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「介護のプロ」を目指さないのであれば、他の仕事を探した方がいい

高齢者介護は、専門性の高い仕事、法的責任の重い仕事であり、「他に仕事がないから(仕方ないから)介護でも…」という腰掛仕事には適さない。介護のプロを目指さなないのであれば、介護の仕事を選ばない方が良い

介護スタッフ向け 連 載 『市場価値の高い介護のプロになりたい人へ』 026



「介護のプロになるにはどうすれば良か…」「介護労働の専門性とは何か」
わたしは経営コンサルタントなので、普段は介護の経営者・管理者の方と話をすることが多いのですが、時折、事業者の団体や介護の就職セミナー、福祉系の大学に呼ばれて、現在介護の仕事をしている人、これから介護の仕事をしようとする人達を前に話をすることがあります。
もちろん、それぞれ意見があって当然ですし、何が正しい、間違いというものでもありません。給与か待遇かやりがいか…、仕事に何を求めるのかは、人それぞれ違うからです。
ただそれは、これから介護の仕事を始める人だけでなく、いま介護の仕事をしている人、ベテランの介護スタッフの人、管理者、経営者の方々にも、一度は真剣に考えていただきたい、大切なテーマです。

介護スタッフの採用面接にくる求職者は、大きく二つにタイプに分かれます。
ひとつは、「介護のプロになりたい」「一生の仕事にしたい」という人、もう一つは、「他に仕事がないから(仕方ないから)介護でも…」「他に良い仕事が見つかればすぐに…」という人です。
介護保険がスタートした2000年初頭は「介護のプロになりたい」「介護の仕事を頑張りたい」と考える人が多かったのですが、残念ながら「介護の仕事は大変なのに給与が安い」というイメージが強いからか、最近は少しその数が減っているように感じます。

不景気になり失業率が高くなると、介護業界にも面接希望者は増えますが、その増加分はほほ後者ということになります。先入観を持つことはよくありませんが、これまでたくさん採用に関わってきた視点で分析すると、何度も転職を繰り返している人は後者が多い、介護経験者・有資格者か否かはそれほど変わらない…というところでしょうか。四〇代、五〇代でも一念発起して「これから介護のプロになりたい」という強い意欲の人はいます。年代を問わず「介護のプロになりたい」という人を増やさなければ、優秀な介護人材は集まらず、日本の介護業界の未来は暗いと言うのは、お察しの通りです。

もちろん、面接で介護の仕事を選んだ理由を聞いて「他に仕事がないから、仕方ないから…」と口にする人はいません。採用面接と言うのは、それを見分けることから始まると言ってよく、経営コンサルタントの視点でみれば、前者をいかに確保できるか、「介護のプロになりたい」という人にアピールできるか否かが、事業やサービスの未来を決定すると言っても過言ではありません。

このコラムでお話するのは、事業者目線ではなく、労働者・求職者目線です。
「介護のプロになりたい」「介護の仕事でがんばっていきたい…」と考える人は、どのような視点で仕事をすべきか、介護のプロになるのはこれからのどのような知識・技術が必要になるのか。
そして、そこで何よりも重要なのは、「どのような事業所・法人で働けばよいのか」ということです。
ただ、その前提としてまずお話したいのは、そもそも「他に仕事がないから介護でも…」という人は、介護の仕事を選ぶべきではない、他の仕事をした方が良い…ということです。

腰掛仕事として介護が適さない3つの理由  

「他に仕事がないから、仕方ないから…」、つまりやりたくない仕事、腰掛の仕事として介護労働が適さない理由は3つあります。

まず一つは、そもそも、軽い気持ちでは仕事が続かない…ということです。
介護の仕事は、漠然とオムツを変えたり、入浴の介助をしたりと肉体的な仕事だと思っている人が多いのですが、人が人を介護するというのは、加えて相当の精神的ストレスのかかる仕事です。
「感謝される仕事」「人に優しくする仕事」という人もいますが、それも間違いです。
高齢者は好々爺、優しいおばあさんになるわけではなく、特に要介護高齢者の場合、自分の身体が上手く動かないショックや認知症もありますから、イライラしたり、不機嫌になって暴言を吐かれたり、時には感情的になって叩かれたりすることもあります。また、きちんと仕事をしているつもりでも、家族から「部屋が掃除できていない」「あのスタッフは態度が悪い、担当を代えてほしい」などとクレームが寄せられることもあります。「家族の代わりに介護してるんだから、感謝されて当然だ」などと思ったら大間違い、一般のサービス・仕事と同じ「感謝されるような質の高い仕事がしたい」というのが正しい、プロの発想です。
それに対して、初めから高い給与・待遇が約束されているわけではありませんから、間違いなく、すぐに「想像と違う」「介護の仕事なんてやってられない」ということになります。

二つ目は、法的に重い責任が、労働者個人にかかる仕事だということです。
仕事はボランティアではありません。それによってお金をもらっているわけですから、そこには重い責任が生じます。コンビニエンスストアの店員、ファミレスの調理補助、タクシーの運転手、銀行などの金融関係など、どのような仕事でも同じです。
特に、介護の仕事は、その対象者が身体機能や認知機能の低下した要介護高齢者です。
歩行の移動介助、車いすからベッドへの移動介助、入浴介助における一瞬のスキや些細なミスが転倒、転落、溺水となり、それが骨折や脳出血、死亡などの重大事故に発展するリスクが極めて高い仕事です。「ちゃんと介護していたのか」と家族からの感情的なクレームとなり、高額な損害賠償となり、最悪の場合、個人が業務上過失致死傷などの刑事罰に問われることになります。
その責任は、新人だから、無資格だから、非常勤だから…というのは全く関係ありません。
「めんどくさいなぁ…」「憂鬱だなぁ…」「早く終わらないかなぁ…」と思いながらダラダラ仕事をしていれば、必ず大きな事故を起こします。その時に、「こんなはずではなかった…」と青ざめてみても、どうしようもありません。

三つ目は、高齢者介護は、高度に専門的な仕事だということです。
介護の仕事は、家族の代わりにオムツ交換をしたりお風呂に入れたりする仕事、家族介護の代替サービスだと思っている人が多いのですが、それは全くの間違いです。
現代の高齢者介護は、入居者個別の要介護状態に合わせたケアマネジメントに基づいて明確な目標を持って行う医療、看護、リハビリなどと同じ、高度に専門的な仕事です。それがわかっていないと、介護という仕事の奥深さ、面白さ、やりがいは生まれませんし、また、向上心を持ってその専門性、知識・技術・ノウハウを得る努力をしなければ、給与や待遇も上がりません。

つまり、「他に仕事がないから介護でも…」と始めると、やりたくもない仕事を、強い身体的・精神的なストレスにさらされながら、重い法的責任を背負いながら、「大変な仕事なのに給与が安い、給与が上がらない」と文句を言いながら働くことになります。
そして、それに気付いて「やってられない…」と仕事を辞めた後には、知識も技術もノウハウも残っていません。それは、事業者にとっても、高齢者・家族にとっても、一緒に働く同僚にとっても、そして何よりあなたにとって、とても不幸なことなのです。

『介護のプロ』になりたいのであれば、『プロの事業者』を選ぶこと

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