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重要事項説明書 ② ~事業主体を読み解く~

高齢者住宅、重要事項説明書の事業主体・事業所概要から見えること。
高齢者住宅は新規参入事業者が多いことから、「名前をよく聞く大手事業者だから安心」ということはない。事業所概要からは届け出の日付、開設された日付をきちんと確認することが必要

高齢者・家族向け 連載 『高齢者住宅選びは、素人事業者を選ばないこと』 036


重要事項説明書を読み解く ① ~類型・表示事項~ で事業の全体像が見えてくれば、ここから入居を検討している高齢者住宅の事業主体や事業所の概要、中身のチェックです。
一部、専門的な用語もでてきますが、それほど難しいものではありません。
パンフレットやホームページなども活用しながら、しっかり確認していきましょう。

事業主体をチェックする

事業主体には、所在地や電話番号の他、連絡先、代表者氏名、法人設立年月日などが記入されています。
一部例を下表に乗せましたが、これ以外にも、この事業主体が、同じ都道府県内で運営している高齢者住宅の他、訪問介護、通所介護などの他の介護関連サービス事業者も一覧で表示しています。

「大手だからサービス・経営が安定しているはずだ…」「たくさん運営している事業者の方が安心だ…」と考えがちですが、そうではありません。すべてがそうだとは言いませんが、大手といっても、スタッフ教育が不十分なまま規模だけが急拡大してきたところが多く、基本的なサービス管理体制さえ整っていないところも少なくありません。居室数がトップ10の中に入るような超大手事業者でも、「倒産間近ではないか…」と噂されるようなところもあります。

単独事業者、数件の有料老人ホームを運営している事業者でも、素晴らしいところはたくさんあります。もちろん、大手よりも単独事業者の方が良いというものではなく、ノウハウがゼロというところもあります。高齢者住宅選びに事業規模は重要ではないのということです。

ただ、規模との関係で注意が必要なのは、入居率と経営状態との関係です。
入居率は後で出てきますが、基本的に有料老人ホームやサ高住、介護付、住宅型など事業種別を問わず、高齢者住宅の損益分岐を示す入居率は、80%程度に設定されています。高齢者住宅は建物設備や土地建物、介護スタッフ人件費などの固定費比率が高い事業ですから、50%しか入居者が集まらないと大赤字になってしまいます。

大手事業者の場合、その事業所が赤字でも、他の有料老人ホームの入居者が多ければ、全体として経営は安定しているということになりますが、小規模の場合、その高齢者住宅が赤字であれば、企業全体の経営が上手くいっていないということです。ですから、「単独・数件しか運営していない」高齢者住宅で、入居率が低いところは、その経営状態に、十分な注意が必要です。

あと、もしインターネットを利用されているのであれば、「どのような会社が運営しているのか」はチェックしておくのが良いでしょう。
その法人が有料老人ホームや介護サービスのみを運営している場合でも、親会社や関連会社を見れば、どのような業態で、どのような目的で介護サービス事業者に参入しているのか、高齢者住宅以外の業態は安定しているのか、など様々なことが見えてきます。

例えば、最近では医療法人が株式会社を設立して高齢者住宅事業に参入するところが増えています。
別会社といっても経営者は同じですから、その病院の評判やサービスの質がわかれば、その高齢者住宅の質もそれに準じるということです。新しい高齢者住宅の場合、その事業者の質や評判が表れるまで時間がかかりますが、その病院がその地域で医療看護の質、スタッフの質で高い評価を受けているのであれば、高齢者住宅も同じように高いサービスが提供されるはずです。

また、その地域で訪問介護や通所介護、グループホームなどを行っている事業者が、高齢者住宅事業に参入するというケースもあります。これも、その通所介護や訪問介護の評判やサービスの質を見れば、その高齢者住宅のサービスの質や介護のノウハウなどを推測、イメージすることができます。

事業所概要をチェックする

次の事業所概要には、事業所の所在地、連絡先、管理者氏名、有料老人ホームの届け出年月日、特定施設入居者生活介護の指定年月日及び有効期間などの他、電車やバスで行く場合の、事業所へのアクセス方法などが書かれています。

ここで、注目すべきは設立や指定の日付です。
事業開始年月日は、この事業所が有料老人ホーム事業を始めた日です。
ここからその事業が開始されてから、どの程度の年数が経過しているのかがわかります。
届け出年月日は、「自治体に有料老人ホームを始めます」と届け出た日です。有料老人ホームは届け出制度ですから、事業を開始する前に自治体に届け出ることが義務付けられています。そのため、届け出年月日は事業開始年月日よりも前(数か月~半年程度)というのが基本です。届け出年月日が、事業開始年月日よりも後という場合、適法だったか否かに関わらず、その間は、届け出をしないまま運営されていたということになります。
また、届け出上の開設年月日は、基本的に事業開始年月日と同じです。
これも違うのであれば、「前事業者が倒産して新しい事業者引き継いだ」「無届施設だった」など、何か理由があるはずです。チェックをしておいて、きちんと確認しましょう。

特定施設入居者生活介護は、介護保険法上の指定を受けた日付が記入されています。
有料老人ホームの制度は古いものですが、介護保険制度がスタートしたのは平成12年です。ですから、事業開始年月日に関わらず、初回の指定年月日は平成12年4月1日以降となります。
介護予防特定施設入居者生活介護というのは、要支援高齢者を対象としたと特定施設入居者生活介護のことで、二つの老人ホームがあるわけではありません。
重要事項説明書を読み解く ① ~類型・表示事項~🔗の「入居時の要件」で述べた通り、要支援高齢者も対象とした混合型の場合、この指定が必要となります。この介護予防の制度がスタートしたのは、平成18年4月1日ですから、ここは、それ以降の日付となります。事例の【こもれびの家 南銀座】は介護専用型ですから、介護予防特定施設の指定は受けていません。

また、同じ介護付有料老人ホームと言っても、介護保険制度発足以降に作られたものと、それ以前に作られたものとでは商品性・サービス内容が違います。
介護保険制度以前に作られた有料老人ホームは、介護付有料老人ホームと言っても、最初は自立~軽度要介護高齢者を対象にして作られたもので、介護保険制度以降に「特定施設入居者生活介護」の指定を受けたものが中心です。これに対して、介護保険制度発足(平成12年4月1日)以降に整備された、介護専用型の介護付有料老人ホームは、始めから中度~重度要介護高齢者のみを対象として建物設備が設計、介護システムが構築されています。
この場合「事業開始年月日」と「特定施設入居者生活介護」の指定日の日付は同じになります。
これも、「要介護高齢者のみを対象として整備された介護付有料老人ホームか」をチェックするには一定の指標となるものです。

この開設年月日の日付は、重要事項説明書を読み解く ③ ~建物設備・権利関係~で後述する建物設備の竣工日にも関わってきます。日付からだけでも、たくさんのことが見えてくるでしょう。


高齢者住宅選びの根幹 重要事項説明書を読み解く

  ⇒ 重要事項説明書を読めば、高齢者住宅のすべてわかる 🔗
  ⇒ 重要事項説明書 ① ~老人ホームの全体像を読み解く~ 🔗
  ⇒ 重要事項説明書 ② ~事業主体・事業所概要を読み解く~ 🔗
  ⇒ 重要事項説明書 ③ ~建物設備の権利関係を読み解く~ 🔗
  ⇒ 重要事項説明書 ④ ~スタッフ数・勤務体制を読み解く~ 🔗
  ⇒ 重要事項説明書 ⑤ ~介護サービスの専門性を読み解く~ 🔗
  ⇒ 重要事項説明書 ⑥ ~介護スタッフの働きやすさを読み解く~  🔗
  ⇒ 重要事項説明書 ⑦ ~提供されるサービス概要を読み解く~  🔗
  ⇒ 重要事項説明書 ⑧ ~協力病院など医療体制を読み解く~  🔗

高齢者住宅選びの基本は「素人事業者を選ばない」こと

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