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どちらを選ぶ・・・介護が必要になってから? 早めの住み替え?

なぜ、老人福祉施設は、いくつもの種類があるのか。

「自立・軽度要介護向け」と「重度要介護向け」は商品・サービス内容が違う


 

高齢者・家族向けのセミナーで、必ず出てくる質問が、「高齢者住宅に入るのは、介護が必要になってからが良いのか」、もしくは「元気な時から入居するのがよいか・・」です。

高齢者住宅業界の中でも、「早めの住み替えニーズ」という言葉が流行したことがあります。
最近は、振り込め詐欺など高齢者を狙った犯罪や、死後数週間見つからないといった孤独死も多く、介護が必要ではなくても、一人暮らしに不安を感じている高齢者や、それを心配する家族が増えています。
「介護が必要になる前に転居した方が、より安心ですよ・・」
「住み慣れた環境で介護を受ける方が、より安心ですよ・・」
と言われると、「そうだなぁ・・」と納得する人も多いでしょう。

しかし、それはそう簡単ではありません。なぜなら、「自立度の高い高齢者に適した高齢者住宅」と「要介護高齢者に適した高齢者住宅」は、基本的に全く違う商品だからです。

 

~なぜ老人福祉施設は、いくつもの種類があるのか~

まずは、現在の老人福祉施設の話をしましょう。
老人福祉施設は、大きく軽費老人ホーム、養護老人ホーム、特別養護老人ホームに分かれています。

軽費老人ホームは、自立度の高い高齢者を対象とした老人福祉施設です。
一人暮らしが不安で身寄りが誰もいない、家族との関係が悪く同居できないといった自立高齢者のために整備された老人福祉施設です。全室個室で基本的に生活は自由です。

養護老人ホームは、経済的な理由や生活環境上の理由から、自宅で生活することが難しい要支援・軽度要介護高齢者を対象とした老人福祉施設です。アルコール依存症や軽度の精神疾患など、一般の住宅では対応が難しい高齢者も対象としていますが、基本的には入居時には生活が自立していることが原則です。

もう一つが特別養護老人ホームです。
特別養護老人ホームは、重度要介護高齢者を対象とした福祉施設です。介護付有料老人ホームなど民間の高齢者住宅との役割の違いが分かりにくくなっていますが、経済的な理由、生活環境上の理由から、自宅や高齢者住宅で生活することが難しいということが前提です。待機者の増加で、基本的に要介護3以上の重度高齢者に限定されています。

このように、老人福祉施設と民間の高齢者住宅と違いは、「要福祉」の高齢者が対象であるということ、そしてもう一つは、「自立高齢者」「要支援・軽度要介護高齢者」「重度要介護高齢者」と、要介護状態によって、それぞれに対象施設が分かれているということです。

 

~「自立・軽度要介護」と「重度要介護」はサービス・商品が違う~

老人福祉施設は、児童養護施設、母子施設など他の福祉施設とは違い、生活環境や経済的環境などの「要福祉」の状態が改善して退所するという人はほとんどいません。また、高齢者は身体機能だけでなく、対応力・順応力が大きく低下するため、何度も転居することは好ましくありません。高齢期の転居は認知症の発症要因になるとも言われています。
そのため、本来であれば、自立高齢者から重度要介護高齢者まで対応できる「老人福祉施設」であることが望まれます。もちろん、養護老人ホームやケアハウスでも、介護が必要になれば、訪問介護や通所介護などの外部の介護サービスを利用することができますし、「重度要介護・認知症になれば退所」という規定があるわけでもありません。
しかし、実際には、養護老人ホームやケアハウスには、ほんど重度要介護、認知症高齢者は生活していません。ほぼすべて、系列の特養ホームに入所しています。

その理由は、簡単です。
なぜ特養ホームに移らなければならないかと言えば、どちらを選ぶ ・・ 介護付か? 住宅型か?②🔗で述べたように、要支援~軽度要介護と重度要介護では、必要な介護システムが違うからです。

要支援~軽度要介護高齢者の場合、移動や排せつなど基本的な日常生活は一人でできますので、「入浴時の介助」「通院の付き添い」など、できないことだけを介助してもらうという「定期介助・ポイント介助」が中心となります。訪問介護を使えば、ケアハウスや養護老人ホームでも生活することが可能です。

しかし、重度要介護は移動や移乗、排泄など、ほとんどすべての日常生活に介助が必要な状態です。「お腹の調子が悪いので何度も便がでる」「汗をかいたので着替えたい」など、臨時のケアも多くなります。特に、認知症高齢者や要介護4、5となると、スタッフに体調変化を伝えることも難しくなりますから、状態把握や見守り、巡回などを頻繁に行うなど、より積極的な介助が必要です。
重度要介護や認知症になると、「ポイント介助」だけでは対応できず、24時間365日の「包括的、継続的な介護」が必要となるため、養護老人ホームやケアハウスでは生活できないのです。

これは、高齢者住宅でも同じことが言えます。
早めの住み替えニーズをアピールしているのは、住宅型有料老人ホームやサ高住といった「区分支給限度額方式」をとる事業者が多いのですが、訪問介護などのポイント介助だけでは、重度要介護や認知症になった場合は、生活することができません。

 

~「早め目の住み替えニーズ」は商品として難しい~

違うのは介護システムだけではありません。
8人~10人乗りのエレベーターであっても、車いすの高齢者は2人、大型の福祉エレベーターでも4台しか移動できません。車いすの高齢者が増えれば、生活動線や介護動線、食堂の広さや出入り口の考え方も変わります。トイレもお風呂も、通常私たちが利用するものと、車いすで利用できるタイプのもの、更に介助に適したものとなれば、機能や広さも全く違ってきます。この建物設備は、必要な介護スタッフ数や入居者の事故発生率にも大きく影響してきます。
福祉施設でも高齢者住宅でも、「自立高齢者から重度要介護高齢者、認知症高齢者」まで、幅広い要介護状態、生活ニーズに対応することは、簡単なことではないのです。それは「小学生から大学生まで、同じ環境で勉強させる」というのと同じくらい、いや、それ以上に難しいのです。

つまり、高齢者住宅選びは、「早めの住み替え」ではなく、「要介護状態になってから、その生活に合わせた建物設備や介護サービスが整備された高齢者住宅を選ぶ」というのが基本なのです。

もちろん、「早めの住み替えニーズ」は絶対にダメだと言っているわけではありません。
そのニーズに応える自立度の高い高齢者を対象とした高齢者住宅もあります。
しかし、自立・要支援の時に住み替えた場合、老人福祉施設のように、重度要介護状態になったときに、もう一度住み替えるということが前提です。そのため、「どのような場合に住み続けられないのか」「その場合にどうすればいいか」「住み替えにどのような支援を行うのか」について、きちんと明確に説明してくれる事業者を選ぶことが必要です。

逆に言えば、「早めの住み替えニーズ・・」「自立から重度要介護まで対応・・」と安易言っているところは、あまり信用できない、高齢者住宅の特性をわかっていない素人事業者だと言えるでしょう。

 

 

 

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