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介護サービス事業所を選ぶ視点 Ⅱ ~努力が報われる事業所なのか~

資格取得やキャリアアップを積極的にバックアップしてくれる企業、法人で働くのか、「介護労働者の頭数がいればいい」という、介護の専門性を理解しない事業所で働くのかによって、三年、五年後には、その未来は大きく変わってくるのです。

介護スタッフ向け 連 載 『市場価値の高い介護のプロになりたい人へ』


あなたが介護のプロになりたいのであれば、プロの介護サービス事業者を選ぶことです。
ここでいう、プロの介護サービス事業者とは何か…。
介護のプロになりたいのであれば、どのような事業者を選ぶべきなのか…。
その二つ目は、あなたの努力が報われる事業所です。

「介護労働者の40歳男性の平均収入は、一般会社員と比較する100万円以上低い」というデータが示されることがあります。それは「まるっきり嘘」というわけではありませんが、介護の給与は安いということをアピールするために、作られた客観性に欠けるデータです。
一般的に男性の給与は40代後半から50代にかけてピークを迎えます。それは高校や大学を卒業し、同じ企業で十数年働いて、課長や部長などの役職者になっている人が多いからです。
一方、介護保険制度はまだ20年に満たない制度です。40代といっても他の仕事から介護業界に転身した中途採用が多く、勤続年数5年未満の人が全体の6割弱、10年未満を含めると8割を超えます。同じ40歳といっても勤続年数は6年~8年程度と、他の産業の半分程度です。

※ 詳細な労働データについては、拙著「介護の仕事に未来がないと考えている人へ」 参照

仕事を始めて10年未満、5年未満の人も多い介護業界の給与を、無理やり年齢と性別だけを無理に切り取って比較しても分析はできません。同じ「40代」「男性」を比較するのであれば、介護業界で、同じ事業所で勤続年数が15年以上の人を比較しないと正確ではありません。
また、介護労働は、一般企業と比較すると、給与や待遇に男女差や学歴差(大卒・高卒など)、企業規模(大会社・中小企業など)がないという特徴があります。一般企業の場合、リストラ・倒産などで会社を辞めてしまうと給与が一気に下がり、同じ種類の仕事に就くことさえ容易ではありませんが、介護労働は専門職種であり、介護関連の資格を持っていれば、全国どこにいてもその能力を発揮することは可能です。

もちろん、介護労働者の待遇・給与が十分だと言っているわけではありません。
介護の専門性や責任の重さ、リスクの高さを考えると、十分な介護報酬が設定されているとはとても言えません。示されている介護労働者の給与には、夜勤手当なども含まれており、同一に比較することはできないという意見もあるでしょう。
ただ、これは一般企業でも同じです。これまで多くの企業で「年齢給」「勤続給」というものがあり、年齢に応じて給与や役職が段階的に上がっていく年功序列の給与体系を取っていましたが、最近は成果報酬や役職によって、同期入社の男性でも給与は数百万円の差が生まれています。もちろん、企業の業績によって、その差はさらに大きくなります。勤続年数や性差だけを無理に切り取って、「40歳 男性」だけを比較することに、ほとんど意味はないのです。

努力や頑張りが評価される労働環境か…

その厳しさは、介護業界でも変わりません。
特に、介護労働は専門職種です。30歳で転職して未経験・無資格で働いている2年目の介護スタッフと、短大の介護福祉学科を出て、介護福祉士として4年目、24歳でユニットリーダーをしている介護スタッフとでは、給与も待遇も違います。
また、年功序列で段階的に給与が上がっていくような仕事でもありません。
仕事というのは、その知識・技能・責任によって決まります。「5年たっても、10年経っても給与が上がらない」と文句を言う人がいますが、同期で入っても、一年目と同じ仕事しかしないひと、言われたことしかできない人、責任ある役職者になることが嫌な人に高い給与はあげられません。
それは当然のことです。

ただ、ここで課題になるのは、あなたが働いている、働こうとしている事業所は、その人の努力や責任が正当に評価され、報われるような事業所なのか否かです。
それは法人の体質にかかってきます。
福祉系の大学や介護の専門学校を卒業し、10年、15年働いて、40代となっているデイサービスの管理者や特養ホームの施設長から話を聞くと、年収は500万円、600万円、それ以上という人も多く、他の業種の同年代の人と比較しても、決して見劣りするような給与・待遇ではありません。
一方で、株式公開だ、フランチャイズだと大きな利益を上げていても、資格手当も低く、サービス管理者になっても責任が重くなるだけで、給与は一般の介護スタッフと変わらない、残業もつかないため、どれだけ働いても400万円程度というところもあります。また、地方議員が理事長で妻が施設長、息子が事務長など、役職者がすべて一族で占められていたり、三年交代で行政からの天下り公務員が施設長や事務長をしているという社会福祉法人もあります。
このような法人では、会社の利益や一部の人たちだけが、目が飛び出るような高い給与をとっているため、現場のスタッフがどれだけ努力をしても給与や待遇は改善されません。

働く労働者・スタッフの努力を認めようとしない事業者は、向上心のない事業者です。
介護福祉士をもって短大を卒業し、業務外で社会福祉士の通信大学に行ったり、ケアマネジャーの勉強をしても、そこで働いている限り意味がありません。5年前も10年前も15年前も、利用者・入居者が変わるだけで、サービスの内容も質も変わらず、雲のように月日が流れて歳をとるだけで、あなたの仕事内容も知識も技術もノウハウ、待遇も給与も何も変わりません。
一方のプロの事業者では、一年目は無資格・新人職員として入った人も、三年目になるとOJTの新人教育係となり、五年後には新人教育のプログラムを策定、監督する立場になります。無資格で特養ホームで働き始めたけれど、初年度に事業所の支援で介護職員初任者研修、消防署の救命講習を受け、三年働いて介護福祉士を受験し、通信大学に通いながら社会福祉士になり、五年後にケアマネジャーになるという人もいます。
資格取得やキャリアアップを積極的にバックアップしてくれる企業、法人で働くのか、「介護労働者の頭数がいればいい」という、介護の専門性を理解しない事業所で働くのかによって、三年、五年後には、あなたの未来は大きく変わってくるのです。


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