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介護のプロになるには、プロの介護サービス事業者で働くこと

介護業界は、事業者の優劣が極めて大きい業界。「介護の仕事は奥が深い」「介護の仕事を天職だ」と介護のプロになる人と、「介護の仕事は最悪」「もう二度と介護の仕事なんてしたくない」という介護に挫折する人の差は、最初に働いた介護サービス事業者によって生まれる

介護スタッフ向け 連 載 『市場価値の高い介護のプロになりたい人へ』


介護業界に入ってくるのは、介護の専門学校や短大などの福祉学部で勉強をして、新卒で介護業界に入ってくる人だけでなく、今まで、営業、金融関係など他の仕事をやっていたけれど、「介護の仕事に興味がある」「介護の仕事をやってみたい」という人も少なくありません。
わたしは後者です。大学を卒業して某都市銀行に勤めていましたが、「ちょっと考えていたのとは違うな」ということもあり、26歳の時に退職し、老人ホームで高齢者介護の仕事を始めました。
「新卒の方が良い…」と思う経営者は多いのですが、私はそうは思いません。
介護という仕事は、その高齢者の生活を支援することです。営業職だった人、お笑い芸人を目指していた人、美容師だった人、子育てが一段落をしたから社会復帰のために介護の仕事を選ぶ主婦の方など、それぞれバラエティがあった方が、一緒に働いていて楽しいですし、「介護は、福祉はこうあるべき」ではなく、様々な視点からサポートできるのではないかと思います。
ただ、後者の場合「他に仕事がないから介護でも…」という人も少なからず含まれていますので、それを見極める実力・ノウハウが事業者・面接者に求められることになります。

では、求職者、労働者の視点ではどうでしょう。
実は、「最初は介護のプロになろうと言うほどの強い意思はなかったけれど、やってみると奥が深いし、頑張って資格をとって今は管理者・ケアマネジャーをしています」「いまは、天職だと思っています」という人に出会うこともあります。
わたしも転職組ですから、「嬉しいな、良かったな…」「本人も努力をしたんだろう」と思うと同時に、「この人は良い事業所に会えたんだな、運が良かったな…」とも思います。それは「介護の仕事をやってみよう」「新しい人生を介護の仕事にかけてみよう」と飛び込んだものの、「こんなはずではなかった」「介護の仕事なんて選ばなければ良かった」「あの5年間は本当に無駄だった」「もう二度と介護の仕事なんて選ばない」と後悔している人も多いからです。
その違いはどこにあるのでしょうか。

介護のプロの事業者を選べるか否かが職業人としての一生を決める

もちろん、本人の努力や決意、性格もあるのでしょうが、それと同じくらい重要なのが働き始めた事業所が「プロの事業所」だったのか「素人事業者だったのか」です。
残念ながら、この介護業界には、介護のことやその専門性を全く理解しないまま、「要介護高齢者が増えるから介護は儲かりそうだ」と安易に参入してきた事業者は少なくありません。それは中小だけでなく、大手の事業者でも同じです。
経営陣の大半は介護未経験、介護サービス事業に対する思い入れもなく、介護の現場で何が起きているのか、どんなことに困っているのか理解しようともせず、パソコンで利用率・入居率・利益率と株価くらいしか見ていません。研修・教育といっても仕事の手順一通りだけで、それ以外は誰も何も教えてくれません。毎日バタバタ、オムツ替え、食事介助、入浴介助に走り回るだけで、困ったことがあっても管理者も先輩も、誰も相談に乗ってくれません。
これは新卒者でも同じです。
「介護の仕事は最悪だ」と言いながら5年10年働いても、技術も知識もノウハウも、何も得るものはありません。そこで、ミスをして重大事故が発生すれば、誰も守ってくれず、業務上過失致死など重い刑事罰に問われることもあります。そうならなくても、他の事業所に転職をしても、「三つ子の魂百まで」のことわざ通り、初めに働いた介護事業者の仕事ぶりのまま「介護の仕事ってこんなものだ…」「つまらん仕事だ…」「クレーマーだ、手のかかる年寄りだ…」と文句を言いながら働き続けることになります。

もちろん、この手の話は、介護業界に限ったものではありません。
新卒や中途採用でも、「これからはIT、AIの時代だ」「面白そうな会社だ」「ちょっと給与が良い」と思って面接を受けて入社したけれど、とんでもないブラック企業で、残業もつかずパワハラ、セクハラで、体調や精神に不調をきたし、「働くことが怖くなる」「引きこもりになる」という話はよく聞くでしょう。中にはみずから命を絶ってしまう人もいます。
介護業界は、ノルマや営業成績を求められる体質ではないので、表面的なパワハラ・セクハラといった「ブラック企業」はそう多くありません。ただ、「入居者を放っておくのか…」「他のスタッフに申し訳ないと思わないのか」など、責任感ややりがいを搾取するような陰湿な事業者はありますし、その責任感と罪悪感の間で体調を崩し、うつ病になり自殺する人もいます。
頑張って働いても、ノウハウも知識も技術も得られない、いつまでたっても介護のプロにもなれないし給与も待遇も良くならない、素人事業者が半分くらいはあるのです。

もちろん、プロの事業者というものもたくさんあります。
わたしもそうですが、介護の仕事は始める前と、介護の仕事を始めてからでは、その見方ががらりと変わります。「生活を支援するとはどういうことか」「人が人を支えるとはどういうことか」「歳をとるということはどういうことか」「認知症とは何か」「社会とは、社会保障とは…」など、その奥深さ、楽しさ、難しさに気付くはずです。それがまったくない、介護の仕事を始めて5年経過しても、始める前も始めてからも変わらないのであれば、あなたは成長していないということです。
介護業界でも、施設長クラスになれば、500万円・600万円という給与になります。
最近はプロの介護事業所で10年程度働いてノウハウや知識を構築して、管理者など相応の地位・給与・待遇を得た後、「自分の理想とする介護を追求したい」と独立する若手の介護企業家も増えています。彼らは「必死のぱっちです。考えることがありすぎて大変です。サラリーマンの方が良かった」と笑いながら、本当に楽しそうに働いています。介護サービス事業は、コンビニやスーパーマーケット、ファミレスのように、経営的に大手企業の方が絶対的に有利というものではありませんから、これからはそう言う現場の介護企業家がどんどん増えていくでしょう。

前々回述べたように、「介護なんて、どこでやっても同じ」と言うのは大間違いですし、介護業界は、事業者の優劣が極めて大きい業界だと思った方が良いでしょう。どこで働くかによって、あなたの介護のプロ、職業人としての未来は、全く変わってくるということです。

『介護のプロ』になりたいのであれば、『プロの事業者』を選ぶこと

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