院時に頼りになるのが、メディカルソーシャルワーカー(MSW)と呼ばれる医療相談員です。
 入院中の困りごとや不安、その後の要介護認定など、わからないことは医療相談員に聞きましょう。より専門的な機能回復府訓練ができるリハビリ病院への転院のサポートもしてくれます。転院先のリハビリ病院にもMSWは配置されています。

 要介護認定は治療が終わり、リハビリを通じて要介護状態が安定してからとなります。
 最初に入院した病院ではなく、リハビリ病院に転院してからということもありますから、その時期については、MSWや地域包括支援センターと相談、調整します。
 ただ、自宅に戻ってからすぐに介護サービスが受けられるように、要介護認定の申請は入院中に行います。かかりつけ医がいても、意見書は入院している病院の担当医に書いてもらうことになります。

 75歳以上の後期高齢者が大腿骨の骨折や脳梗塞で入院すると、麻痺などの後遺症がなくても、要介護2~3の中程度の要介護になる可能性が高くなります。そのため、ケアプランを作ってくれるケアマネジャーの選任が必要になります。病院のMSWや地域包括支援センターに、信頼できるケアマネジャーを紹介してもらいましょう。
 この担当のケアマネジャーと一緒に、自宅に戻った時にどのようなサービスを導入するのかを検討します。介護ベッドを導入したり、介護看護サービスの時間を決めたりと、自宅に帰ってからの生活環境を整え、退院後の準備をしていきます。

 要介護認定がでるまで、申請・調査から一ヶ月程度かかります。
 ただ、申請が終わっていれば、介護保険のサービスは利用できます。ひとり暮らしの場合は、要介護状態に合わせて、訪問介護(身の回りの世話)+訪問看護(医療管理)+通所介護(入浴・生活リハビリ)をバランスよく利用します。
 階段で二階に上がることは難しくなるため、自宅内でも「寝室+居間」での生活が中心となります。介護ベッドを導入したり、トイレまでの動線に手すりを付ける、夜間はポータブルトイレを利用するなど、寝室や居室中心に必要な住宅改修や模様替えを行います。
 また、骨折や脳梗塞などは、再発リスクが高くなるため、転倒時や脳梗塞・心筋梗塞の発症時にすぐに外部への連絡や緊急対応ができるよう、多機能電話やセンサーの設置、緊急対応サービスの導入なども検討しましょう。

入院から自宅に戻る時の介護休業の取得のポイント

 働いている子供や家族がいる場合、介護休業制度の取得を検討して、余裕をもって生活環境の整備かできるようにしましょう。
 ここでも、二回に分割して取得するのが基本です。
 
 一回目の介護休業の期間は、一ヶ月半~二か月程度です。
 退院の予定日は事前に病院から打診がありますから、それに合わせて介護休業取得日を決めます。日程の調整は、MSWが中心となって行ってくれるはずですし、二か月程度はリハビリ専門病院に転院することもできます。
 「すぐに退院しなきゃ」「どうすればいいんだ…」とバタバタと慌てる必要はまったくありません。

 介護休業取得のポイントの一つは、自宅に戻る退院の二週間程度前から取得することです。
 そうすれば、部屋の片づけやケアマネジャーと介護用ベッドの搬入や住宅改修、介護看護サービス、配食サービス導入などについてじっくり話し合いができます。
 また、退院の数日前には退院支援のためのカンファレンスが行われます。ここで本人・家族を含め、医師や看護師、医療相談員、担当のケアマネジャーが一堂に会して、退院後の生活の注意点などについて話し合います。これにも必ず参加をしましょう。

 もう一つ重要になるのが、退院後のモニタリングです。住み慣れた自宅ととはいえ、入院によって、筋力が低下したり、麻痺が残ったりと、身体機能は大きく低下しています。そのため、ここで、安全に生活できる環境が整っているのか、何か見落としていることはないかと、一緒に生活しながら丁寧に確認をするのです。この間に見つかった不安や課題について、ケアマネジャーと相談・調整します。

 後は、これまでと同じです。
 この一回目の介護休業取得で、生活環境の土台を整備し、あとは要介護状態の変化に合わせて利用するサービスの調整をしながら、生活を続けていくことになります。
 合わせて、地域包括支援センターの相談員や担当ケアマネジャーに、要介護状態が重くなって生活できなくなった場合、どのような高齢者施設、高齢者住宅があるのかなど、これからの話を聞くこともできます。この段階で、適切な介護環境の整備ができれば、これから先、何をすればよいかわかりますから、親子ともに、将来の介護不安は消えます。

 そして重度要介護になって、「これ以上、自宅で生活することは難しい」と判断したときに、残りの一ヶ月~一ヶ月半程度の二回目の介護休業を取得し、特養ホームへの申し込みや介護機能の整った特養ホームやグループホーム、要介護高齢者専用の高齢者住宅の検討を行います。
 何度も、繰り返しになりますが、「いつ、何をするのか」「何をしてはいけないのか」を知っていれば、介護問題への対応は、それほど、難しくはないのです。

  

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