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【F006】 高齢者住宅選びは「素人事業者を選ばない」ということ

高齢者住宅は、「玉石混淆」から「プロの事業者」「素人事業者」の二極化の時代へ

高齢者住宅選びの基本は、「プロの事業者」「素人事業者」を見分けること


 

「介護スタッフによる入居者への暴行・虐待」「介護職員による殺人」「介護報酬の不正請求」などのニュースを聞くと、「ひどい悪徳事業者だ・・」と思うかもしれません。しかし、高齢者住宅、介護サービス業界は、「入居者をだましてやろう」「酷い目に合わせてやろう」と悪意を持って経営をしている事業者は、そう多くはありません。

しかし、その一方で圧倒的に多いのが、素人事業者です。

 

~素人事業者激増の背景~

それは、バブル崩壊以降の社会背景、経営環境の変化と関係があります。
飲食店であれ、小売業であれ、建築業であれ、どのような業界、産業でも、一定期間、その業界で修業し、知識や技術を蓄えてから独立、参入するというのが基本です。
しかし、バブル崩壊とITバブル勃興の中で、ベンチャー起業ブームに乗って、「一発当ててやろう」「取りあえずやってみよう」というタイプの起業家が増えてきました。その波と介護保険制度が重なり、「高齢者は増える」「高齢者住宅は儲かる」と、ノウハウも経験もないままに、安易に介護サービス事業、高齢者住宅事業に参入した素人経営者があまりにも多いのです。

特に、高齢者住宅は、その建設に多くのお金が動くため、その無知につけ込むデベロッパーや介護コンサルタントが暗躍します。人口減少や空き地の増加による「遊休土地の有効利用」をうたい文句に、「高齢者は確実に増えます」「介護施設は全く足りません」と土地の所有者や素人経営者を煽ります。
しかし、そうけしかける彼らも、介護ビジネスや高齢者住宅事業のことを何も知りません。
目的は「長期安定経営」「質の高いサービス」ではなく「建設してもらうこと」ですから、開設後は「あとは野となれ山となれ・・」で知らん顔です。

これは、国交省や厚労省にも大きな責任があります。
高齢者住宅は、訪問介護や通所介護などの利用するサービスと違い、要介護高齢者の生活の根幹となる住宅サービスです。経営悪化によって事業の継続が困難になり、介護・食事などのサービスが止まると、生活は根底から崩壊し、生命に関わる問題に発展します。
また、介護スタッフや利用者が限定される閉鎖的な環境であること、一旦入居すると多くの高齢者は行く場所がないために入居者や家族が弱い立場に立たされること、入居者も認知症などによって判断力が低下することなどから、高齢者住宅事業は、虐待や劣悪なサービスの押し付けが発生しやすい事業です。

そのため、「適切に運営・サービスは提供されているか」「虐待などの人権侵害はないか」「不正請求はないか」など、行政や第三者による指導や監査、調査が不可欠なのですが、国は入居者保護施策を有名無実化し、「高齢者住宅は足りない・・」と補助金をつけ、「とりあえず数を増やせばよい・・」という正反対の政策をとってきました。
そのため「囲い込み」と呼ばれる介護報酬の不正請求や、違法施設である無届施設が激増しています。
そして、サービス劣化による入居者の骨折事故、死亡事故、介護スタッフによる虐待、経営悪化による倒産が相次いでいるのです。

このような素人事業者は、サービスも商品も劣悪です。
「介護が必要になっても安心」という言葉をどこでも使っていますが、プロの目から見れば、現在の高齢者住宅で重度要介護状態になっても安心して、安全に生活し続けられるものは一部に限られます。特に、サ高住は、要介護高齢者向けに作られたものではないため、そのほとんどは重度要介護状態になれば生活することはできません。
これは事業者の規模、大手・中小を問いません。
単独の小さな高齢者住宅でも、ノウハウと思いの強い経営者と介護スタッフが一体となって質の高いサービスを提供しているところはたくさんあります。
逆に、介護保険制度の基本も知らないまま、「補助金ありき」「開設ありき」拡大路線を走り続けてきた大手事業者の中にも、素人事業者はたくさんあります。スタッフ教育が追いついておらず、「ホーム長」「管理者」といっても、介護の経験や知識がほとんどない人も少なくありません。
ただ、彼らは嘘をついているのではなく、介護サービスのことも知らず、高齢者住宅のこともよく知らないまま「安心・快適」と言っている素人なのです。

高齢者住宅業界では、悪徳業者よりも、この素人事業者が怖いのです。それは、無免許運転のタクシー、それも自分の能力、運転を過信しているタクシーに乗るようなもので、危険極まりないのです。

 

~素人事業者ほど美辞麗句が多くなる理由~

「入居者さま、ご家族さまの笑顔が、私たちの誇り・幸せです・・」
「介護はサービス業です、入居者さまはお客さまです・・」
「私たちの敬愛する本当におじいさん、おばあさんのように・・」
介護経営者の中には、聞いている方が赤面するような、美辞麗句を重ねる人が少なくありません。
なぜ、素人経営者ほど、このような美辞麗句が多くなるかと言えば、高齢者住宅や介護サービス事業の事業特性や専門性を理解していないからです。

そもそも、高齢者住宅は「安心・快適」と安易に標榜できるほど、簡単な事業ではありません。
そのサービスの対象は、身体機能や判断力の低下した要介護高齢者、認知症高齢者ですから、小さなミス、一瞬のスキが転倒骨折、頭部強打するなど重大事故に発展するリスクが高くなります。
しかし、「高齢者住宅の需要が増える、儲かる」と過剰な期待で参入した素人事業者は、事故やトラブルなどの検討がほとんどできていません。そのため、「安心・快適」と入居者を集めても、事故やトラブルが発生すると、「自宅と同じ住宅ですから・・」「家にいても転倒はするでしょ・・」と言い訳ばかりを口にします。
「安心・快適」と声高に叫ぶ人ほど、その中身は、何もないのです。

「自立から重度要介護まで対応」「あれもできます・これもできます」型の説明も素人業者の特徴です。
基本的に、自立高齢者を対象とした高齢者住宅と、要介護高齢者を対象とした住宅は、そのサービス内容・商品設計の考え方は全く違います。同じ教育施設でも、幼稚園と高校は全く別物なのと同じです。
「認知症対応OK」「医療依存度の高い高齢者もご相談ください」というところも増えていますが、認知症高齢者や医療遺族度の高い高齢者に適切に対応するには、他の入居者とのトラブルや疾病の急変など、そのリスクに対応できるだけの、手厚い人員配置や専門性の高いスタッフ教育が必要になります。
なぜ、「何でもOK」と言ってしまうかと言えば、認知症対応、医療対応の難しさ、リスクを知らないため、また入居率が低いために、とりあえず誰でもいいから・・と無理に対象を広げるからです。その結果、更に事故やトラブルが増えるのです。

このようなリスク管理ができていない事業者では、介護スタッフの離職率も高くなります。
入居者が安全に生活できる環境が整っていないということは、介護スタッフが安全に働ける労働環境が整っていないということです。事故やトラブル、家族からのクレームが発生しても、経営者にその対応力もノウハウもないために、すべて介護スタッフが矢面に立たされます。「介護の仕事が大変だ・・」というニュースのコメントをよく聞きますが、「介護の仕事が大変」というよりも、その事業所の労働環境が劣悪なのです。
そのため、真面目でしっかりしたプロ意識を持つ介護スタッフから離職し、「手抜き」「やる気のない」スタッフほど残ることになります。その結果、さらに事故やトラブルが増加し、手抜きサービス、介護虐待が横行することになるのです。

 

~プロの事業者と素人事業者を見分けることはそう難しいことではない~

ニュースや報道では、どうしても事故やトラブル、虐待などのニュースが多くなるため、「高齢者住宅は怖い」と思うかもしれませんが、そうではありません。入居率、介護スタッフ定着率が高く、安定して経営している高齢者住宅もたくさんあります。
高齢者住宅業界は、「玉石混淆だ」と言われますが、実際は二極化しているのです。
高齢者介護というのは、専門性の高いプロの仕事です。高い技術や知識を持った、プロの介護看護スタッフ、ケアマネジャーが、「それぞれの入居者が安全、安心に生活できるために何が必要か、どのようなサービスが必要か」を家族と一緒に真剣に考えてくれます。

つまり、高齢者住宅選びの基礎は、「プロの事業者」と「素人事業者」を見分けること、つまり「素人事業者を選ばないこと」なのです。
「大手・中小」「高額・低価格」「有料老人ホーム・サ高住」「介護付・住宅型」などに関わらず、「プロか、素人か」の判断は共通です。
それは、「ポイント」と「コツ」を知っていれば、そう難しいことではないのです。

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