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重要事項説明書を読めば、すべてわかる

重要事項説明書は、中身・内容以前に「情報開示」に対する事業者の意識をチェック。「見学時にしかわたさない」「契約時に説明」と出し渋る事業者は基本的に信用できない。個別に読むのではなく、比較しながらその内容、優劣をしっかりと理解していく。

高齢者・家族向け 連載 『高齢者住宅選びは、素人事業者を選ばないこと』 034


事前準備に必要な資料・情報を集める🔗で述べたように、高齢者住宅選びの事前準備において、その中心となる資料は「重要事項説明書」です。
高齢者住宅のパンフレットは、イメージを重視して作成されていることから、セールスポイントを強調する美辞麗句やイメージ写真が中心です。
一方の、重要事項説明書は、その名の通りサービス内容・価格等の重要事項が記入されたものです。それぞれの高齢者住宅でバラバラに作られているのではなく、公式・様式が統一されているので、複数の高齢者住宅の事業内容・サービス内容を横断的に比較・検討することができます。
重要事項説明書は事前検討資料の核であり、その他の資料は雰囲気やイメージを補完する資料だといって良いでしょう。

契約書類、重要事項説明書と言えば、「難しそう・・」と考える人も多いでしょうが、内容はそれほど難しいものではありません。よくある質問「どっちを選ぶ?」🔗リスク管理に表れる事業者の質🔗で、サービスの価格のチェックポイントについて述べていますが、ほとんどそのすべては、この重要事項説明書に書いてあります。
つまり、重要事項説明を読み解けば、ほぼわかるのです。
まずは、高齢者住宅選びにおいて重要事項説明書がどれほど重要なのか、またその中に何がかかれているのか、その全体像を整理しましょう。

情報開示・コンプライアンスに対する意識

重要事項説明書から読み取るべきこと。
まず、内容以上に重要なことは「情報開示」に対する意識です。
重要事項説明書は、自治体で取りまとめてインターネットからダウンロードできるところもありますが、できれば、その事業所へ電話をして「ホームへの入居を検討しているのですが・・」と告げて、重要事項説明書やパンフレットなどの資料をおくってもらいましょう。
その理由は3つあります。

一つは、電話対応の雰囲気から、事業所のサービスレベル・管理レベルを探ることです。
電話というのは、本人の顔が見えない分だけ、その事業者の雰囲気というものが伝わります。落ち着いて、丁寧な対応ができるところもあれば、ばたばたとして、どうすればよいかわからずに、たらいまわしにされ、何度も同じ話をしなければならないようなところもあります。電話対応や資料送付の対応や手続きが、きちっとできているところは、それだけきちんとサービス管理が行き届いているということです。生活相談、事務などのバックヤードがバタバタしているところは、現場の雰囲気もバタバタしています。中には、「おいおい・・」と言いたくなるような、感じの悪い電話対応の人もいますが、それは本人の責任ではなく、その事業所では、そういう電話対応でも許されるというサービス管理の問題です。

二つ目は、最新の情報、重要事項説明書を得るということです。
重要事項説明書は、サービス内容だけでなく、スタッフ数や要介護高齢者数なども記載されていますから、「いつの時点のデータ・情報か」がとても重要です。厳密に言えば、契約付属書類ですから、契約時のデータでなければなりませんが、随時見直すということは現実的に難しいため、半年に一度と、期間を区切って見直ししているところが多いようです。
ただ、行政がとりまとめたり、インターネットにアップするには、一定のタイムラグがでますから、最新のものを手にいれるためには、「直接依頼して送ってもらう」というのが必要です。

もう一つは、情報開示に対する意識です。
高齢者住宅選びは、ほとんどの家族、高齢者にとって初めての経験ですから、何よりも積極的な情報開示が求められています。
しかし、「重要事項説明書を事前に送ってほしい」と電話すると、「見学時にお渡ししている」と応える事業者があります。その場合は、「事前に複数の事業者を比較したいので」「見学時に質問することをまとめておきたいので」と、もう一度、理由を告げて事前に送ってもらえるように依頼しましょう。

確かに、重要事項説明書をもとに説明を受けると理解しやすいのは事実ですが、事前に読み込んでおけば、様々な疑問点がでてきますから、個別の質問ができて、より理解が早まることは言うまでもありません。それでも、「見学時、訪問時にしか渡せない」という事業者は、「事前に内容を理解、精査されては困る」「他の事業者と比較されては困る」、そして「入居率が低いので、来てもらって必死のセールストークで丸め込みたい」ということです。

中には、「契約関連書類なので、ある程度契約が固まってからでないと渡せない」というとんでもないところもあります。これは、明確な法律違反、コンプライアンス違反ですし、入居後も「ごまかせばよい」「わからなければよい」と不都合なことはすべて隠蔽する高齢者住宅だということです。

重要事項説明書には何が書いてあるのか

重要事項説明のチェックポイントをお話する前に、重要事項説明書にはどんなことが書いてあるのかを、ざっと整理しておきましょう。

【類型・表示事項】
冒頭には、介護保険制度上の類型(介護付、住宅型)、入居時の要件、居住区分(居室定員)、介護に関わる職員体制など、全体の概要が書いてあります。
介護目的で高齢者住宅に入る場合は、介護付有料老人ホームで、介護に関わる職員体制は、【2:1配置】以上のものを選びます。

【事業主体・事業所概要】
高齢者住宅選びの場合、事業主体に注目する人は少ないのですが、「倒産リスク」がありますから、どのような事業者が運営しているのかを知ることは大切です。所在地や電話番号などの他、同じ都道府県が運営している訪問介護などの他の関連サービス事業者も一覧で表示しています。
事業所概要には、事業所の所在地、連絡先、管理者氏名、有料老人ホームの届け出年月日、特定施設入居者生活介護の指定年月日及び有効期間などの他、電車やバスで行く場合の、事業所へのアクセス方法なども書かれています。
合わせて重要になるのが、建物設備の状況です。建物設備の権利関係の他、フロアごとの居室数や共用トイレ、浴室の数、また火災通報装置、スプリンクラーなどの消防設備の有無について記入されています。

【従業者に関する事項】
従業者(介護看護スタッフなど)に関する事項は、その配置数だけでなく、常勤・非常勤、専任・兼務、資格者数、勤務年数、管理者の資格など、非常に詳しく記入されています。述べたように、「高齢者住宅の質=介護スタッフの質」であり、「要介護高齢者の生活環境=介護スタッフの労働環境」といっても過言ではありません。この従業者に関する事項は、最重要といって良いチェックポイントです。

【サービスの内容】
提供するサービス、連携する医療機関とのその協力内容、介護保険の加算、入居条件、事業者からの契約解除(途中退居要件)、苦情対応窓口など、サービス全般について書かれています。

【入居者の状況】
現在の入居者数も重要な情報の一つです。要介護度別、年齢別、性別に現在の入居者数が整理されており、入居率も書かれています。入居率は経営状態を判断する重要なポイントの一つです。また、入居期間別の人数や、一年間に退居した人数と理由(死亡・自己都合など)についても、記入されています。

【利用料金】
入居一時金の金額や月額費用(家賃、管理費、食費、光熱水費など)の中身、内容の他、介護保険の自己負担について書かれています。従来は、「入居一時金方式」または「月額家賃方式」の二つにわかれていのですが、最近は入居者がどちらかを選択できたり、並列方式(一時金半分、家賃半分など)も増えています。事業者によって、価格の内容はそれぞれに違いますから、注意が必要です。

【事前情報開示・その他】
最後は、事前情報開示や、その他付属書類として付けられている介護サービス等の一覧表、有料老人ホーム設置運営指導指針との適合です。
高齢者住宅の優劣を示すポイントの一つは「情報開示」です。そのサービスや契約内容に自信があれば、開示できるはです。また、「有料老人ホーム設置運営指導指針」というのは、各都道府県が定めている指導監査のポイントに合致しているか否かを示すものです。

この重要事項説明書は契約書と違い、書かれているのは、高齢者住宅の経営状態、運営状態、サービス内容を示す客観的な数字です。そのためチェックポイントを知っていれば、複数の事業者からそれを比較することで、たくさんのことが見えてくるのです。

重要事項説明書の比較検討で、見学先を絞り込む

繰り返し述べていますが、この重要事項説明書の活用方法は、複数の事業者の「比較」です。
一つの事業者の重要事項説明書を読んでいても、わからないことがたくさんありますが、比較することでたくさんのことが見えてきます。
重要事項説明書を、効率的、効果的に読み込むための準備のポイント、流れを挙げておきましょう。

 ① 対象となる高齢者住宅の重要事項説明書を手に入れる
 ② パソコン上では、横断的に比較できないためプリントアウト
 ③ 疑問点を記入するための鉛筆と、複数の色の付箋を準備。
 ④ 個別に読まずに、同じポイントを比較しながら読む。
 ⑤ 事業者の特徴、いいところ、ダメなところ、気になった点を記入
 ⑥ ここは重要だと思ったところは、付箋をつける
 ⑦ 個別の疑問は重要事項説明書に、横断的な疑問はノートに記入
 ⑧ 記入や付箋のついた個別の重要事項説明書を読み込む
 ⑨ 3~5つ程度に、見学する高齢者住宅を絞り込む

それでは、プロはこの重要事項説明書のどのような点を見ているのか、実際に、それぞれの項目から何を読み取るのか、そのチェックポイントを整理していきましょう。


高齢者住宅選びの根幹 重要事項説明書を読み解く

  ⇒ 重要事項説明書を読めば、高齢者住宅のすべてわかる 🔗
  ⇒ 重要事項説明書 ① ~老人ホームの全体像を読み解く~ 🔗
  ⇒ 重要事項説明書 ② ~事業主体・事業所概要を読み解く~ 🔗
  ⇒ 重要事項説明書 ③ ~建物設備の権利関係を読み解く~ 🔗
  ⇒ 重要事項説明書 ④ ~スタッフ数・勤務体制を読み解く~ 🔗
  ⇒ 重要事項説明書 ⑤ ~介護サービスの専門性を読み解く~ 🔗
  ⇒ 重要事項説明書 ⑥ ~介護スタッフの働きやすさを読み解く~  🔗
  ⇒ 重要事項説明書 ⑦ ~提供されるサービス概要を読み解く~  🔗
  ⇒ 重要事項説明書 ⑧ ~協力病院など医療体制を読み解く~  🔗

高齢者住宅選びの基本は「素人事業者を選ばない」こと

  ☞ ポイントとコツを知れば高齢者住宅選びは難しくない (6コラム)
  ☞ 「どっちを選ぶ?」 高齢者住宅選びの基礎知識 (10コラム)
  ☞ 「ほんとに安心・快適?」リスク管理に表れる事業者の質 (11コラム)
  ☞ 「自立対象」と「要介護対象」はまったく違う商品 (6コラム)
  ☞ 高齢者住宅選びの根幹 重要事項説明書を読み解く (9コラム)
  ☞ ここがポイント 高齢者住宅素人事業者の特徴 (10コラム)
  ☞ 「こんなはずでは…」 失敗家族に共通するパターン (更新中)



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