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重要事項説明書 ⑧ ~医療体制を読み解く

高齢者住宅 重要事項説明書 協力医療機関を読み解く。協力医療機関は、かかりつけ医となる「診療所」「歯科診療所」「総合病院」の三種類が必要。「協力病院で安心」と称して、「押し売り医療」「おまかせ医療」を行う高齢者住宅、医療機関には注意が必要。

高齢者・家族向け 連載 『高齢者住宅選びは、素人事業者を選ばないこと』 042


重要事項説明書を読み解く ⑦ ~介護サービス概要~で述べたように、原則として介護スタッフは医療行為ができません。
その一方で、高齢者は糖尿病、高血圧症、高脂血症などの生活習慣病が多く、医療は「ケガや病気の時に一時的に必要なサービス」ではなく、介護同様に日常生活を、安全、快適に営むために不可欠なサービスです。そのため、高齢者住宅は、様々な医療的ケアに対応できる協力医療機関を設定しています。
この医療連携は、高齢者住宅選びにとって、とても重要な要素です。


この協力医療機関は、すべての有料老人ホームで指定されており、上記のように、重要事項説明書にはその名称、所在地、診療科目の他、協力の内容が示されています。
ただ協力医療機関は、あればよいというものではありませんし、たくさんあればよいというものでもありません。必要な連携・サポートシステムを構築しているか、どのような協力体制となっているかが重要です。この協力医療機関は、高齢者住宅選びだけでなく、事業者の資質、ノウハウを理解する上でも重要な要素です。
そのポイントと内容を見ていきましょう。

必要な協力医療機関とその体制

高齢者住宅の協力医療機関は、大きく分けると三つの種類があります。

  協力診療所 ・・・・ 通院、訪問診療など「かかりつけ医」としての役割の診療所
  協力歯科  ・・・・ 虫歯や入れ歯のメンテナンスを行う歯科診療所
  協力病院  ・・・・ 入院や専門的な医療が必要な場合の総合病院

協力診療所は、通院して定期的に検査や投薬をしてもらう、日々の「かかりつけ医」としての診療所、クリニックです。
現在の診療所は、「内科」「外科」「精神科」など専門科目に分かれていますので、それぞれに複数の診療所と連携しているところが一般的です。
ただし、高齢者は一つの疾病ではなく複数の疾患を有していることや、判断力や認知症の問題もあるため、最近は個別の臓器の疾病に対応するのではなく、高齢者のQOLや治療のリスクも総合的に検討する「総合医」という制度もできています。そのため協力診療所に「総合医」を指定しているところもあります。
上記の例では、内科系は〇〇クリニック、外科系は△△診療所が指定されています。認知症高齢者を積極的に受け入れているのであれば、精神科の診療所との連携も必要になるでしょう。

二つめは協力歯科です。
私たちは、歯科は「虫歯になった時・・」というイメージですが、高齢者は骨粗鬆省や歯槽膿漏により歯がもろくなることに加え、咀嚼機能や嚥下機能も大きく低下しますから、口腔ケアや入れ歯の調整は、誤嚥や肺炎など他の疾病にも関わってくる大きな課題です。そのため通常の診療所以外に、歯科診療所との連携が必要です。最近は認知症や寝たきりになると、治療台に上がることができないため、訪問歯科に力を入れている歯科診療所は増えています。
上記の例では、最後の□□歯科というのが、これに当たります。

もう一つは、協力病院です。
高齢者住宅は病院ではありません。骨折や心筋梗塞、脳血管障害などで集中的な加療が必要になれば、入院が必要です。また、診療所には入院設備はありませんし、すべての疾病をカバーすることはできませんから、協力診療所にない専門的な治療や眼科などの治療を行うためには総合病院との連携が必要となります。
上記の例では、三番目の◇◇病院というのが、これにあたります。

どのような協力体制をとっているか

高齢者住宅で、入居者のための医療的ケアのサポートを行うためには、必ず上記の3つのタイプの協力医療機関の設定が必要になります。
診療所だけ・・・、病院だけ・・・というのは望ましくありません。
ただし、これはあればよいというものではなく、重要なのは、どのような協力、連携体制をとっているかです。

① 通院・入院などのサポート
まず一つは、通院・入院などのサポート・連携です。
要介護高齢者は、「通院・入院」は一人で行けませんから、必ず介助が必要です。そのため高齢者住宅では、「協力病院への通院・入院介助は介護保険サービス内容に含む」「協力病院以外の医療機関への通院・入院は別途費用」としているのが一般的です。また、事前予約のサポートや、臨時・緊急の通院の場合でも長時間待たないで診療してもらえるように事前連絡、優遇してもらえるような連携をとっているところもあります。

② ホーム看護師との連携・ケアマネジメントへの支援
高齢者にとって医療は、「病気を直せばよい」という単独のサービスではなく、生活に密着したサービスです。
そのため、高齢者住宅内の看護師との情報共有や連携が何よりも重要です。通院や薬剤の情報がホーム内の看護師、介護スタッフにも共有しなければなりません。要介護状態が重くなると自分で意思を伝えることが難しくなりますし、家族が付き添えるわけではありませんから、「薬剤が変わって、日中うとうとすることが増えた」「皮膚病の軟膏が効いていない」といった情報を、介護スタッフから看護師に、協力医療機関の医師に伝え、変更を依頼しなければなりません。

ケアマネジメントへの支援も重要です。
要介護度認定においては医師の意見書が必要になりますし、医療的ケアが必要な高齢者に対しては、ケアプランの策定においても、医療サービスの視点からの支援が必要になります。重要事項説明書を読み解く ⑦ ~介護サービス~ でも述べたように、胃ろう、在宅酸素などの医療的ケアが必要な高齢者の受け入れを行う場合、そのリスクや急変した時にどうするのかについてもアドバイスを受け、ケアプランの中で検討し、状態によっては協力医からの説明も必要です。

また、最近は、「看取り」を標榜する事業者は増えていますが、実際にはそう簡単な話ではありません。
「病院に入院させないこと」「安易に救急車を呼ばない」などといい加減なことを言っている人もいますが、「苦しんでいるのに何もしない」「救急車呼ばない」となれば、刑事罰に問われる犯罪行為にもなりかねません。いつ頃、どのような終末期になるのかは誰にもわかりませんから、看取りケアを行うためには、「どのような終末期が予想されるのか」「どのような場合に医師に連絡するのか」「夜間急変した場合はどうするのか」「どのような場合に救急搬送するのか」など、細かに定めておかなければなりません。
医師がいなければ死亡確認もできませんから、時間を問わずすぐに飛んできてくれる医師との連携が必要になります。

③ 協力医療機関同士の病診連携
最近の医療業界で重要だとされているのが、病診連携です。
病院経営は、入院期間が長くなると診療報酬が下がりますから、早期退院を求めます。また、高齢者や家族も「規制の多い入院よりも、できるだけ早くホームに返してほしい」と考える人は少なくありません。退院の場合には、どこまでホームで医療的ケアができるのか、病院の医師とかかりつけ医との連携が必要ですし、ホームの看護師の業務負担の検討、家族への説明も必要になります。
これができないと、「退院したけれど毎日通院」「ホーム看護師の業務負担激増」となり、また状態が悪化してすぐに入院ということになってしまいます。

協力医療機関の注意点 (押し売り医療・おまかせ医療)

述べたように、高齢者にとって医療は日常生活に不可欠なサービスです。
それは、言いかえれば、優秀・優良な医療機関との連携は、高齢者住宅の優劣を決める商品設計、サービス設計の一つだということです。
しかし、実際には、協力病院との連携ができていないだけでなく、入居者をクイモノにするような負の協力というものも存在しています。

その一つは、「押し売り医療」です。
これは医療機関と高齢者住宅が一体となって、入居者や家族が望まない医療を無理やり押し付けるというものです。
例えば、自宅にいるときは、「二週に一度、糖尿病の診察と投薬を受ける」だけだったのに、高齢者住宅に入ると、ほぼ入居者全員が「内科」だけでなく、歯科や精神科、整形外科など協力医療機関の訪問診療が行われるという事業者があります。サ高住や住宅型有料老人ホームでは、系列の訪問介護や通所介護を無理やり利用させられる「囲い込み介護」が問題になっていますが、それの医療版です。

もう一つは、「おまかせ医療」です。
これは、協力医療機関があり、送迎などのサポートは行うものの、それ以外の実務的な協力が全く行われてないケースです。
看護師は医師のいいなりで「薬剤の変更」「入退院の情報共有」などが全く行われず、病状が分からないまま突然入院になったり、退院になったりします。高齢者住宅は自宅で生活する高齢者とは違い看護師もいるため、「病院のベッドが空いているから入院させよう」「長期入院になるのは嫌だから退院させよう」と病院都合で入退院させられることになります。

このような協力病院は、不要というよりも、入居者にとっては害悪でしかありません。
複数の診療所から、それぞれの都合で様々な薬が出され、その飲み合わせやその薬が効いているのか否かも誰もチェックしません。中には「肝機能が少し悪いから」と急に入院となり、それまで食事も排せつもできていた人が、二週間の入院で立つことも、自分で食事することもできず、認知症になって退院させられるということもあります。
残念ながら、「協力病院で安心」と言いながら、このような入居者をクイモノにするような医療機関、高齢者住宅もたくさんあるのです。

「医療法人の関連会社が老人ホームをやっている」「診療所を併設している」というところも増えています。
「病院や診療所があるので、医療的ケアも安心」というイメージでセールスしていますが、月額費用は安くても、実態は「押し売り医療で儲けている」というところは少なくありません。そのような事業者は、「必要な医療、介護を適切に提供する」「入居者の立場でサービスを提供する」という根本が欠けていますから、医療や介護の質も最悪です。

「適切な連携ができているか」「押し売り・おまかせ医療か」は、重要事項説明書だけで、「ここをチェックすればわかる・・」と判断できるわけではありません。ただし、上記の3つのタイプの協力医療機関が指定され、かつ「協力の内容」がきちんと整理、記入されていることが前提です。また、インターネットでその病院や診療所の評判を調べてみるのも良いでしょう。きちんとした高齢者住宅では、地域でも評判の診療所や病院と連携していますし、そうでない場合は、高齢者住宅の質もその程度だということです。

これは、必ず、見学で質問すべき事項です。
ポイントは、高齢者住宅事業者が主導して、協力医療機関との連携を行っているか否かです。
質の高い、ノウハウのある高齢者住宅は、この「協力医療機関」の重要性を理解していますから、「協力内容の覚書」などを書類として作成して、どのような協力体制をとるのかを明確にしています。その内容についても、丁寧に説明してくれるはずです。
逆に、「押し売り医療・おまかせ医療」の高齢者住宅は、「協力医療機関があるから安心ですよ・・・」「いい先生なのでおまかせしておけば大丈夫」としか言いません。

実質的に、高齢者住宅に入居すれば、医療は「協力医療機関」に任せるしかありません。
この「協力医療機関」の選定は、入居者の生命だけでなく、その日常生活にも大きく関わってくる大問題なのです。


高齢者住宅選びの根幹 重要事項説明書を読み解く

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  ⇒ 重要事項説明書 ③ ~建物設備の権利関係を読み解く~ 🔗
  ⇒ 重要事項説明書 ④ ~スタッフ数・勤務体制を読み解く~ 🔗
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  ⇒ 重要事項説明書 ⑦ ~提供されるサービス概要を読み解く~  🔗
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高齢者住宅選びの基本は「素人事業者を選ばない」こと

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