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介護サービス事業所を選ぶ視点Ⅲ ~市場価値を高めてくれる事業所なのか~

介護労働は専門職種であり、年功序列・終身雇用ではなく、個人の技術・知識・ノウハウが事業所単位ではなく介護市場で評価される時代へ突入していく。どこで働くのかで、5年後、10年後のあなたの介護労働者としての市場価値・未来は、天と地ほどに変わってくる

介護スタッフ向け 連 載 『市場価値の高い介護のプロになりたい人へ』


あなたが介護のプロになりたいのであれば、プロの介護サービス事業者を選ぶことです。
ここでいう、プロの介護サービス事業者とは何か…。
介護のプロになりたいのであれば、どのような事業者を選ぶべきなのか…。
最後の一つは、あなたの労働価値・市場価値を高めてくれる事業所です。
その意味を理解するためには、介護職の特性だけでなく、まず社会全体として働き方が大きく変わっていることを理解しなければなりません。

20数年前まで、就職すれば同じ会社で定年まで働き、おおよそ年齢に応じて、主任・係長・課長と役職や給与が上がっていくと言うのが一般的でした。その収入の増加に合わせて、住宅ローンで家を買い、子供を産み育てて、そして定年まで勤め上げて退職金をもらって老後に備えるというものでした。だから、安定している大きな会社に入ること、そのためには良い大学に入ること、良い成績で卒業することが人生安定・成功の近道だったのです。

しかし、この日本型企業の特性と言われた「終身雇用」「年功序列」は、すでに遠い過去のものとなっています。いまや多くの企業で昇給や昇格の評価体系は、「成果主義」にシフトしており、長期間続くデフレ、新興国との競争激化によって、名の知れた大企業でも早期退職勧告やボーナスカットなど、リストラを敢行しています。
週刊誌で、毎年「平均年収トップ」「学生就職ランキング」などという記事が掲載されていますが、その企業名は10年前と様変わりしています。あと10年後には、そのトップ20の会社がどれくらいランキングに残っているか…、いや存在さえしていない企業も複数あるだろう…、というくらい社会の変化は激しくなっているのです。
大企業でも数年前は年収一千万円だった人が、いまはその半分程度という話は珍しくはありません。
いま、大学を卒業して入社し、年齢に合わせて役職や給与が上がり、40年後に退職するときにも確実に存在していると言える企業は一つもないのです。

会社の業績が傾けば、「終身雇用」「年功序列」どころか「成果主義」さえも危うくなっていきます。
成果主義というのは、言い換えれば会社内での評価基準にすぎません。「俺は、この会社で営業成績の記録をつくった…」という営業部長も、経理一筋で財務体質の改善に貢献した経理部長も、高給取りであるが故に、会社に貢献できなくなれば一番初めにリストラ候補となります。そして、会社がなくなれば、その武勇伝さえ一緒に雲散霧消するのです。

介護労働は専門職種 技術・知識が介護市場で評価される世界に突入していく…

では、私たちは、これから何を指針にして働いていけばよいのか。
これからは、どのような世の中、どのような働き方になっていくのか。
それはサラリーマンも成果主義を突き抜け、市場価値の時代に入っていくということです。
いまでも、100%市場価値という働き方もあります。
プロスポーツ選手や芸能人などです。
彼らは、成績や人気だけで、給与や待遇が決まります。日本のプロ野球選手でも数億円という年俸、世界でみればプロのサッカー選手は年間数十億円、テレビに出ている20代のお笑いタレントさんでも、数億円という収入を得ている人は少なくありません。
夢のある世界だとも言えますが、そのような人は極々一部だけですし、スタースポーツ選手でも成績が悪くなれば、一気に年俸は下がります。毎日テレビで見ていた、年収一億円のタレントさんも人気がなくなれば、時給1000円のアルバイト生活になるのです。お笑いタレントさんで、10年15年、ずっとテレビに出続けている人はどれくらいいるでしょうか。本当に厳しい世界です。

一般企業と特殊な世界にいる彼らを比較するのは間違っていると思うかもしれません。
しかし、基本的な考え方は、スポーツマンも芸能人も、一般のサラリーマンでも同じです。
日本有数の大手の電機メーカーなどでも、経営再建・リストラ策の一環として「早期退職者優遇制度」を導入するところが増えてきました。リストラと言えば、「仕事ができない人が辞めさせられる」というイメージを持つ人が多いのですが、実際は、早期退職者優遇制度の募集で、「わたし、辞めます」と手を上げるのは仕事ができる人です。なぜなら、彼らはその傾いた会社にしがみついていなくても、より高い給与で「わが社に来ないか…」と引き抜いてくれる会社がたくさんあるからです。

これは介護業界でも同じ、実際はより顕著だと言っても良いかもしれません。
介護労働は、医療や看護と同じように、専門性の高い介護技能・知識・ノウハウに基づいて業務を行う専門職種です。介護業界は慢性的な介護労働者不足だと言われていますが、その背景にあるのは、事業の中核となる現場を仕切ったり、マネジメントができる中核となる介護人材の不足です。
これは、素人事業者の増加とも関係していて、5年10年働いていても、一年目と変わらない知識・技術しかない、逆に手を抜くことしか覚えていない介護労働者がたくさんいます。本人は、5年10年介護の仕事をしているので即戦力だ、知識やノウハウがあると思っていても、「あぁ、あそこで働いていたのか…、あの会社にいたのか…」というだけで、評価が下がってしまうような事業所もあるのです。

逆に、コンプライアンスを基礎としたリスクマネジメントの実務・ノウハウの高い事業者で働くことができれば、「どのような介護事故があるのか」「どうすれば安全に介助できるか」がわかってきます。ケアマネジメントにおけるケアカンファレンスやモニタリングの重要性、チームケアの構築、他事業者との連携の方法も見えてきます。
高卒で入っても、10年経てば、リスクマネジメントやケアマネジメントのノウハウを得て、介護スタッフだけでなく、生活相談員、ケアマネジャー、現場の責任者、30歳前後で管理者になっている事業所もあります。そう言う人材は、「あそこで働いていたなら、ぜひうちで働いてほしいと」引く手あまたで、「せっかく育てたいい人材が、次々と高給で他の事業所から引き抜かれて困っている」と苦笑いする介護経営者もいます。
あなたが、どこで働くのかで、5年後、10年後のあなたの介護労働者としての市場価値・未来は、天と地ほどに変わってくるのです。

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