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高齢者住宅 入居相談マニュアル Ⅰ ~申込・受付~


入居相談の目的である「正確にサービス内容・価格・リスクを伝えること」「入居者を惹き付けるための営業活動」「信頼関係が構築できる家族の見極め」は、申し込みの受付段階からスタートしている。高齢者住宅を例に「相談申込受付」においてどのような点に注意するのかを整理する。

管理者・リーダー向け 連載  『介護事業の成否を決めるリスクマネジメント』 057


入居相談マニュアルの整備は、「何を話すのか、どのような説明をするのか」ではなく、「申し込みの受付」から始まります。 それは、入居相談の目的である「正確にサービス内容・価格・リスクを伝えること」「入居者を惹き付けるための営業活動」「信頼関係が構築できる家族の見極め」は、申し込みを受け付ける段階からスタートしているからです。
高齢者住宅を例に、「申し込みの受付」において、どのようなことをマニュアル化するのか、どのような点に注意するのかを整理します。

なぜ、入居相談は「事前予約」を前提とするのか

入居相談は、必ず「要予約」として、事前申し込み制にします。インターネットなどで、必要事項を記入してもらい申し込みを受け付けるというのも一つの方法ですが、たくさんの個人情報を記入してもらうことになりますし、相談担当者の業務予定や現場のスケジュールの都合もありますから、「申し込みがあっても、電話でお断り・再調整」となれば、意味がありません。また、電話で直接話をすることで、その口調や内容から、どのような家族なのかを、ある程度イメージできるというのもメリットの一つです。

突然にやってきて「見学させてほしい」という人に対し、「相談担当者の手が空いていれば受けてもよいのでは…」という人がいますが、それは賛成できません。
相談対応は、「パンフレットを渡して一通りの表面的な説明、見学をして終わり」というものではありませんし、事前に何の連絡もないままに見学の家族が入ると、現場の介護スタッフや入居者に不快感を与えることになるからです。
また、ふと思いついて、また看板を見て飛び込みで「相談したい、見学したい」という人は、高齢者住宅への入居について腰を据えて考えているわけではなく、その場の思い付きで、看板を見て「相談してみよう…見学してみよう…」と入ってきただけです。また「急に相談、見学に行くと、高齢者住宅側に迷惑がかかるかもしれない」ということに思いが及ばない人です。そのため、相談には担当者が対応することや、一定の時間が必要であること、また実際に生活している入居者の生活の中に入るため、現場や入居者への事前連絡や見学に適した時間もあることなどを説明し、丁寧にお断りをします。
真剣に、高齢者住宅を探している人であれば「要予約」としている理由を説明をすればわかります。納得して「相談予約」をするはずです。逆に「それほど面倒ならば、いらない。他をあたる」と怒って帰るような人は、わざわざ時間を割いて対応する必要はないということです。


この「申し込み・受付」は、ホテルやレストランの予約のように機械的に行えばよいというものではありません。
介護保険制度の施行によって、介護や老人ホームへの入居が社会化されたといっても、本人や家族の不安が消えるわけではありません。また、要介護状態や認知症というのは、生活の根幹に関わる人に知られたくない特殊な個人情報です。特に、要介護高齢者を対象とした介護付有料老人ホームの場合、本人が直接アクセスしてくることは稀で、相談に訪れるのは、息子や娘などの家族が中心です。入居予定の高齢者には、まだ老人ホームを探していることさえ、知らされていないというケースもあります。
老人ホームに相談の電話をするだけでも、不安が大きく緊張している人が多いということを理解して、聞き取り、対応を行う必要があるのです。
言い換えれば、それは「申し込み・受付」の電話から、事業者の質、サービスレベルに対する採点は始まっているということです。逆の視点でみれば、事業者が行うべき「信頼関係が構築できる家族か否か」のチェックも始まっているということです。
「申し込み受付」だけで、それ相応の教育や訓練が必要になるということがわかるでしょう。


漏れがないように「相談申込受付表」を作成する

この受付に必要となるのが、「相談申込受付表」です。
ここでは、以下のように「基本事項」「確認事項」「事前送付の有無」に分けています。
基本事項は、名前、連絡先、訪問日時、訪問人数など基本的な事項の確認です。合わせて、相談時間は見学も含めて1時間半~2時間程度かかることを伝えるとともに、車でくるのか、電車で来るのか、駅からの送迎が必要になるのか、また車いすなど事業所で事前に準備するものがあるかを確認します。
更に、事前にパンフレットや重要事項説明書が欲しいという人もいますので、事前送付が必要な場合は送付先の住所などを聞きとります。

事前の書類送付が必要ない場合、電話で住所や要介護状態など、個人情報を詳しく聞き取る必要はありません。代表者の名前と入居希望者との関係(長男など)、連絡先も携帯電話程度で十分です。述べたように、入居予定の高齢者には、老人ホームを探していることを説明していないケースもありますし、他の親族や兄弟にもまだ話をしていない、まだ知られたくないという人もいます。そもそも、プライベートな相談ですから、電話であれこれと聞かれることにうんざりしたり、不愉快に思う人が多いのです。
逆に、あれこれと電話で要介護状態や困りごとを話す人には、その内容をメモにしておきます。
相談担当者が不在で、訪問日時が確定できない場合、「担当者が不在のため、折り返しお電話させていただきたいのですが、何時頃がよろしいでしょうか」「メールなどでご連絡させていただいた方がよろしいでしょうか」と、こちらからの連絡には十分に配慮する必要があります。

また、先方の希望日時に沿うように調整することは必要ですが、事業所内の見学を行うため、相談が受けられる時間帯も限られてきます。
食事の時間帯は、介護スタッフはバタバタしていますし、入居者にとっても食事の風景を他人にじろじろと見られるのは不快なものです。また、夕食後の夜遅く・・というのも、勤務体系を考えると難しくなります。また、相談者が家族(娘や息子)であることを考えると、平日だけでなく土日も入居相談を行うのが望ましいのですが、「当番制日直」などで、日曜は事務所に出勤スタッフが一人だけ・・ということになると、電話対応や訪問者の受付ができなくなってしまいます。できれば「折り返し、担当者からの電話」にはしたくないため、事前に相談・見学が受けられる曜日・時間を、事前に決めておくと良いでしょう。
訪問人数も同じことが言えます。団体でバタバタと来られると、介護スタッフや入居者に迷惑がかかりますから、そのことを丁寧に伝え、入居希望者プラス3名程度に抑えていただけないか依頼します。「入居者の生活の安定を第一に考えている」ということを説明すればわかるはずですが、それでも「家族が多いので6名で行きたい」と強弁する人は、入居後も自分勝手な行動をする可能性が高いということです。

高齢者住宅では、入居者・家族とのお付き合いは数年から十数年と長期に渡ります。
そのスタートは「申し込み・受付」の一本の電話から始まります。
「はじめ肝心」というように、最初に受けたイメージの良し悪しは、高齢者住宅の選択において大きなウエイトを占めます。
「申込・受付」の電話は、実際に相談対応を行うスタッフ・管理者が応対できれば良いのですが、業務の都合などでできないケースもあります。電話は顔が見えない分、雰囲気が伝わります。事務スタッフなど、外部からの電話に出る全てのスタッフが、レベルの高い電話応対、「申込相談受付表」に沿って相談受付業務ができるように、ロールプレイングなどの教育・訓練を行う必要があります。



入居相談マニュアルを作成する Ⅰ ~相談・説明~ 

  ➾ リスクマネジメントを土台とした入居相談マニュアルの整備
  ➾ リスクが大きくなる最大の理由は受け入れ時の説明不足
  ➾ 「入居説明・相談・見学対応」 3つの目的を整理する
  ➾ 高齢者住宅 入居相談対応のストーリーをイメージする
  ➾  高齢者住宅 入居相談マニュアル Ⅰ ~申込・受付~
  ➾ 高齢者住宅 入居相談マニュアル Ⅱ ~準備・説明~
  ➾ 高齢者住宅 入居相談マニュアル Ⅲ ~見学対応~
  ➾ 高齢者住宅 入居相談マニュアル Ⅳ ~相談・質問~
  ➾ 入居相談マニュアル 書類整備と教育訓練
  ➾ 入居相談にマニュアル導入の効果とNG対応



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  5. リスクマネジメントを土台とした入居相談マニュアルの整備
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  7. 事業者の過失・責任が問われる介護事故を整理する
  8. 介護リスクマネジメントはソフトではなくハードから

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