PROFESSIONAL

こんな介護サービス事業者で働いてはいけない ~コンプライアンス違反~

すべての事業経営において、「コンプライアンス(法令順守)の徹底」は、企業が安定的に持続するために必要な第一項目。コンプライアンス違反・違法行為が蔓延している事業者で働く怖さ。あなたも違法行為の環境に慣れてしまい、加害者側に取り込まれていく

介護スタッフ向け 連 載 『市場価値の高い介護のプロになりたい人へ』


こんな介護サービス事業者で働いてはいけない・・・
その一つ目は、コンプライアンスの意識が乏しい事業者です。
介護業界だけでなく、すべての事業経営において、「コンプライアンス(法令順守)の徹底」は、企業が安定的に持続するために必要な第一項目に挙げられるものです。パワハラやセクハラ、違法残業などブラック企業と呼ばれる企業は、経営者にこの法令順守の意識が欠けています。

大手企業でも商品データの改竄、消費期限の改竄などで、ニュースになることがあり、中にはそれを数十年と長期にわたって隠蔽していた会社もあります。発覚した場合、企業は「管理体制が不十分だった。監査・検査体制をきちんと見直したい…」という他人事のようなプレスリリースを出しますが、これは誰が考えてもオカシイということはわかるでしょう。
それは現場のスタッフは、改竄や隠蔽をしても何の得もなければ、メリットもないからです。何故そんなことをしたのかと言えば、会社からプレッシャーを与えられ、在庫を抱え、やむなく隠蔽や改竄の行為に手を染めるしかなかったからです。
もちろん、社長みずからが、直接「隠蔽・改竄しろ」と命じたわけではなく、それを証明するような書類も残ってないでしょう。そうするように仕向け、わかっているのに、見て見ないふりをしているだけです。そのため、発覚すると行った「お前が勝手にやったことだ」と社員個人の不正行為として処罰されます。会社のためにやった(やらされた)のに、「違法行為で会社に損害を与えた」と懲戒解雇されたり、最悪の場合、高額の損害賠償請求をされる可能性もあります。
このような不正の押し付けは、利益史上主義、ガバナンスの効かないオーナー企業、業績の低迷している企業では、起こりやすいものです。実際にニュースになるのは、氷山の一角で、上場している大企業、名前を聞けばわかるような有名な会社だけですが、そこにはもっと根深いものがあるのです。

介護業界でも蔓延している「どこでもやっているから…」の違法行為

残念ながら、この違法行為は介護業界の中でも蔓延しています。
介護サービス事業は、一般的なサービスとは違い、公的な介護保険制度に基づくサービス・事業です。介護保険法や介護報酬の算定方法など、法律・制度の理解・順守が基本です。また、感染症や自然災害、介護事故などリスクの高い事業でもあり、特に介護保険施設や高齢者住宅の場合、建築基準法、消防法、感染症法、食品衛生法、労働関係法など関係する法律は多岐に渡ります。
しかし、介護サービス事業、高齢者住宅事業には、これらの法律、基準を全く理解しないまま、参入した素人事業者が多く、違法行為・契約違反が横行しているのです。

◇ 職員退職により加算基準を満たさなくなったが、届け出せず報酬を受け取っている。
◇ スタッフの退職により契約基準を満たさなくなったが入居者に説明していない
◇ 利用者・入居者が介護中で転倒・骨折したが、その事実を隠蔽している。
◇ 一部の介護スタッフが、認められていない医療行為を行っている。
◇ 忙しいので、ケアプランの通りにサービスを行っていない時がある
◇ 夜間何度もコールを押す入居者に対して、コールを外している。
◇ 転倒の可能性があるので、車椅子入居者に三角ベルトなど身体拘束を行っている
◇ 消防法で定められた防災訓練を行っていない。
◇ 労働安全衛生法で求められる職員に対する健康診断を行っていない。
◇ 事前に、契約書・重要事項説明書を渡していない。

コンプライアンス違反の背景にあるのは、「少しくらい、どこでもやっている…」「大切なことはわかっているが、忙しくてそこまで手が回らない…」という甘えの構造です。
しかし、介護報酬の不正請求はミスではなく犯罪行為ですし、契約違反も法律違反です。それでも指定基準を下回り、介護報酬が70%に減算になると経営が立ち行かなくなりますから、「一人くらいなら、一ヶ月くらいなら…」と間違った判断に傾くことになります。

このようなコンプライアンス違反・違法行為が蔓延している事業者で働く怖さ。
それは、本来「これはオカシイのではないか…」「介護報酬算定の違反じゃないか…」と最初は思っていたはずなのに、いつの間にか少しずつその環境に慣れてしまい、少しずつ加害者側に取り込まれてしまう、それが当たり前になってしまうということです。
特に、介護サービス事業には『介護=福祉』というイメージが強く、社会的にも法律や制度に則っていなくても『困っている人がいるからやっている』『入居者には感謝されている』とコンプライアンス違反を正当化する雰囲気があります。加えて、対象が認知症や判断力の低下した高齢者であること、サービス提供が限られたスタッフ・入居者という閉鎖的な環境の中で行われることから、これら不正が表面化しにくいと言う面もあります。

「移乗時に転倒して頭を打ったけど、認知症だからわからないだろう…」
「オムツ交換面倒だから、一回くらい、飛ばしてもわからないよね…」
「本当は訪問介護30分だけど、今日は忙しいから、早く切り上げよう…」
「あの人、どうでもいいことでコールするから、うるさいから外しておこう…」

面倒だから、忙しいから、うるさいから、みんなやってるから、私たちは頑張ってやっているから…と、どんどん不正行為は拡大していきます。実際、特養ホームや高齢者住宅で、大声で入所者・入居者に暴言を吐いたり、冷たい水をかけて笑ったりする、信じられないような介護虐待事件が報道されることがありますが、やっている本人たちだけでなく、事業者にも経営者にも、そして他のスタッフにも「ふざけてただけ…」とほとんど罪の意識はないのが現実です。

このような事業者で働いていると完全に感覚が麻痺し、「介護のプロ」どころか、介護サービス事業所でも、他の職種でも働くことができなくなります。そして、不正は発覚した時には、当然会社は守ってくれませんから、「あなたの個人的な不正」と断罪され、資格は剥奪、巨額の賠償を求められることになります。もし、現在介護業界で働いていて、「わたしの働いている事業者も当てはまる…」と思うのなら、「朱に交われば赤くなる」前に辞めるべきです。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: PROFESSIONAL-コラム.png


こんな介護サービス事業者で働いてはいけない

【Pro 35】   コンプライアンス違反 ~法令順守の意識が薄い事業者~ 🔗
【Pro 36】   介護の専門性の否定 ~ケアマネジメントへの経営介入~ 🔗
【Pro 37】   囲い込み型高齢者住宅 ~すべて現場の責任・犯罪者になる~ 🔗
【Pro 38】   自立から重度・認知症・医療対応まで ~誰でもOK、すぐに入居可~ 🔗
【Pro 39】   介護体制が脆弱 ~【3:1配置】の介護付有料老人ホーム~ 🔗
【Pro 40】   パート・派遣職員の多い事業者 ~重要事項説明書を読む~ 🔗
【Pro 41】   経営者・管理者の顔がみえない ~安易に参入してきた異業種~🔗
【Pro 42】   法人の経営体質 ~経営者のいない事業所・議員理事長・投資ファンド~ 🔗
【Pro 43】   建物でわかる事業者のノウハウ ~ 居室・食堂分離型は介護できない 🔗
【Pro 44】   求人広告から見える事業所の体質 ~『即戦力求む』はなぜダメか~ 🔗
【Pro 45】   ホームページから見える事業者の質 ~やる気・善意の搾取~🔗
【Pro 46】   採用面接からわかること ~重視するのは『過去』か『未来』か~🔗
【Pro 47】   必ず見学をお願いしよう ~あなたは介護のプロになれるのか~ 🔗



関連記事

  1. 資格を通じて、介護のプロとしての視野と世界を広げる
  2. 介護業界の不幸は「介護の未来」を語れる経営者が少ないこと
  3. 高齢者介護は、なぜロボット・IT・AIに代替できないのか
  4. こんな介護サービス事業者で働いてはいけない ~介護体制が脆弱~
  5. こんな介護サービス事業者で働いてはいけない ~囲い込み事業者~
  6. 「介護の仕事は最悪・ブラック」の原因はどこにあるのか
  7. 「介護の仕事はどこでやっても同じ・・・」は大間違い
  8. 介護のプロ 市場価値向上のための介護経営マネジメント

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


TOPIX

NEWS & MEDIA

WARNING

FAMILY

RISK-MANAGE

PLANNING

PAGE TOP