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介護休業期間にすべきこと ② ~老人ホーム選択時の留意点 Ⅰ~ 

家族は不安から「独居よりも、高齢者住宅・老人ホームに入った方が安心」「老人ホームに入れば介護問題が解決する」という幻想を抱きがち。ただ認知症や重度要介護状態で老人ホームや高齢者住宅への入居を選択する方が良い場合もある。その選択のポイントと視点について整理する

高齢者・家族向け 連載 『高齢者住宅選びは、素人事業者を選ばないこと』 061


生活環境・介護環境の整備は、大きく「住み慣れた自宅(実家)で生活を続けるのか」「介護機能の整った老人ホーム・高齢者住宅に住み替えるのか」に分かれます。
ただ、自宅で生活をスタートすると、「本当に一人で大丈夫だろうか」「また転倒・骨折するんじゃないか」という不安が生まれ、「ずっと介護休業をとれるわけではないから…」と老人ホームや高齢者住宅への入居を検討する家族は少なくありません。

しかし、前々回、述べたように、「独居よりも、高齢者住宅・老人ホームに入った方が安心」「老人ホームに入れば介護問題が解決する」というのは幻想です。「早く安心したい」と「安心・快適」と美辞麗句の素人事業者につかまると、一生後悔し続けることになります。
ただ、中程度以上の認知症や重度要介護高齢者になると、一人で生活することは難しく、金銭的に可能であれば、老人ホームや高齢者住宅を選択する方が良い場合もあります。
ここでは、民間の高齢者住宅を選択する場合のポイント・視点を整理します。

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老人ホーム・高齢者住宅選びの基礎知識

まずは、民間の老人ホーム・高齢者住宅を選ぶ上で、必要な基礎知識について簡単に整理します。

① 制度・規模・価格ではなく商品を選ぶという視点をもつ
民間の高齢者住宅には、介護付有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅など、様々な制度・基準があります。中には制度に基づかない無届施設もありますが、低価格であってもこれは社会保障費を搾取する貧困ビジネスで、反社会的組織が行っているところもあります。違法だとわかっていて運営している、スタッフも働いている事業者だということは理解しておかなければなりません。

また、介護保険施設の特別養護老人ホームと違い、「介護付有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」といっても、それぞれに介護システム、サービス内容、価格設定はバラバラです。ただ「高い入居一時金を支払ったから大丈夫だろう…」というわけではありませんし、「名前の通ったところだから安心」「大手だから大丈夫」というわけでもありません。制度名称や規模、価格、イメージではなく、サービス・商品を選ぶという視点が必要です。

② 「要支援~軽度向け住宅」と「中度~重度向け住宅」は違う商品
二つ目は、「要支援~軽度要介護向け住宅」と「中度~重度要介護向け住宅」は基本的に違うものだということです。それは同じ学校でも、小学校と大学が全く違うものであるのと同じです。

民間の高齢者住宅の介護システムは、特定施設入居者生活介護の指定をうけた介護付有料老人ホームと、自宅と同じ区分支給限度額方式の住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に大きく分かれます。区分支給限度額方式は、自宅と同じ「3時に排泄介助」「6時に排泄介助」というポイント介助が基本となるため、24時間365日包括的な介護サービスが必要となる重度要介護高齢者、認知症高齢者には対応できません。介護付有料老人ホームも「介護付だから安心」と言う訳ではなく、介護スタッフが少ないところでは、適切な介護サービスが受けられず重大事故が多発しています。

また、介護システムだけでなく、「要支援・軽度向け」と「中度・重度向け」では、建物設備の考え方が基本的に違います。「中度・重度向け」は、食堂と居室が同一フロアに設置されているのが原則で、「一階が食堂、二階~四階が居室」という食堂・居室分離型では、一日三回食堂までの移動が必要となるため、車いす利用の高齢者の生活には適していません。

要介護高齢者の生活環境整備は、「要支援~軽度要介護」の時は自宅で、「中度~重度要介護」になり一人で生活することが困難になれば、高齢者住宅・老人ホームへの入居を検討するのが基本です。ただ、要支援程度であっても「一人暮らしは不安」「家族のそばで生活したい」という人もいるでしょう。その場合、「中度~重度要介護」になれば、もう一度住み替える必要があるということを、理解しておく必要があります。

③ 家族の住む近くの高齢者住宅・老人ホームを選ぶこと
高齢者住宅・老人ホームは「子供のいる場所で選ぶ」というのが原則です。特に、要介護高齢者の場合はその傾向が強くなります。
身体が動かなくなってからの新しい環境での生活は、高齢者にとって大きな不安・ストレスです。なによりも「家族がそばにいてくれる」「いつでも来てくれる」という安心が何よりも代えがたいものです。電車で3時間、4時間かかる、往復すると一日仕事ということになると、時間だけでなく費用もかかりますから、度々訪問することはできません。また、「骨折した、入院した」ということになれば、会社を休んで駆けつけることになりますし、親からサービスの不満や不安を聞かれても、無理に説得して後ろ髪をひかれるような思いで岐路につくことになります。

要介護状態になれば、外出の機会は限られますから、「実家の近くだから…」ということに大きな意味はありません。近くに住んでいれば「今日は母のところに行かなければ…」と思わなくても、仕事帰りや買い物帰りなど、ちょっと空いた時間に訪問することができます。いつも長居をする必要はなく、「変わりない?」「足痛いっていってたけど、どう?」と10分、15分顔を見に行くことができます。「あまり食欲がない」と聞けば、家で食べていた好きな総菜やお漬物などをもっていくこともできます。「老人ホームに入居する」というと大仰な感じがしますが、「近所に母が引っ越してきた、そこに介護が付いていた…」程度の感覚でよいのです。

④ 紹介業者に頼らずに自分の目で選ぶこと
私たちが、一般的に賃貸マンションやアパートを探す場合、不動産の仲介業者に行きます。
同様に、最近は民間の高齢者住宅・老人ホームの紹介業者が増えています。そのため、「老人ホームは色々あってよくわからないから・・プロの業者に任せた方が安心」と考える人が多いのですが、残念ながら、「不動産仲介業」と「老人ホーム紹介業」は、全く違うものです。

一般の不動産取引(売買・賃貸借)仲介は、宅地建物取引業法という法律を土台としています。この仲介業を行うためには、都道府県知事に申請し、免許を受けなければなりませんし、取引不動産の内容を説明する人は「宅地建物取引士」という国家資格に合格する必要があります。この仲介者は、何よりも正確性・中立性を求められます。紹介した物件の内容(価格・広さ・付帯設備等)について、「入居後に間違っていた…」「聞いた話と違う…」ということがわかれば仲介業者が責任を負わなければなりません。

これに対して、現在の老人ホーム紹介業には、法律も資格も免許もありません。法体系の規制がなく、介護の知識や経験が何もない人でもすぐに始められます。この紹介業は「入居希望者・家族からの相談・紹介は無料」ですが、ボランティアではなく、紹介すると老人ホームから数十万円・数百万円の紹介料が入ります。つまり、老人ホーム紹介業は、中立的な仲介業ではなく「老人ホーム営業のアウトソーシング」なのです。もし説明や内容に虚偽や間違いがあっても、紹介業者は責任を取る必要はありませんし、法的な罰則もありません。

老人ホーム選びで最も大切なことは、「たくさんの老人ホームから選ぶ」「たくさんの施設長・管理者と話をする」ということです。
しかし、紹介業者は、基本的に契約している高齢者住宅しか紹介しませんから、その選択の幅は狭くなります。また、その性格上、「その高齢者・家族に合った高齢者住宅」よりも、「紹介料の高いところ」を勧める紹介する、「どこかに押し込む」ということになります。逆に、優良な事業者は、高額な紹介料を支払って紹介業者には頼まなくても、入居者を集めることができます。逆に人気のないところは、高い紹介料を設定することになります。どっちに転んでも、玉石混淆の紹介業者を利用するのは、リスクが高いのです。




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