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こんな介護サービス事業者で働いてはいけない ~求人広告から見える事業者の質~

介護看護スタッフの満足度と離職率はリンクする。求人広告をいつも出している事業者、「即戦力の方優遇します」「介護経験者 求む」という求人広告を出す事業者、「いつも人が足りていない」「スタッフがすぐに辞めてしまう」は労働環境に問題がある可能性が高い。

介護スタッフ向け 連 載 『市場価値の高い介護のプロになりたい人へ』

こんな介護サービス事業者で働いてはいけない・・・
その一〇は、求人広告から読み取れることです。

現在、介護人材が慢性的に不足している、介護人材不足が介護経営に悪影響を及ぼしていると言われていますが、実は経営的にみると「介護人材不足」は二つに分かれます。

ひとつは、訪問介護の人材不足。
これは、利用希望者がたくさんいるのに、ホームヘルパーが見つからないというもので、タクシーの需要は高いのにタクシー運転手が見つからないと言うのと同じです。事業が上手くいかないというよりも、ビジネスチャンスなのに人がいないので事業拡大ができないと言うイメージです。
これは経営問題というよりも、社会問題と言うべきもので、最も大きな被害を受けるのは、訪問介護サービスを利用することのできない在宅の利用者・家族ということになります。逆に言えば、需要が拡大している限り、いつまでも「ホームヘルパーがいない…」ということになります。

もう一つは、特養ホームや介護付有料老人ホームの人材不足です。
これらは、介護保険法の中で必要な人員配置が決められていますし、介護付有料老人ホームの場合、それを上回る介護スタッフ配置を契約で定めていればそれに従う必要があります。訪問介護とは違い、必要な介護看護スタッフ数が確保できていれば、それ以上は必要ありません。
逆に、必要な介護看護スタッフ数が確保できなければ、入居者・入所者を向かい入れることができません。最近は、介護付有料老人ホームだけでなく、新設された特養ホームでも開設時に必要なスタッフが集まらず、稼働率が50%以下というところもでてきています。訪問系と違い、施設・住宅系の場合、建築のための借入金の返済は必要ですから、50%利用では大赤字になります。
また、退職者がでて法的な指定基準を下回れば介護報酬は30%の減算になりますし、契約基準を下回れば契約不履行になりますから、実質的に経営が破綻することになります。

介護労働安定センターの「介護労働実態調査(令和2年)」によると、事業者を対象とした訪問介護と介護職員との過不足の調査では、訪問介護の不足感(大いに不足・不足)が56.9%に対して、介護付有料老人ホームが42.9%、特別養護老人ホームが42.6%と、訪問介護の不足が最も大きいという結果がでていますが、「何をもって不足と考えているか」「経営にどの程度影響を与えるのか」は、基本的に違います。
施設系・住宅系の介護労働者不足は、経営破綻に直結する巨大なリスクなのです。
そのため、求人広告を見ると、介護系施設や住宅のものがたくさん目につくのがわかります。

継続的に求人広告を出している事業者

事業者が求人を出す理由は、大きく3つに分かれます。
ひとつは、事業所の新規開設。
特養ホームが来年の四月からスタート、介護付有料老人ホーム・デイサービスを開設するという場合、一度にたくさんの介護スタッフを雇用しなければなりませんから、様々な媒体やインターネット、介護就職セミナーなどを通じて求人を行います。

二つ目は、スタッフの退職に合わせて、求人をするケース。
「看護師が来年の三月末で退職する」「介護スタッフが出産で求職する」など、事前に退職がわかっていて、「いつまでに、どの職種を、何名採用するのか」が明確になっているものです。当然、これも通常の求人活動です。

そして、もう一つが、「いつも求人広告を出している事業者」です。
述べたように、これは訪問介護の場合はありうる話です。述べたように「訪問介護の希望者が多い」「現状、ヘルパー不足で断っている」という場合、いくらでも働く人が欲しいからです。
一方、特養ホームや介護付有料老人ホームなどの施設・住宅系で、いつも求人広告を出している事業者は注意が必要です。「いつも人が足りていない」「スタッフがすぐに辞めてしまう」ということは労働環境に問題がある事業者だという可能性が高いからです。

「即戦力の方を求めています」「介護経験者、優遇します」
これは、見方を変えれば、自分たちでは介護スタッフを育てるノウハウもない、つまり事業者のマネジメント力はないということを公言しているようなものです。
実は、そんな広告を出しても、事業者がイメージする能力の高い即戦力の質の高い介護スタッフは入ってきません。逆に入ってくるのは、自称即戦力の、「わたしは…、俺は…」という我流介護で使い物にならない一番面倒な人です。それもそのはずで、「即戦力とは何か…」「介護経験者だから何なの?」ということさえ、事業者は考えていないからです。
言いかえれば、そう言う人ばかりが集まってくる、チームケアもケアマネジメントも、リスクマネジメントも何もない事業者ということになります。

「求人広告を出しても誰も来てくれない」
そんな悩みが、多くの事業者から寄せられますが、その発想は根本的に間違っています。
介護業界というのは、専門職種ですから、法人・事業所を超えて介護労働者同士の横のつながりが強い世界です。「あそこは働きやすいよ…」「あそこは厳しいけど勉強になるよ…」、または「あそこはやめておいた方がいいよ…」という情報を知らないのは経営者だけです。

それは、いま働いている介護スタッフだけではありません。
介護就職セミナーに出かけて、求職者のふりをして専門学校や福祉系大学の介護学生たちの話に耳をそばだてていると、「あそこは主任さんがボスで、嫌われると大変らしいよ…」「あそこは囲い込みで不正なことをしているらしい…」「夜勤でもほとんど休憩が取れないんだって…」という、詳細な人間関係の話まで聞こえてきます。「和気あいあいと楽しい職場です」などというコメントを無理にだしても、笑われていると思った方が良いのです。

「退職者が出るので求人しようか…」という時に、「介護の仕事をしたいと言っている人がいるのですが…」「介護福祉士の専門学校で同期だった友達が…」という声が、中のスタッフから出てくるのか、そうでないのか…、その差は大きいのです。つまり、「求人広告を出しても誰も来てくれない」というのは、いま働いている介護スタッフも、その労働環境や働きやすさに満足していない、人に勧められない、その事業所に思い入れがないということです。
求人広告にお金をかけるよりも、先にすることがあるはずです。


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こんな介護サービス事業者で働いてはいけない

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