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「介護できないのが申し訳ない」と悔やむ必要はない

高齢者住宅に入っても、家族の役割・責任は変わらない。

家族の仕事は介護ではなく、高齢者住宅での豊かな生活環境を整え、支えること


 

介護保険が始まるまで、長い間日本では「親の介護は子供(特に長男の嫁)の仕事」と考えられてきました。「老人ホームに入る人は可哀そうな人」というイメージでとらえられてきた時代もあります。
それは、家長制度だけではなく、高齢者の生活環境や介護環境とも大きく関係しています。
昔は、脳梗塞や脳出血、心筋梗塞になれば、生存率は低く、ほとんどの人が亡くなっていました。
また、病気が治っても、そのまま亡くなるまで老人病院に入院したままという「社会的入院」が一般的だったため、「老人ホームに入る」というのは非常に希だったのです。

しかし、医学の発達によって、麻痺が残っても、そこから20年、30年と生きることができます。
平均寿命の伸展は喜ばしいことですが、その反面、身体的な機能は低下していきますし、認知症の罹患率も高くなります。
また、高齢者介護は、子育てと違って先が見えません。
「半年」「一年」と期間が決まっていれば、ある程度大変なことにも対応できますが、先の見えない介護を、毎日、毎日、24時間365日続けることは非常に困難です。特に、現代社会は、家族形態も変化しており、少子化によって子供の数は減少、核家族化が進み、「共働き」が中心です。どれほど意欲があっても、思いがあっても、自宅で、家族だけで介護できるような環境、状況ではないのです。

最近になって、ようやく家族介護の大変さが認識されるようになってきました。
そのため老人ホームや高齢者住宅のイメージも変わり、「介護が必要になれば、環境の整った老人ホーム・高齢者住宅に入る」と考えると考える人が増えています。

しかし、「親の介護をどうするのか・・」は、生活環境、社会環境云々の問題ではありません。
それぞれの家族の抱える、非常に敏感で、感情的な問題です。
「大切な親だから、自分で介護したい」「育ててもらったのだから、親の介護はしたい」と考えるのは当然のことですし、とても大切なことです。そのため、高齢者住宅を探していても、心の中に「申し訳ない」という屈託があり、相談時においても、「自分は体が弱いので親に申し訳ない・・」と、涙を流される人もいます。

もちろん、「そう考えるのは間違いっている・・」というものではありません。
ただ、「家族が介護できないのは申し訳ない」「高齢者住宅への入居は家族の責任の放棄だ」などと考える必要は全くありません。
それは、「家族介護は大変だから・・」「物理的に不可能だから・・」という話でもありません。
なぜなら、高齢者住宅に入っても、家族の役割・責任は何も変わらないからです。

 

~高齢者住宅に入っても、家族の役割は変わらない~

そこには、二つの理由があります。
一つは、教育や医療と同じように、介護もプロに任せた方が、より専門的・科学的な介護が受けられるということです。
例えば、排泄介助でも、介護のプロは、事故のリスクや尿意便意の有無、排泄の間隔などから「その高齢者に最も適した、快適な排泄方法は何か」を考えます。そのため、病院や家ではオムツ排泄だった人も、高齢者住宅ではトイレでの自立排泄が可能になる人がたくさんいます。
また、自宅で生活しているとどうしても閉じこもりがちになりますが、高齢者住宅では様々なレクレーションが行われますし、新しい友達もできます。食事サービスも同様で、嚥下機能や咀嚼機能の低下した高齢者でも食べやすく、美味しい「介護食」も日進月歩で進化しています。
「家族の介護よりもプロの介護の方が良い」という単純な話ではありませんが、質の高いプロの高齢者住宅に入れば、専門的・科学的な生活支援サービスが受けられるということは事実です。

もう一つは、「高齢者住宅に入っても、家族の責任や役割は変わらない」ということです。
老人ホーム・高齢者住宅と言えば、昔の養老院をイメージする人も多く、「すべて施設、事業者にお任せしなければならない」と考えがちですが、まったく違います。高齢者住宅が提供しているのは、高齢者の身体機能に合わせたバリアフリーの「住宅サービス」と、介護、看護、食事などの「生活支援サービス」であり、「家族代行サービス」ではありません。どのような生活をしたいのか、どのようなサービスを受けるのかを決めるのは本人と家族であり、質の高い「介護、看護、食事」などのサービスをアウトソーシングしているだけなのです。

 

~高齢者住宅への転居は、「親が近くのアパートに引っ越してきた」のと同じ~

最近、田舎で暮らす老親が心配だからと、自分が住む地域のマンションに親を呼び寄せるという人が増えています。「高齢者住宅、老人ホームへの入居」と言うと、大仰に考えてしまいますが、基本的にそれと同じです。介護付有料老人ホームでも、「親が近くのマンションに越してきた」「そこには介護や食事がついていた」というだけことなのです。

親が近くに住んでいれば、仕事帰りや買い物帰りなど、ちょっとした時間に、会いにいくでしょう。
「介護付有料老人ホームだから・・」ではなく、親の家ですから、お茶を飲みに行く感覚で訪問すればよいのです。いつも長居する必要はなく、5分、10分でも構いません。そうすると、介護スタッフやご近所さん(他の入居者)とも仲良くなれますし、時間があるときには、介助しながら一緒にご飯食べたり、「洗濯たたみ」などを手伝えば、忙しい介護スタッフはとても喜んでくれます。
「遠くて毎日はいけない、仕事があるので頻繁には訪問できない」というのであれば、毎日電話すればいいのです。これからは顔を見ながら話せるIP電話が中心となりますから、長電話である必要もなく、「寒くない、変わりない?」程度で良いのです。
そのうちに、「毎日来なくていい・・」「毎日電話してこなくていい・・」と親から言ってきます。

親子関係というものは、なかなか微妙で厄介なものです。
高齢者の介護は、子供の育児と違い、先の見えないものです。また、加齢によって、できることではなく、できないことがどんどん増えていきます。自宅介護で「排泄の失敗」「食事の失敗」などが続くと、介助者の心も体も疲弊していきます。失敗して汚れたトイレを掃除して、着替えをさせて・・ということが毎日続くと、仕方ないと思いつつも、「しっかりしてよ、何しているのよ・・」と厳しい言葉を投げつけ、またそんな自分に落ち込むということの連続です。
親の介護のために仕事を辞める「介護離職」、介護のために子供夫婦が別居する「介護別居」が増えており、「立派な娘だ」「親孝行の息子だ」という人もいますが、それで本人も親も幸せになったという話はあまり聞きません。

高齢者住宅への入居は、決して「家族の役割の放棄」ではありません。
「介護の部分」だけをプロに任せて、その余力は「家族の役割」に回せばよいのです。
実際、「高齢者住宅への入居で、親に優しくなれた」「ゆっくり話をする余裕ができて、子供の頃のように親子のやり直しができた」という人は少なくありません。
介護はプロに任せ、その余力を使って、親が最後まで安全で快適に生活できるよう、人生を全うし良い終末を迎えることができるように、全力でバックアップすればよいのです。

そのためには、まず、その生活を一緒に支えてくれる、信頼できる「プロの高齢者住宅事業者」を選ばなければならないのです。要介護状態になっても、安心して安全に生活できるだけの環境を、家族と高齢者住宅が一体となって整えるのです。

もちろん親の代わりに、その本人に一番適した高齢者住宅を選べるのは家族だけです。
家族の役割は、「高齢者住宅への入居後」ではなく、「高齢者住宅選び」から始まっているのです。

 

 

 

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