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【Pro 14】 介護のプロの未来は大きく広がっていく

介護スタッフ向け 連載 『市場価値の高い介護のプロになりたい人へ』 No 14

高齢者介護は要介護高齢者の生活支援を行う「専門職」であり、自分のライフスタイルを自分でデザインできる。「私はこういう介護がしたい」「私の求めるデイサービス・高齢者住宅のあるべき姿」を見つけた介護のプロが、これからの介護ビジネス・超高齢社会をけん引していく。



仕事というものは、基本的に毎日のルーティンワークの繰り返しだ。
それは営業職でも事務職でも、製造業でも金融業でも、飲食などの他のサービス業でも変わらない。
特に介護業界は、利用者やスタッフが限定されてしまうため、毎日同じスタッフと同じサービスを、同じ対象者に対して、繰り返すことになる。よく言えば、早く仕事に慣れることができるが、悪く言えば「マンネリ化しやすい」ということになる。

忙しいだけで、日々の仕事に刺激やトキメキがなくなり、「このままで良いのだろうか」「10年後も20年後も同じことをしているのだろうか」と、5年程度で介護の業界を離れてしまう人も少なくない。ただ、この短期離職率は、特段、介護業界に限ったことではなく、新規学卒者の3年以内の離職率は、大卒でも3割、短大や高卒では4割に上る。
かくゆう私も、大学を卒業後に就職した銀行を、3年で退職している。

学校を卒業するときは、業界や企業を研究して、自分がどのような仕事に向いているのかを考えて、入社するのだが、それでも仕事をはじめて見れば「こんなはずではなかった」ということは多い。それは仕事の内容や待遇だけでなく、上司や同僚との人間関係など、それぞれに理由があるだろう。

介護業界の離職理由で多いのが「将来性に乏しい」「働き続けても給与が上がらない」というものだ。
介護労働者の給与は本当に低いのか (2) で述べたように、介護従事者の給与は安定しているものの、現在の平均値で見ると上昇率が低い。国も処遇改善加算などで給与水準のアップを行う予定だが、重度要介護高齢者が激増していくこと、介護保険財政はひっ迫していることなどを考え合わせれば、介護スタッフの平均給与が500万円、特養ホームの介護部長になっても1000万円になることはないだろう。

これからの時代に、同じ業務内容で、給与が安定して、年功序列で上がっていくような仕事を、もし見つけることができればそうすれば良いことだし、逆に1000万円、2000万円も可能な 成果報酬の大きい営業職の 仕事の方が向いているという人もいるだろう。

ただ、高齢者介護という仕事は、要介護高齢者の生活支援を行う「専門職」である。
その特性を理解した上で、「努力によってどこまでその可能性を広げられるか・・」「プロとして将来をかけることのできる仕事なのか・・」、その広がりについて考えたい

ライフスタイルによって大きく広がる介護という働き方

介護従事者の仕事・・といっても、事業種別によって、その業務内容や勤務体系は全く違う。
例えば、訪問介護は、一軒一軒の自宅を訪問し、「30分」「60分」など決められた時間の中で、「入浴介助」「食事準備・食事介助」などの生活支援を行うマンツーマンの仕事だ。直接介助だけでなく、洗濯や掃除、調理などの仕事も多い。また、連続的な仕事ではないため、勤務体系によっては、空き時間に自宅に戻って家事をしたり、幼稚園の送り迎えに合わせて、訪問時間を調整することもできる。

これに対して、特養ホームや老健施設、介護付有料老人ホームでは、日勤・夜勤などの交代制で、24時間365日継続して、介護サービスを提供している。
「施設系は夜勤が大変」「勤務のシフトが毎月変わる」というイメージが強いが「夜勤は必須」というわけではない。事業所との勤務調整ができれば、常勤であっても「月曜日~金曜日、9時~17時」「夜勤は月曜の夜だけ」のように、定時の勤務を組むことも可能だ。ライフスタイルに合わせて、結婚前は夜勤をしていたけれど、結婚して子供ができたので日勤だけの定時勤務、子育てが終わったので、週に一度程度であれば夜勤も可・・というふうに働き方を変えることもできる。

もう一つは、職種の広がりだ。
介護と言えば、排や入浴などの直接介助をイメージする人が多いが、それだけではない。
一定期間、介護の経験を積んだ後、生活相談員やケアマネジャーなど他の職種に移動する人も多い。
生活相談員は、単なる「入居者・家族からの生活相談を受ける仕事」ではない。介護サービス現場と利用者家族、更には外部のケアマネジャーや医療機関、他の介護サービス事業者との懸け橋になる仕事だ。「相談と介護は別」と考える人がいるが、介護の知識や技術だけでなく、介護現場での十分な経験がないと、家族や他事業者からの信頼を得ることができない。地域や家族から信頼される「優良介護サービス事業者」には、必ずベテランの優秀な生活相談員がいる。
同様にケアマネジャーは、それぞれの要介護高齢者の生活支援サービスの基礎となるケアマネジメントの中核となる仕事だ。ケアマネジメントはリスクマネジメントと共に、介護サービス事業の根幹であり、その重要性はますます高まっている。

また、専門職の強みは、年齢に関係なく働き続けられるということだ。
高齢者介護は、身体的な負担が大きく若い人向けの体力仕事だと思われがちだが、最近はノーリフト運動など、安全で力に頼らない介護技術が中心になっており、介護リフトや介護ロボットの開発も日進月歩で進んでいる。介護保険施設を定年退職したあと、請われてデイサービスの管理者をしたり、生活相談員やケアマネとして働く人もいる。経験や知識、技術の高い介護労働者は、今でも引く手あまたであり、超売り手市場であることは、これからも変わらない。

介護労働は、自分のライフスタイルに合わせて働き方を選ぶこと、生活環境の変化に対応して働き方を変えるということができる業態であり、またそれを実践し、働き続けることのできる労働環境を整えている事業者を選ぶことが必要だ。

介護労働者から介護経営者へ

もう一つは、介護従業者・介護スタッフから、介護経営者への広がりだ。
事業・ビジネスモデルというものは、産業によって「資本が重視される業態」と「ノウハウ・アイデアが重視される業態」に大きく分かれる。
前者は、製造業や情報通信など巨額の投資が必要な業態が挙げられるが、飲食業や小売業などでも仕入れなどにおけるスケールメリットが違うため、その傾向は強い。以前は個人でコンビニエンスストアや回転寿司を開設する人もいたが、品ぞろえや価格競争力を考えると、大手資本・大手企業にはかなわない。

後者は、ITのアプリ開発やAIプログラムなどの新しい新興ビジネスが挙げられるだろう。アマゾンやヤフー、グルーグルなど、資本に頼らないアイデアや技術力で大きくなった巨大企業が増えている。
ただ、ここは厳しい競争社会であり、生き残ることができるのは一部でしかないということも事実だ。

一方の介護ビジネスは、需要が高まることが確実な社会インフラでありながら、資本重視ではなく、ノウハウ重視のビジネスだという特性がある。
それは「地域に密着した事業」であり、かつ「スケールメリットがほとんどない事業」だからだ。
実際、大手企業が資本を背景に「介護ビジネスは儲かる」「これからは介護の時代だ」と参入、全国展開したものの、スタッフ不足や利用者不足で苦労しているところは少なくない。

一方で、その地域で長年、介護サービスの現場でノウハウを蓄積した介護スタッフが始めたデイサービスには、地域のケアマネジャーや関連サービス事業者からの利用者紹介が多くなる。「あの人が独立するなら、一緒にやりたい・・」と中核となるスタッフの確保にも困ることはない。

現在、高齢者住宅の倒産やトラブルが増えているが、それは過当競争になったからではなく、介護の基礎も知らない素人経営者が蔓延っているからだ。介護ビジネスは、社会保障費を基礎としているため高い利益がでる事業ではないが、適切な運営をしていれば、適切な利益を安定的に得ることのできる事業である。
これからは、介護サービスの管理者、相談員、ケアマネジャーとして現場で介護の基礎、ノウハウをしっかり勉強したスタッフが、「私はこういう介護がしたかった!!」「私の求める介護の姿はこれだ!!」と高い理念をもって経営者として事業に参入してくるだろう。

本来、それがあるべき姿であり、介護ビジネスの未来を作っていく、超高齢社会を変えていくのだ。
それは、お仕着せの「仕事」ではなく、あなたの「自己実現」を達成し「人生」を豊かにしてくれるだろう。



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