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どちらを選ぶ ・・ 有料老人ホームか? サ高住か?


高齢者住宅選びにおいて、「有料老人ホームか、サ高住か」の議論には意味がない。しかし、現在の制度の違い、そこから派生した商品上の特性の違いについては、十分に理解しておく必要がある。有料老人ホームとサ高住は何が違うのか、3つのポイントを整理する。

高齢者・家族向け 連載 『高齢者住宅選びは、素人事業者を選ばないこと』 008


最初に答えを言えば、高齢者住宅選びにおいて「有料老人ホームか」「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)か」という議論にはほとんど意味がありません。
どちらを選ぶ・・特養ホームか? 高齢者住宅か?🔗で述べたように、特養ホームなどの福祉施設は、北海道から沖縄まで、どこでもサービス内容や価格はほぼ同じです(質は違います・・)。 これに対して、介護付有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、それぞれにサービス内容も価格帯も、それぞれ商品自体が全く違うものだからです(もちろん質も違います)。
高齢者住宅は、「制度を選ぶのではなく、その商品内容・サービスの質を選ぶ」というのが基本です。

そもそも「有料老人ホーム」と「サービス付き高齢者向け住宅」というのは、「厚労省に届け出るか」「国交省に登録するのか」という単なる所轄官庁の違いでしかありません。ですから、「有料老人ホームに届け出し、かつサ高住にも登録している」という高齢者住宅も、たくさんあります。逆に、同じ商品内容でも、届け出先・登録先によって「有料老人ホーム」と「サ高住」に分かれることになります。
「なぜ二つに分かれているの?」と聞かれれば、「縦割り行政・補助金行政の歪み」「入居者にはデメリットだけで、メリットは一つもない」としか答えようがありません。

ただ、現行制度においては、いくつかの特徴があります。
それは、商品性の違い・サービス内容の違いにもつながっています。
その選択において注意すべきこと、知っておくべきことを整理します。


有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅は何が違うのか

有料老人ホームとサ高住の、制度上の最低基準の違いを一覧にしたのが次の表です。
大きく分けると、その違いは二つです。


一つは、建物設備基準です。
表にあるように、有料老人ホームは共用部基準に重点が置かれており、サ高住は居室内基準に重点が置かれています。ただ、始めから「サービス付き高齢者向け住宅」として建築されたものは、高齢者が生活しやすいように「食堂」「浴室」「防災設備」などの共用部も有料老人ホームと同じレベルのものが整備されています。一方の有料老人ホームの居室も、ほとんどは18㎡以上の居室で、それぞれの居室内に洗面、トイレなどが設置してあります。

しかし、「それぞれの基準に合致しているからOK」というものではありません。それは、どちらの基準も、「要介護高齢者が安全・安心して暮らせる住まいの基準」としては十分なものではないからです。
ですから、最低基準を満たしているというだけでは、要介護状態になれば生活できません。 その選択にあたっては、「有料老人ホームか、サ高住か」ではなく、車いすなど要介護状態になっても生活しやすい建物設備なのか、その中身・仕様をきちんと確認することが必要になります。

もう一つ、重要になるのが行政による指導監査体制です。
高齢者や家族からみれば、有料老人ホームもサ高住も同じような制度に見えます。
しかし、事業者から見れば全く違います。有料老人ホームの制度の目的は「入居者保護」です。そのため、その開設にあたっては事前の届け出が必要で、経営計画、収支計画などたくさんの資料を作って、自治体担当者から開設前にチェックや指導を受ける必要があります。

一方のサ高住は、「高齢者がアパートやマンションを探しやすくするための登録制度」からスタートしているため、一枚の登録用紙に記入すれば、誰でも簡単に開設することができます。
制度上の法律があるだけで、事前のチェック体制や開設後の監査体制も整っていません。しかし、なぜかこのサ高住には、建設のための補助金や税制優遇策があります。そのため、「高齢者住宅は儲かる」「土地の有効利用したい」と、高齢者住宅ビジネスや介護サービス事業を全く理解しないまま、参入してきた事業者が多いのです。(参照 サ高住が本当に危ない理由)

もちろん、「サ高住はダメ・素人事業者ばかり」と言う訳ではありません。
有料老人ホームでも、大手事業者でも素人事業者はたくさんいます。ただ、制度上、サ高住には「開設がより簡単だ」「補助金が出る」と安易に参入してきた人がより多い、またトラブルや事故が起こって相談しても、指導や監査体制はまったく整っていないということを理解しておかなければなりません。
その選択においては、より厳しい目でチェックする必要があるのです。


一般的な有料老人ホームとサ高住の商品性の違い

もう一つは、商品性の違いです。
三つのポイントを挙げます。


① 介護システム
有料老人ホームの介護システムは、介護付と住宅型に分かれています。
介護付有料老人ホームは、特定施設入居者生活介護の指定を受け、その有料老人ホームが介護サービスの提供事業者となって、介護サービスを提供するものです。特別養護老人ホームの介護システムとほぼ同じ形態だと考えれば良いでしょう。
これに対して、住宅型有料老人ホームは、有料老人ホームが介護サービスを提供するのではなく、入居者それぞれが外部の訪問介護や通所介護などの事業者と契約して、介護看護サービスを受けるというものです。自宅で介護を受けるのと同じタイプです。
サ高住も、特定施設入居者生活介護の指定を受けて、介護付サ高住になることはできますが、そのほとんどは「住宅型」、つまり外部の訪問介護や通所介護からサービスを受ける方式です。住宅型やサ高住でも、「介護が必要になっても安心」とセールスしていますが、実際には区分支給限度額方式では、認知症や重度要介護になると生活できません。

価 格 設 定
サ高住は、一般の賃貸マンションと同じように、家賃の支払いは「月払い」というのが基本です。
これに対して、有料老人ホームは、入居一時金をとっているところが多いのが特徴です。 サ高住でも、「敷金や保証金などの一時金は必要だよね…」と思う人もいるかもしれませんが、有料老人ホームの入居一時金は、一般の敷金や保証金とは違う、特殊な価格設定方法です。
その違いは高齢者住宅を理解する上でとても重要です。

③ 契約形態
もう一つの違いは、それぞれのサービスの契約主体です。
高齢者住宅と、一般の賃貸マンションや賃貸アパートの最大の違いは、介護が必要になっても生活できるように「食事」「介護看護」などの様々な生活支援サービスが、提供されることにあります。
ただ、高齢者住宅によって、サービスの提供主体はそれぞれに違います。

述べたように介護付有料老人ホームの場合、介護サービスを提供するのはその有料老人ホームですが、住宅型有料老人ホームやサ高住は、外部の訪問介護・訪問看護などの事業者からサービスを受けます。
食事サービスは、有料老人ホームは、介護付、住宅型に関わらず、その有料老人ホームから提供されるのが一般的ですが、サ高住の場合は、外部のレストランや給食業者と別契約となっているところが多いようです。
生活相談サービスも、有料老人ホームの場合は、ほぼ一体的に提供されますが、サ高住の場合は、別途、外部事業者との個別契約というところもあります。


契約主体が違えば、そのサービス提供責任が違いますし、月額費用に含まれるサービス内容も変わります。 上記の例で言えば、介護付有料老人ホームで月額費用には、介護保険の一割負担や食費も含まれていますが、住宅型の場合、含まれるのは食費だけですし、サ高住の中には、介護保険の一割負担も食費も含まず表示しているところもあります。
「介護付は25万円」「サ高住は18万円」といっても、それは高齢者住宅に支払う費用だけで、「サ高住は食事や生活相談契約は別途」となれば、前者の方が安いとは言えないのです。



以上、3つのポイントを挙げました。
実は、高齢者住宅という商品・サービスを見る上で、この「介護システム」「価格設定」「契約形態」の3つのポイントが非常に重要なのです。
次からは、それぞれのポイントについて、詳しく説明します。



【Family 2】 高齢者住宅選びの基礎知識 ~どちらを選ぶのが正しい?~

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   ⇒ どちらを選ぶ? 有料老人ホームか? サ高住か? 🔗
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【高齢者・家族向け連載】 高齢者住宅選びの基本は「素人事業者を選ばない」こと

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   ☞ 高齢者住宅選びの基礎知識 ~どっちを選ぶ~ (10コラム)
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