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介護事故報告書 記入例とポイント


介護事故報告書の書式や内容、書き方についてのルールは、それぞれの事業者独自に検討すべきもの。
ただし、【迅速性】【連続性】【客観性】【共有化】の4つの鉄則と「初期対応から改善・収束」までの全体の流れを意識して書式・ルールを設定することが必要。

管理者・リーダー向け 連載  『介護事業の成否を決めるリスクマネジメント』 037


事故報告書の書式や内容、書き方についてのルールについては、それぞれの事業所・管理者で検討すべきものです。
ここでは、一つの事例として、高住経ネットで推進している介護保険施設や介護付有料老人ホームを対象とした 『介護事故報告書 記入のポイント』について、紹介します。

① 介護事故の概要
まず、最初は介護事故の概要です。
介護事故概要については、その事故の概要が一目でわかるようにします。
また、サービス種類や事業者毎に、整理・分類しやすいようにそれぞれの事業所で、ナンバリングを工夫すれば、後で整理や分類が容易になりますし、パソコンなどでデータ化する際にも便利です。下の例でみると、【2013A-Y2-02A-RT】とは、2013年の4月(April)の夜勤帯2の時間帯に、2階のAユニットの居室(Room)のトイレ(Toilet)で発生した事故だということを示しています。事故の有無や通院、入院などの記号も増やせば、記号だけで基本的なことが整理できます。

もう一つは、時間と発見者などの関係者の記入です。発生・発見時間は、初期対応だけでなく、裁判になった時にもその対応の是非が問われる非常に重要な項目ですから、正確な記入が必要です。夜間に転倒を発見した場合など、時間が曖昧な場合は、本人からの聞き取りだけでなく、スタッフコールの時間なども合わせて特定する努力をします。その他、検証した時間、検証メンバー、報告書策定者、報告書提出時間などについても記入します。

② 発生状況・初期対応
発生状況や初期対応は、検証したことをそのまま記入します。
発生発見状況や対応にあたった正確な時間と対応に当たったスタッフの行動を、時系列で細かく記入していきます。
小説やコラムではありせんから、ダラダラと文章にするのではなく、客観的な事実のみを箇条書きにします。また、状況把握は、事故発生・発見時ではなく、その直前のスタッフ・利用者の行動から記入すると全体の動きや原因がわかりやすく、また臨場感がでます。
発生発見状況、初期対応の課題を整理するためには、時間の管理は非常に重要です。特に、窒息など対応に一刻を争うような事故の場合、「何分で救急車を呼んだか」「何時何分に救急車が来たか」「救急車到着までにまでに何をしていたか」が、裁判になった時には厳しく問われることになります。

家族に対しても、「昨日の夜勤帯に・・・」ではなく、「23時40分に、部屋から声がして・・」と説明できれば、「しっかり見てもらっているのだな・・」と理解できるでしょう。時間をきちんと示して緊急時対応・初期対応の研修の中で全スタッフに、しっかりと意識づけをしておく必要があります。

③ 原因の把握・初期対応の課題
原因検討は、検証時に話し合うのではなく、②で行った検証や聞き取りをもとに報告者が判断します。
事故の原因は、「スタッフのミス」「入居者の身体機能の低下」「建物設備備品の不備」の三大要因から判断します。他の入居者とのぶつかり事故、口論による転倒などを「その他」として分けることもできるでしょう。スタッフのミスには、当事者の直接的な介助ミスだけでなく、連携連絡の不備なども含まれます。また、直接的なものだけでなく間接的なものも含め、関係するものはすべて書き出します。「目を離したすきに転倒」「浴室を離れたすきに溺水」という分析は多いのですが、そうであれば、何故そのスタッフが離れてしまったのか、目を離してしまったのか、何故そうしなければならなかったのかということも合わせて検証し、記入する必要があります。

対応課題は、同様に②で聞き取りを行った初期対応に問題がなかったのか、どこに課題があるのかの検討です。「結果的に問題がなかったからよし・・」ではなく、類似の事故が発生した場合も想定し、その対応が適切だったのかどうかを判断します。

④ 家族・関係先への連絡
家族や行政などの関係先への連絡状況も重要な報告ポイントの一つです。
家族への連絡は、いつ誰がどのように連絡したのかを簡潔に記し、家族の応対、雰囲気などついて記入します。「電話したけれど留守だった」「折り返し電話がかかってきた」といった過程についても、詳しく記入します。
骨折や入院などの重大事故の場合、第一報とは別に、状況・原因について詳細に説明する機会を設定し、管理者も含めて対応します。家族との事故に関するやりとりについては、収束まで追記していきます。

また、骨折の場合は、管轄する自治体への連絡が必要になりますので、これも電話で一報を入れた後、別途報告書を策定し提出することになります。また、施設損害賠償保険に入っていれば、入院や治療に費用がかかる場合、見舞金などがでる可能性があります。保険会社の担当者に一報をいれ、その内容を確認するとともに手続きについて指示を受けます。実際には、事務職員と連携すれば良いでしょう。これらについても、指示については追記し、一元管理します。
特に、家族が感情的になっている場合や裁判のほのめかすような場合は、事前に内容も含め、自治体担当者に継続的に連絡をしておくことが必要です。
介護保険施設や介護付有料老人ホームの場合、ケアマネジャーは内部スタッフですから項目がありませんが、通所サービスやサ高住などの場合は、外部のケアマネジャーにも連絡・報告が必要となり、その後の対策について協議しなければなりません。

⑤ 対応・予防
対応・予防は、行った対応、現段階でできる予防策を迅速に実施し、そのすべてを記入します。報告書策定までに【誰が、いつ、何をしたのか】、また、これから【誰が、いつまでに、何をするのか】を、できるだけ細かく指示し、対応予定完了まで追加で記入します。
課題については、対応・予防以外で、報告者が気になること、これからの予定、管理者に伝えたいことについて記入します。


⑥ 管理者意見
管理者意見は、叱咤・激励ではなく、報告者に対して明確な指示を与えるものです。
この管理者の部分は、その事業所の指揮命令系統によって変わってきますから事業所に合わせて設定することが必要です。
特に、骨折・入院などの大事故の場合は、現場のスタッフに任せきりにせず、最初から管理者自らが前面に立って、家族や関係部署への説明を行う必要があります。管理者がどのように動くのか、現場スタッフとの調整が必要です。


⑦ 継続・追記
最後は、継続・追記です。
ここでも、客観的事実に基づいて、日時を正確に記入していきます。特に骨折、入院などの重大事故の場合は、管理者を中心に事故収束までの流れに沿って、家族への説明内容、応対についてしっかりと説明することが必要です。利用者や入所入居者本人に、「スタッフを呼んでください」「夜間帯でふらつくときはコールをお願いします」といった依頼をするときは、本人だけでなく、家族にもそれを説明したことがわかるように、一緒に行うこと良いでしょう。
また、特に家族が感情的になっている場合など、「言った・言わない」といったトラブルも発生しますので、こちらもメモを取り、複数人で対応するなどの対策が必要となります。

上記のものは、あくまでも一例です。
ただし、介護事故報告書の鉄則と流れを整理する で述べたように、介護事故報告書の書式・記入方法を見直すには「鉄則」と「流れ」を意識することが必要です。上記の記入例にこだわる必要はありませんが、【迅速性】【連続性】【客観性】【共有化】の4つの鉄則と、事故発生から収束までの「初期対応」「検証」「報告」「改善・収束」の流れを整理すれば、誰が見ても課題や論点が分かりやすい、報告書を作成することができるはずです。



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