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高齢者施設と高齢者住宅は何が違うのか


 高齢者施設や高齢者住宅の入居は、重度要介護や認知症になって、自宅で生活できなくなってから入所・入居を検討するというのが原則です。
 「家族の負担にならないように元気な時から高齢者住宅に入る」「高級老人ホームに入れば悠々自適な生活を送ることができる」と考える人も増えていますが、それはお勧めできません。
 それは、「元気な時に老人ホームに入って重度の要介護・認知症になっても生活できる」という老人ホーム・高齢者住宅はないからです。ほとんどの人が「こんなはずではなかった…」「住み慣れた家に帰りたい…」と後悔のうちに人生を終えることになります。
 ここでは、「高齢者施設と高齢者住宅の違い」「自立要支援向け住宅と要介護向け住宅の商品性の違い」の他、入居一時金制度、高齢者向け分譲マンションのリスクなど、知っておくべき高齢者の住まいの基本についてお話しします。 

  

特養ホームと介護付有料老人ホームは何が違うのか

 まずは、施設と住宅の違いです。
 テレビや新聞などでは、「介護施設」という言葉がよく使われていますが、制度上、介護施設という言葉はありません。使っている人によってその内容や範囲は違います。
 高齢者の住まいの対象となるのは、特別養護老人ホームや老人保健施設などの「高齢者施設」と、有料老人ホーム・サ高住などの「高齢者住宅」に分かれます。ただ、【高齢者をとりまく介護医療環境は大きくかわる 🔗】で述べたように、制度的な無駄や矛盾が多いため、今後、それぞれで統合されることになるでしょう。
 ただ、高齢者施設と高齢者住宅は根本的に違うものです。
 それは、あなたが85歳になった時も変わらないでしょう。高齢者施設内、高齢者住宅内で制度が統合されることがあっても、高齢者施設と高齢者住宅が統合されることはないと考えられています。
 ここでは、要介護高齢者の施設である「特別養護老人ホーム」と、要介護高齢者向けの民間住宅である「介護付有料老人ホーム」を例にその違いについて整理します。
 その違いは、大きく分けて四つあります。

①  運営主体・目的
 特別養護老人ホームは、介護保険だけでは対応できない「要福祉」の高齢者を対象とした老人福祉施設です。その運営は地方自治体と社会福祉法人に限られています。一方の介護付有料老人ホームは、通常のマンション経営と同じ営利目的の事業で、その多くは株式会社が運営しています。

②  商品・サービス内容
 特別養護老人ホームは、四人部屋などの「多床室特養ホーム」と「ユニット型個室特養ホーム」に分かれています。それぞれ、老人福祉法に国の基準に従って建物・サービスが設置され、ほぼ同一の価格で提供されています。「うちの特養ホームは、24時間看護師を常駐させているので介護サービス費以外の自費徴収をする」ということはできません。 
 これに対して、介護付有料老人ホームは、老人福祉法や介護保険法で最低基準は示されていますが、その基準以上の商品設計は事業者に委ねられています。つまり「介護付有料老人ホーム」といっても、その商品・サービス内容は、それぞれに大きく違うということです。

③ 価格・月額費用
 特別養護老人ホームは、その整備や運営に多額の社会保障費が投入されているため、現在、多床室のものは一ヶ月9万円程度、ユニット型個室でも15万円程度と介護付有料老人ホームの半額程度で利用することが可能です。

 一方の介護付有料老人ホームは、一般のマンション・アパートと同じようにサービス・価格ともに自由設計です。立地環境の他、「居室が広い」「介護看護サービスの手厚さ」「食事の豪華さ」など、建物設備やサービス内容によって、「入居一時金5千万円、月額費用50万円」というものから、「入居一時金ゼロ、月額費用20万円」など価格・月額費用はそれぞれに違います。基準以上の豪華な設備や手厚い介護サービスを希望するのであれば、それに応じた費用がかかるということです。
 ただ、現在のところまだ介護付有料老人ホームに「相場」と言うものが十分にできていないため、「高額費用=サービスが充実している」とは言えません。「高額だから高級なサービスが受けられる」と思わず、サービス内容と価格帯をきちんと比較・精査して選択することが必要です。

 この価格・月額費用でもう一つの大きな違いは、特別養護老人ホームは、老人福祉施設なので低所得・低資産の高齢者を対象とした減額制度があるということです。生活保護や国民年金の基礎年金以下の高齢者は、多床室であれば0万円~3万円程度で利用することが可能です。これに対して、介護付有料老人ホームには、低所得者に対する減額制度がないため、入所には一定の収入・資産が必要です。

④ 入所・入居基準
 もう一つの大きな違いは、入所基準です。
 特養ホームの入所は、原則、要介護3以上と定められています。
 また、それぞれの自治体で優先すべき対象者が定められており、実質的に生活が破綻している独居認知症高齢者や、家庭内で虐待が起きているなど緊急度の高い高齢者が優先されます。「申し込み順」ではなく「優先順位順」となることや、自治体によってその優先度は異なるため、「どのくらい待てば入所できるのか」と言う議論に意味はなく、「入所までに一年かかる」というのも間違いです。

 最近は、一つの特養ホームに申し込めば、自動的にその対象地域にあるすべての特養ホームに一斉に申し込みが行われるという手法を取っている自治体が増えてきました。「四人部屋の施設は嫌だ」「新しくできた近くの特養ホームが良い」といった選択はできませんし、入所の連絡があれば即入所というのが原則で、特段の事情がない限り、「本人が納得するまで、もう少し検討したい」「あと一ヶ月後にしてほしい」という調整も基本的にできません。
 また、それぞれの市町村(基礎自治体)の福祉拠点ですから、そこに住所地のある高齢者が優先されます。「親を子供家族の住んでいる市の特養ホームに入所させたい」という場合、よほどの事情がない限り、優先順位は低くなります。

 これに対して、介護付有料老人ホームは、「自立・要支援も含む」「要介護高齢者のみ」というだけでなく、「周辺症状のある認知症高齢者は不可」「医療依存度の高い高齢者も可」といった対象者の設定も事業者に任されており、市町村・都道府県をまたいで入居することも可能です。
 つまり、「特養ホームは行政によってその優先順位が定められている」、一方の介護付有料老人ホームは「対象者はそれぞれの事業者が決める」ということです。


 このように、整理をすると、設置や運営に制度の関与が強いのが高齢者施設、経営の自由度が高いのが高齢者住宅だと言えます。その上で、現行の制度だけで言えば、次のことが言えます。

  ① お金のない人は多床室の特養ホームにしか入れない
  ② コスパを考えれば、介護付有料老人ホームよりユニット型特養ホームが断然お得
  ③ でも、特養ホームは対象者が限定されているので、お金が合っても入れない

 ただ、独居や身寄りのない認知症高齢者など、緊急避難的に福祉的なケアが必要な高齢者は一気に増えていくため、特養ホームの対象者選定はより厳格になっていくとは確実です。②についても、「運よく特養ホームに入れた人だけが得をするのはおかしい」と言う声は大きく、今後、制度改定によって、同程度のサービスを提供する介護付有料老人ホームと変わらない月額費用になるでしょう。
 また、これまでは登録や届け出だけで開設できた有料老人ホームやサ高住も、サービスの劣化や入居者不足による経営悪化が顕在化していることから、制度を統合して、その総量を規制すべきだという声も大きくなっています。
 ただ、第二節で述べたように、これからは地域包括ケアシステムの時代に入ります。
 そのため、この高齢者施設・住宅の整備計画や入所基準の優先順位は、住んでいる自治体によって大きな違いが生まれることになります。


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