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プロフェッショナルの介護サービス事業所が持つノウハウとは何か

市場価値の高い介護のプロになるためには、「ケアマネジメント」「リスクマネジメント」「介護経営マネジメント」を組織的に構築できている、プロフェッショナルの介護サービス事業者で働くこと、そして、そのマネジメントノウハウを身につけていくこと

介護スタッフ向け 連 載 『市場価値の高い介護のプロになりたい人へ』


「ご利用者様、ご家族様の笑顔のために…」
「自分の本当のおじいさま、おばあさまだと思って…」
「入居者、ご家族の笑顔が私たちスタッフの喜びです…」
大手の事業者の中にも聞いている方が寒くなるような、自信満々に自己陶酔のような美辞麗句を連発する経営者がいますが、これはまだ介護業界が専門職種・専門業種として未成熟だからです。
厳しいようですが、このような言っている経営者がいる介護サービス事業所には、理念もなければノウハウもありません。それは介護は専門職ではなく、精神論だと思っているからです。それを自己の利益のために巧みに利用し、「高齢者のために…(多少のことは我慢しろ)」「安心・快適のために…(無理して働け…)」と介護スタッフの意欲や善意、やりがいを搾取するような悪徳経営者が多くなるのです。

介護事業は3つのマネジメントで成り立っている

介護のプロになるために働く介護サービス事業者を選ぶ視点として、「安全に働くことのできる事業所」「努力が正当に評価される事業所」「自分の市場価値を高めてくれる事業所」という3つのポイントを挙げました。
これは実務的なマネジメントに基づくものです。

① ケアマネジメント
まず一つは、ケアマネジメントです。
介護サービスの質は、ケアマネジメントの質です。
ケアマネジメントはケアマネジャーの仕事だと思っている人が多いのですがそれは間違いです。日本の高齢者介護は、ケアマネジメントという科学的・専門的な手法を使って、個別ニーズを基礎とした個別ケアを実践しています。それは介護だけでなく、医療や看護、家族、行政、民間サービスなど、要介護高齢者を取り巻く社会資源を、一つの目標に向かってつなぐ手法であり、その関係者すべてがケアマネジメントの構成員です。現代の介護はチームケアですから、「介護はこうあるべき…」「わたしはわたしの介護をする」という唯我独尊の我流介護では、質の高い介護サービスを提供することはできません。
同時に、これは要介護高齢者・家族との介護サービス契約の基礎となるものです。
どのような介護看護サービスを提供するのか、どのような生活課題の改善を目指すのか、またその中で想定される事故やトラブルに対して、事業者のサービス提供責任、安全配慮義務の範囲を丁寧に説明することから始まります。
「利用者・家族に寄り添う介護をしたい…」「認知症介護を極めたい…」
そのノウハウの土台は、すべてケアマネジメントです。

② 介護リスクマネジメント
二つ目は、リスクマネジメントです。
高齢者介護は一瞬のスキ、小さなミスが転倒・骨折や死亡などの重大事故に発展するリスクの高い仕事です。コロナ禍でわかったように、免疫力の低下している高齢者は重篤化する確率が高く、特に、要介護高齢者が集まって利用・生活する特養ホームやデイサービス、高齢者住宅ではクラスターが発生します。一人で逃げることのできない災害弱者が集まっているのですから、火災や地震なども大きなリスクです。
また、高齢者・家族の権利意識は高まりによって、サービスに対する苦情・トラブルも増えています。
リスクマネジメントの目的は、想定されるリスクから「利用者・労働者・事業」を守ることです。
特に、社会的理解・法的整備が遅れている介護業界では、介護スタッフが安全に安心して働ける環境を整備すること、事故やトラブルなどのリスクからスタッフを守ることを一義的に考える必要があります。労働者が安全・安心して働けない事業者で、利用者の安全な生活環境を整備することも、質の高い介護サービスを提供することも、事業を守ることもできません。
リスクマネジメントの理解・意識・ノウハウの乏しい事業者は、安全に働けない事業者、働いてはいけない事業者です。

③ 介護経営マネジメント
三つ目は、介護経営マネジメントです。
介護サービス事業は「需要が高まるから将来性が高い」というほど簡単な事業ではありません。
85歳以上の後後期高齢者の増加、家族介護機能の低下によって、介護需要が高まることは間違いありませんが、介護保険財政の悪化による制度報酬改定、介護労働者不足など、経営にマイナスとなるベクトル・要因も小さくありません。
現在、介護サービス事業の倒産率は、他の事業と比較して極めて低いものですが、この数年のうちに、介護サービス事業の経営状態は二極化し、特に、有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅など民間の高齢者住宅の半分は、経営が立ち行かなくなると考えられています。

質の高い介護サービスを提供し、介護看護スタッフが安全に安心して働くためには、事業・経営の安定が必要です。そう考えると、「ケアマネジメント」「リスクマネジメント」「経営マネジメント」は、それぞれ独立したものではなく、それぞれに不可分なものだということがわかるはずです。

この3つのマネジメントは介護事業の根幹となるノウハウです。
多くの事業所で介護人材不足が慢性化し、事故やトラブルが激増するなど、サービス・経営共にが安定しないのはこのノウハウが確立されていないからです。
言いかえれば、これからの介護業界でその価値が高まるノウハウなのです。

大学の経営学部・マネジメント学科で学んだからといって、会社の経営実務が学べないのと同じように、介護の専門学校や大学で、どれだけ講義をうけても、その実務・ノウハウを学ぶことはできません。つまり、市場価値の高い介護のプロになるためには、それを組織的に構築できているプロの介護サービス事業者で働くこと、そしてそれを身につけていくということなのです。

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