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事前準備に必要な資料・情報を集める

高齢者住宅選びのスタートは、パンフレット・ホームページなどの資料集めから。
中でも不可欠なものが重要事項説明書。複数の事業者の重要事項説明書を比較、検討すれば、事業者の質、プロとしての経験、ノウハウが少しずつ見えてくる。

高齢者・家族向け 連載 『高齢者住宅選びは、素人事業者を選ばないこと』 033


この10年で、高齢者住宅選びは大きく変わりました。
それは、様々な情報がインターネットを通じて得られるようになったこと、そしてその機能、内容はどんどん充実しているからです。
いま、高齢者住宅の情報サイトは、たくさんあります。
条件を設定して検索できるものもありますから、その絞り込みは非常に簡単です。
中度~重度要介護高齢者の高齢者住宅を選ぶための、基本ポイントをおさらいしておきましょう。

① 特定施設入居者生活介護の指定を受けており、【2:1配置】以上のスタッフ配置であること
         中度・重度 要介護高齢者住宅の基本 ~介護システム~🔗
② 建物設備は「居室・食堂・浴室同一フロアタイプ」であること
   中度・重度 要介護高齢者住宅選びの基本 ~建物・設備設計~🔗 
③ 場所は、住み慣れた場所よりも、家族が生活している場所
   どちらを選ぶ ・・ 住み慣れた場所? 家族の近く?🔗  

この条件で、おおよその絞り込みできるかと思います。「看取りケアができる」「医療依存度の高い高齢者にも対応」など細かい条件設定ができるものもありますが、これは事前準備の段階ではほとんど意味はありません。それは事業者がそう言っているだけで、本当に可能かどうかは別だからです。

高齢者住宅選びのポイントは、できるだけたくさんの高齢者住宅を比較、検討することです。
特に、場所、エリアについては、「距離的に近い」ということだけでなく、交通網や日々の生活を想定しながら、「訪問しやすい」ということが大切です。「会社の帰りに立ち寄る」「週に一度程度行く大型量販店までのルートにある」など、色々と考えられるでしょう。
「たくさん見学にいく」となると大変ですが、資料を比較することは、数が増えてもそれほど時間や手間のかかることではありません。たくさんの高齢者住宅を比較すればするほど、様々な商品、サービスがあり、様々な経営者がいることがわかってきます。
高齢者住宅選びのスタートは、まず、事前準備のための資料・情報収集です。

高齢者住宅の選択に不可欠な書類は「重要事項説明書」

高齢者住宅選びの基本となる資料は「契約に関する資料」と「その他生活関連資料」に分かれます。

契約に関する資料
〇 有料老人ホーム入居契約書   〇 有料老人ホーム管理規定
〇 有料老人ホーム重要事項説明書  〇 特定施設入居者生活介護利用契約書
その他、生活関連資料
〇 パンフレット   〇 食事のメニュー表  〇 行事・イベントの予定表
〇 事業者発行 「ホームだより」  〇 老人ホームのホームページ
〇 管理者・スタッフのブログ、FBなど

一つは、契約関連資料です。
有料老人ホームであれ、サ高住であれ、高齢者住宅という商品は、住宅サービスに介護看護、食事、生活相談などのサービスが付いた「生活支援サービス付き 高齢者専用住宅」です。ただ、「介護看護サービス」といっても、サービスの中身や手厚さ、含まれる範囲は、それぞれに違います。「食事サービス」「生活相談サービス」も同様にその中身、内容はそれぞれ違います。
また、食事や入浴など集団生活という側面も強くなりますから、一般の住宅にはない生活上の禁止事項や、事業者からの契約解除(つまり退居要件)も定められています。「一旦入居すれば何があっても安心・快適」「終の棲家だから死ぬまで生活できる」というわけではありません。
そのため、「介護が必要になっても安心・快適」ではなく、各種サービス内容の違いを比較し、理解する必要があります。

ただ、日本人は、アメリカなどの契約社会ではありませんから、「契約書を精査する」という作業に慣れていません(それだけ騙されることの少ない幸せな環境だったとも言えるのですが)。

しかし、「とりあえず見学から・・」は大失敗のもと  で述べたように、高齢者住宅業界はまだ新しい業界です。素人事業者が多く、また入居者・家族側も、その生活やサービスに慣れていません。制度・商品の基礎・土台もきちんとできていないため、「どの高齢者住宅でも基本的なサービスは受けられる」「最低限のサービス・生活はできる」と約束されるものではなく「高額だから質の高いサービス、手厚いサービスが受けられる」というものでもありません。
サ高住や住宅型のように、「介護が必要になっても安心・快適」とセールスしながら、実際には「介護看護サービスは、高齢者住宅は無関係」というところもあります。一度入居すればそう簡単に退居できませんから、しっかりと契約書を確認して、法的な権利・義務関係を含め、その中身をきちんと理解しなければならないのです。

もう一つが、その他生活関連資料です。
高齢者住宅の情報サイトには、たくさんの写真とともに、その雰囲気がわかる様々な情報が提供されています。最近は、ホームページだけでなく、管理者や介護スタッフがブログやフェイスブックで日々の生活を発信するところも増えてきました。管理者が、日々どんなことに悩み、どんなことを考え、どんな仕事をしているのかがわかるものもあります。
高齢者住宅は、レストランブティックのように単発的に利用するサービスではなく、生活の基礎となる住宅サービスであり、入居後から長いお付き合いとなります。その人となりを知ることができれば、感じていただけることは多いでしょう。

これらの資料の中で、高齢者住宅選びの基礎となるもの、中核となるものは「重要事項説明書」です。
これは、その名の通り、入居契約に付随して、サービス内容、価格などの重要事項が示されたものです。国が定めた標準書式に従って『事業主体』『土地・建物の所有者』『施設概要』『利用料』『サービス概要』『入居者状況』などに分けられており、その有料老人ホームの全体像がわかるようになっています。

最近は、情報サイトでも、その重要事項説明書の内容に沿って、利用料やサービス概要がわかりやすく表示されているもあります。概要をつかむのには良いのですが、ただホームページの情報は、いつの時点での情報なのかわかりませんし、「誰が書いたのか」「本当に正しい情報なのか」が確認できるわけではありません。「ホームページに書いてあったことと違う」と言っても、情報が更新されている場合、それを証明するのは容易ではなく、プリントアウトしてあっても「書き間違えた」と言われればそれまでです。

そのため高齢者住宅選びにおいては、ネット情報ではなく、オフィシャルに提供されている契約資料としての重要事項説明書を必ず手に入れる必要があります。この重要事項説明書は、国がその指針を定め、それぞれの事業者が自治体に届けた公的な契約書類ですから、その情報の重み、信ぴょう性が違うのです。

これがなければ、高齢者住宅選びは始まりません。
各高齢者住宅のホームページで見られるところもあれば、東京都福祉保健局のように、自治体で各有料老人ホームの重要事項説明書をダウンロードできるにしているところもあります。(東京都有料老人ホーム重要事項説明書一覧)
ただ、できれば事業者に直接連絡して、送ってもらうのが良いでしょう。

重要事項説明書は、横断的比較のために最適な資料

この重要事項説明書には、サービス内容や月額費用の詳細だけでなく、介護スタッフの経験年数、有識者の数、一年間の採用者・退職者などの情報もありますし、全体の入居率だけでなく、要介護度別、年齢別、男女別の入居者数や途中退居した人数なども一覧で示されています。

また、この重要事項説明書は、国の定めた指針によって策定されたものですから、項目・様式が統一されています。そのため、複数の事業者のサービス内容、価格帯などを横断的に比較することが容易です。これが高齢者住宅選びにとって、とても需要なのです。

同じ介護付有料老人ホームで、「介護が必要になっても安心・快適」と言っていても、介護スタッフの配置も、看護スタッフの配置は違います。

「AホームとBホームは、定員は同じ50人、【2:1配置】だけど看護師の数が違うな」
「夜勤の数も違うな。Aホームは2人だけど、Bホームは3人いるのか・・」
「このホームは、介護福祉士の資格を持っている人が多いな」
「派遣スタッフの割合が多いな」「短期間で、辞めている人が多いな」

一つの老人ホームを漠然と見ているだけではわからなくても、いくつかの老人ホームを比較するだけで、見えてくることはたくさんあるのです。

これは価格帯も同じです。「入居一時金の金額は同じでも、初期償却金や償却期間が違うな」ということがわかれば、3年、5年で亡くなったときに、返還される金額は全く違ってきますし、「ここはきちんと保全してないな」ということがわかれば、経営に難あり・・?ということもわかってきます。

もう一つ、重要になるのは疑問の整理です。
高齢者住宅選びはほとんどの家族にとって初めての経験ですから、重要事項説明書を読んで、比較していけば、疑問に思うこと、わからないことがたくさんでてきます。
例えば、看護師配置や医療ケアだけでも、

「管理者と看護師は兼務になっているけど、どんな仕事をしているんだろう・・」
「心臓にペースメーカーがあるのだけれど、ケアしてもらえるのだろうか・・・」
「インシュリンの注射が必要なんだけど、看護師は何時から何時まで勤務しているか・・」
「通院介助や入院時のサポートもしてくれるんだろうか、それは家族がやるんだろうか・・」
「夜間に急変したときはどうするんだろう・・ 病院に付き添ってもらえるんだろうか・・」

など、個別に疑問に思うことはたくさんあるでしょう。
高齢者住宅選びには、実際の生活をイメージしながら、「あんなとき・・・」「こんなとき・・・」とたくさんの疑問をもつことがとても大切で、それを見学で聞けばよいのです。
同じ質問をしても、どのように答えるのかは事業者によって全く違います。「たぶん大丈夫。なんでもOK」なのか、きちんとリスクや事例、ケースを示して、できること、できないことを説明できるかによって、その事業者の質、プロとしての経験、ノウハウが、少しずつ見えてくるのです。

「事前準備、比較、疑問点の整理」をしないまま訪問、「とりあえず見学」しても、まったく意味がないことがわかるでしょう。


「自立対象」と「要介護対象」は全く違う商品

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高齢者住宅選びの基本は「素人事業者を選ばない」こと

  ☞ ポイントとコツを知れば高齢者住宅選びは難しくない (6コラム)
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