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中度重度要介護高齢者住宅の基本 ① ~介護システム~

ポイント介助・事前予約が基本の、区分支給限度額方式では、重度要介護高齢者の生活を支える介護サービスは提供できない。介護目的で高齢者住宅を選ぶのであれば介護付であることが必須。ただし、指定人員配置の【3:1配置】ではなく、【2:1配置】以上であることが必須。

高齢者・家族向け 連載 『高齢者住宅選びは、素人事業者を選ばないこと』 031


自立・要支援と中度・重度要介護の高齢者住宅は、サービス内容、商品設計がまったく違います。
自立~要支援 高齢者住宅の基本① 🔗で述べたように、自立~軽度要介護高齢者の場合、その中核となるサービスは生活相談サービスです。

一方の、中度・重度要介護高齢者の場合、その中核となるサービスは介護サービスです。起床から就寝まで、24時間365日ほぼすべての生活行動に対して介助が必要になりますし、自分の希望、意思を伝えることができない人も多くなることから、高齢者住宅事業者への依存度が高くなります。
そのため、質の低い高齢者住宅を選んでしまうと、悲惨な生活を余儀なくされることになります。

しかし、高齢者住宅選びは「素人事業者を選ばない」ということ🔗で述べたように、大手、中小を問わず、「高齢者住宅の需要が増える、高齢者住宅は儲かる」と安易に参入、拡大してきた素人事業者が多く、入居者保護施策も全く整ってきません。それぞれの高齢者住宅が、正しい説明をしていなくても、「できないことをできる」と言っていても、それを見破ることができなければ、すべて「だまされた方が悪い」ということになってしまいます。

介護付、住宅型、サ高住などの制度種類を問わず、ほぼすべての高齢者住宅は「介護が必要になっても安心・快適」と言っていますが、実際に中度・重度要介護高齢者になっても安全に生活できる高齢者住宅は、全体の2割~3割程度しかありません。
言いかえれば、7割~8割は素人事業者だということです。

ただ、それを見破ることはそう難しいことではありません。
要介護高齢者住宅は、「プロの事業者か、素人事業者か」はわざわざ訪問して見学しなくても、「介護システム」と「建物設備」の二つのポイントをチェックするだけで、誰でもすぐにわかるのです。
まずは、介護システムのチェックです。

特定施設入居者生活介護の指定を受けた「介護付」であること

介護保険制度の要介護度は、必要となる介護時間を基礎として認定されています。
要介護1~要介護3~要介護5と要介護度が重くなるにつれて、たくさんの介護サービス量(サービス時間)が必要になるという考え方です。
ただ、変化するのはサービス量だけではありません。要介護高齢者の生活を考えると、要支援・軽度要介護高齢者と、中度・重度要介護高齢者は「介護サービスの内容・中身」が大きく変化します。(その違いについては、どちらを選ぶ ・・ 介護付か? 住宅型か? ①🔗、 どちらを選ぶ ・・ 介護付か? 住宅型か?②🔗 を必ず熟読してください)

そのため、現在の介護保険制度では、重度要介護高齢者になると、区分支給限度額方式の住宅型やサ高住では生活できません。低価格の住宅型有老ホームやサ高住でも、「重度要介護高齢者対応可能」「実際に重度要介護高齢者も生活している」というところもありますが、そのほとんどは、介護保険の基礎もしらない素人事業者か、もしくは介護保険の不正を行っている悪徳業者です。

また、区分支給限度額方式は、外部の訪問介護や訪問看護、通所介護など、様々なサービスが利用できる、自由に選択できるというメリットがありますが、それぞれ個別契約ですから「頭が痛いのでデイサービスを休む」「その代わりに食事の手配や入浴介助の手配をしたい」といった体調変化によるサービス変更を、本人もしくは家族が自分でケアマネジャーやデイサービス事業所に連絡しなければなりません。要介護3~5という重度要介護高齢者や離れて暮らす家族に、そんなことができるはずがありません。

結局は、高齢者住宅事業者の同一法人、関連法人が運営するサービスを使わざるを得ない、その「押し売り介護」に従わざるを得ないということになります。これが、「囲い込みビジネスモデル」の実体です。つまり、事故やトラブルで高齢者住宅事業者に責任が及ばない『本人の選択による自由選択』とする一方で、実際には入居者はそのサービス以外選択の余地がないという、非常に不利益な契約になっているのです。
介護目的に、要介護高齢者に入居するのであれば、特定施設入居者生活介護の指定を受けた介護付有料老人ホームであることが、絶対条件です。

介護看護スタッフ配置は【2:1配置】以上であること

介護付有料老人ホームは、介護付という言葉からくるイメージも手伝って、「要介護高齢者対応の有料老人ホーム」だととらえている人は多いでしょう。実際、多くの介護付有料老人ホームで、「介護付きだから重度要状態になっても安心・快適」という、セールストークが行われています。述べたように、区分支給限度額方式よりも、特定施設入居者生活介護の方が要介護高齢者に適した報酬体系であることは間違いありません。

しかし、残念ながら、「介護付だからOK」というわけではありません。
それは中度・重度要介護高齢者が増えてきた場合、特定施設入居者生活介護の指定基準だけでは、最低限の介護サービスを受けることもできないからです。

特定施設入居者生活介護の指定基準配置は【3:1配置】です。
60人の要介護高齢者が入居している場合、最低、20人(常勤換算)以上の介護看護スタッフを配置して、介護サービスを提供しなければなりません。その人数を下回ると、介護報酬が減算になり、改善のないままの状況が続けば指定取り消し、事業閉鎖となります。
ただし、これは指定配置基準、つまり最低基準であり、すべての介護付有料老人ホームは「60人の要介護高齢者を20人で介護しなければならない」というものではありません。それぞれの高齢者住宅で、「指定基準以上の介護スタッフを配置して、より手厚い介護サービスを提供する」ということができます。これを上乗せ介護といい、その上乗せされた配置によって、介護保険以外の費用が掛かります。

下表は、二交代制(日勤8時間、夜勤16時間)、年間250日勤務と仮定(週休二日、有給10日程度)として、実際に働いている人数を一覧にしたものですが、同じ介護付有料老人ホームでも、働いている介護スタッフの数、つまり介護の手厚さがは全く違うということがわかるでしょう。

ただ、【3:1配置】を超えた部分、【2.5:1配置】【2:1配置】と上乗せのスタッフ配置数が多くなれば、それだけ上乗せ介護費用は高額になります。そのため、「それほど高額で手厚いサービスでなくてもよい」「基本的な介護サービスが受けられればそれでよい」と、指定基準配置の【3:1配置】の介護付有料老人ホームを選ぶ人は少なくありません。

しかし、問題は【3:1配置】で基本的なサービスが受けられるのか否かです。
特定施設入居者生活介護の指定基準配置は、全入居者が要介護1でも、要介護5でも同じ【3:1配置】です。言い換えれば、この基準配置は、要介護1~要介護5の平均値の、その基本部分でしかありません。
しかし、実際には、要介護1と要介護5の高齢者では、介護サービス量は少なくとも二倍~三倍は違います。排泄や食事など、ある程度、身の回りのことは自分でできる要介護1~2の軽度要介護高齢者が多ければ、この【3:1配置】でも、余裕をもって対応することは可能ですが、要介護3~5の重度要介護高齢者が多くなると、指定基準の介護看護スタッフ配置で介護サービスを提供することはできなくなるのです。

それを表したのが、上記の図です。
高齢者は加齢や疾病によって、必ず要介護状態は重度化していきます。高齢者住宅全体で見れば、最初は、要介護1・2といった軽度・中度要介護の高齢者が多くても、加齢によって要介護3~5という高齢者が増えていきます。そうなると、移動、移乗、排せつ、コール対応など必要となる介護サービス量は、どんどん増えていきます。

「重度要介護高齢者になっても安全に生活できる生活環境」は、「重度要介護高齢者が増えても安全に介護できる介護環境」に裏打ちされるものです。介護という仕事は、介護サービス量に比例して介護スタッフ数が必要となる労働集約的な仕事ですから、介護システムが重度要介護高齢者の増加に対応できないと、その負担はすべて介護スタッフにかかります。転倒・骨折事故や家族からのクレーム、入居者間のトラブルも増え、「こんな大変な仕事はやっていてられない」「私には無理」と、入職後、三ヶ月、半年という短期での離職者が多くなるのです。

この話をすると、「【3:1配置】でも重度要介護高齢者でも生活されています」「介護スタッフはみんな頑張っています」と必ずいくつかの事業者から反論があります。
ただ、ほとんどの入居者が要介護1、2の軽度要介護高齢者で、重度要介護高齢者が数人程度であれば対応可能ですが、重度要介護高齢者が、3割、4割と増えてくると、対応できなくなります。
それは介護労働の実務をもとに数字で表すことのできる客観的な事実です。
「介護が必要になっても安心」を標榜するには、「一人、二人の重度要介護なら対応可」ではなく、「大半の高齢者が重度要介護状態になっても対応可」でなければなりません。「介護スタッフががんばっている、がんばっていない」という精神論や根性論の話ではなく、介護システム設計上の欠陥なのです。

実際、重度要介護高齢者の多いユニット型特養ホームの介護スタッフ配置は、【1.9:1配置】~【1.6:1配置】という非常に手厚い配置が行われています。それだけたくさんの介護スタッフがいないと介護サービスが提供できないからです。
高齢者住宅で必要となる介護スタッフ数は、平均要介護度や建物設備設計によっても変わってくるのですが、中度・重度要介護高齢者の生活、介護サービス量の変化、それに対応する介護スタッフ数をシミュレーションしていくと、中度・重度要介護を対象とした高齢者住宅には、少なくとも【2:1配置】以上の介護看護スタッフ配置は必要になります。

もちろん、これは「現在の指定基準の【3:1配置】が最低基準として適切なのか」という制度的な問題でもありますが、同時に【3:1配置】の高齢者住宅事業者は、高齢者住宅の介護の現場を知らないまま「安心・快適」と言っているということでもあります。

結論としては、要介護高齢者が介護目的で高齢者住宅に入居する場合は、介護看護スタッフ配置が【2:1配置】以上の介護付有料老人ホームを選ばなければならないということです。

「自立対象」と「要介護対象」は全く違う商品

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高齢者住宅選びの基本は「素人事業者を選ばない」こと

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