介護サービス事業は、一瞬のスキ・些細なミスが重大事故に発展するリスクの高い仕事であり、責任の重い仕事。介護看護スタッフは、やることがたくさんあって毎日忙しいということはどこでも同じだが、安全に安心して働けないということはまったく違う。
介護スタッフ向け 連 載 『市場価値の高い介護のプロになりたい人へ』
あなたが介護のプロになりたいのであれば、プロの介護サービス事業者を選ぶことです。
これは、業種・類型・職種を問いません。
では、ここでいう、プロの介護サービス事業者とは何か…。
介護のプロになりたいのであれば、どのような事業者を選ぶべきなのか…。
ここからは、その3つのポイントを示しておきたいと思います。
まず何より重要なのは、安全に、安心して働ける環境が整備されていることです。
述べたように、高齢者介護は、医療や看護と同様に、一瞬のスキ、些細なミスが、骨折や死亡などの重大事故に発展しやすいリスクの高い仕事です。
また、今回のコロナ禍で分かったように、デイサービスや介護保険施設、高齢者住宅で感染症が蔓延すれば、抵抗力の弱い高齢者は重篤な状態になります。夜間に地震や火災が発生すると、ほとんどの高齢者は一人で逃げ出すことができませんから、多数の死傷者がでる大惨事となります。
「昼食時に大きな地震が発生し、複数人の入所者が転倒骨折、スタッフが火傷」
「デイサービス送迎時に、トラックに追突され、スタッフ含め3名が死傷」
「ショートステイ利用者に、皮膚病の疥癬がわかり、入所者に蔓延」
「訪問介護のサービス中に、利用者がトイレの中で転倒・骨折した」
事例を見ればわかるように、これは働く介護スタッフのリスクでもあります。
忙しいからと慌てて無理な姿勢で移動介助をしようとして、腰を痛めてしまうことはよくありますし、高齢者を庇って転倒、骨折することもあります。ショートステイや新しい入居者の感染に気付かないまま介護をして、働く介護スタッフも罹患する可能性もあります。
「忙しいから手が回らない…」と入浴中に目を離した隙に溺水で亡くなったり、介助中に一緒に転倒して骨折させた場合、高額な損害賠償を求められたり、介護スタッフ、ケアマネジャー個人が業務上過失致死に問われたりすることもあるのです。
これらの介護事故や感染症に加え、もう一つ介護スタッフを苦しめているものが、利用者・入所者、家族からの苦情やクレームです。介護保険制度によって、高齢者介護が福祉施策から介護サービスへと変化し、介護保険料や自己負担が求められるようになったことから、利用者・家族にも権利意識の変化が生まれています。
権利意識の向上、それ自体は悪いことではないのですが、病院での「モンスターペイシェント」や学校での「モンスターペアレント」など、暴走する権利意識が介護サービス事業でも課題になっています。利用者から介護スタッフが叩かれたり、家族から暴言を吐かれたり、「土下座しろ」と言われたという話もあります。
スタッフが安全に安心して働ける労働環境になっているか
苦情やクレームは、介護サービス事業だけでなく、ファミリーレストランやコンビニエンスストア、銀行や役所などどこでもあります。また、対象が身体機能や判断力の低下した要介護高齢者、認知症高齢者である限り、転倒・骨折などの介護事故を100%防ぐことは不可能ですし、コロナ禍でわかったように感染症を完全に食い止めることも、自然災害の発生を予測することもできません。
事業者選びのポイントの一つは、これらの事故の発生予防策や、家族からの苦情・クレームへの対応策が、事業者として組織的にとられているか否かです。
これをリスクマネジメントと言います。
介護リスクマネジメントと言えば、介護事故の発生を予防することだと考えている事業者は多く、「介護事故ゼロを目指します」などと声高らかに宣言しているとこもありますが、それはまったくの間違いです。それでは、「事故を起こした介護スタッフが悪い」「クレームを受けるような介護をしたスタッフが悪い」となってしまうからです。
介護サービス事業において、介護リスクマネジメントの第一の目的は、働く介護看護スタッフが安全に、安心して働ける労働環境を作ることです。
例えば、利用前、入所前に、ケアマネジメントの中で、想定される事故やその対策、その対策の限界について丁寧に説明し、それを理解した上で利用・入所しているのであれば、転倒・骨折事故が発生しても、大きなトラブルになることはないでしょう。
また、定期的に利用者・家族と個別面談をして意見を聞いていれば、いきなり介護スタッフが、家族からの感情的なクレームに、一時間、二時間仕事が止まるということもありません。
家族から指摘されたり、「もう少し、部屋を掃除してほしい」と要望があったからといって、「あの家族はクレーマーだ」と言うのは間違っています。入居時・利用時には、「要介護高齢者も安心・快適」と曖昧な美辞麗句しかなく、すぐに転倒・骨折・入院となれば、「ちゃんと介護してもらっていたのか…」と家族が不信を抱くのは当然ですし、「ご意見があれば、何でもスタッフに仰ってください」と言われても、バタバタ働いているスタッフに声をかけられず、「ちょっといいですか?」といっても、「忙しいので後で…」となり、いつまでも忙しい…となると、不信とともにイライラが溜まっていきます。
認知症や判断力の低下によって高齢者が急に怒りだしたときも、生活相談員や管理者がすぐ中に入って、相談室などでゆっくり話をきいてくれるところもあれば、家族につかまって、仕事中に面前で文句を言われても、同僚も上司も管理者も、誰も助けてくれない…、みんな見て見ないふり…、というところもあります。
リスクマネジメントは、介護事業の経営上のマネジメントノウハウです。
介護看護スタッフは、やることたくさんあって、あれこれ毎日忙しい…というのはどこでも同じですが、忙しいということと、安全に安心して働けないということはまったく違います。それが分かっていない事業者、リスクマネジメントができない事業者は、働いてはいけない素人事業者なのです。
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