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「直線的にやってくる」  少子高齢化の巨大リスク  


安全保障は点、経済は波、社会保障は直線。「経済と社会保障は両輪」と言われるが、急こう配で直線的に増える社会保障費の増加率と、グローバルな変動値によって大きく波打つ経済成長率を一致させることはできない。「たら、れば」で作られた社会保障制度の歪みが、超ハイパー高齢社会を直撃する。

【連 載】 超高齢社会に、なぜ高齢者住宅の倒産が増えるのか 002 (全29回)


「日本の重要政策を挙げろ」と問われると、何を思い浮かべるでしょう。
社会情勢や世代によって順位に変動はあるものの、世論調査で常に上位に位置するのが「安全保障」「経済」「社会保障」です。いずれも、平和で安定した日々の生活の基盤であり、国政選挙においては、各政党が国民に問う主要テーマでもあります。

これからの日本の三大重要政策
【安全保障】・・・周辺環境が緊迫する中、国民の安全をどのように守っていくか
【経済対策】・・・グローバル化、AIなどの技術革新の中で、経済をどのように活性化するか
【社会保障】・・・急速に進む少子高齢化の中で、財政・人材不足にどのように対応するか

ただ、政策立案におけるリスク・ベクトルは同じ形状ではありません。

安全保障は点(ポイント)、経済は波形

安全保障政策は、点(ポイント)変化への対応です。
外交とは、各国が異なる色の石をもつ囲碁やオセロゲームのようなものです。
民主主義、基本的人権といった、政治体制や価値観を共有する国であっても、その利害は複雑に絡み合っており、選挙や世代交代でリーダーが変われば、国家間の関係も変化していきます。日本は比較的安全な国だとされていますが、いまだ正常な国交がなく、日本にミサイルを向けている国もあり、テロの脅威も高まっています。

「外交・防衛の基軸をどこに置くのか」は政党によってそれぞれ考えが違いますが、何を軸にするとしても、未来永劫のものではなく、当面の利害の一致でしかありません。周辺国の動き、刻々と変化する世界情勢、パワーバランスに合わせて、最悪の事態が避けられるようリスクヘッジをしながら、現実的に、かつ柔軟に対応していくしかありません。

二つ目の経済は、波形で表されるものです。
GDP(国内総生産)の増減で表される経済の活動水準は、個人消費や企業の設備投資等によって波のように変動し、景気は満ち引きを繰り返しながら循環します。経済の中心である企業や金融は急速にグローバル化しており、インターネットの普及によって、その波の変化のスピード、振れ幅は速く大きく、変動要因も多様化、複雑化しています。「リーマンショック」「ギリシャ破綻」「シャドーバンキング」に代表されるように、他国の財政悪化、金融システムの不備が、国内企業の株価や為替にも大きな影響を及ぼします。

このように点・波の違いはあるにしても、「安全保障環境」「経済環境」は、どちらも予測不可能で、かつ不安定なものです。週刊誌などで「来月、米朝の衝突の可能性が高まる」「数年内に、中国バブルが崩壊し、その影響で日本国債も暴落する」「1ドル80円台になる、株価が4万円を突破する」といった面白おかしく耳目を集める予想があふれていますが、希望的観測、悲観的観測のどちらであっても、それは無数にある可能性の一つでしかありません。

実際には、事前に市場(マーケット)の調整機能や外交的な思惑が働くため、ほとんど、それらの予想通りにはなりません。それは半年前、一年前の週刊誌を読むとよくわかります。世界の歴史を見れば、誰も予測しなかった、偶発的な一発の銃弾が世界を巻き込む戦争につながり、流言飛語による突発的な小さな銀行の取り付け騒ぎが、雪崩を打つように世界恐慌に発展するのです。予想をすることも、十分な対策をとることも難しく、それが、今から1週間後、10日後に発生しても不思議ではありません。

介護需要・社会保障費は直線的に増加していく

これに対して、「社会保障」は、点や波ではなく直線で表されるものです。
安全保障や経済と違い、1週間後、1ヶ月後に偶発的、突発的に発生するリスクでもありません。
しかし、現在の出生率、要介護発生率が続けば、どのような人口動態になるか、どの程度、要介護高齢者が増えるのか、また、現在の制度が続けば、社会保障財政はどのような状況になるのか、介護需要はどの程度増えるのか、国、各都道府県、各市町村の10年後、20年後、30年後、40年後の状況を、今の時点でほぼ確実に予測することが可能です。

言うまでもなく、これからの日本の社会保障政策のカギとなるのが「少子高齢化」です。
これは、ほとんどの先進国で共通する社会現象です。それが単なる人口動態の変化にとどまらず大きな社会問題となるのは、人的にも財政的にも、支える人と支えられる人のバランスが崩れ、経済や安全保障をも巻き込んで国力が大きく低下するからです。

世界保健機構(WHO)の定義する高齢化の段階は、7の倍数で示されています。
日本では、1970年に高齢化率が7%を超え「高齢化社会」になると、1994年には14%の「高齢社会」に達し、2007年には21%を超え「超高齢社会」となりました。
そのスピードは、今後、さらに加速を続けます。2018年9月現在の高齢化率は28.1%と、次の7倍数の時代に入りました。これに少子化による総人口の減少も相まって、2035年には33.4%、2060年には40%と、高齢化率は超高齢社会として定義される割合の2倍に達します。

経済の波形と安全保障の直線は一致しない

このように整理すると、日本の社会保障政策が何故上手くいかないのか、その原因が見えてきます。
本来、「経済と社会保障は車の両輪」というのは、相互に補完し合う役割で「社会保障が充実しないと、経済は活性化しない」「経済が活性化しないと社会保障が充実できない」という意味の言葉です。
しかし、日本では、これを(政治と利権で)曲解し、一定の高い経済成長があることを前提にして、年金、介護、医療、福祉などの社会保障政策が組み立てられてきました。

現実的に考えると、成長率に波のある不安定な経済と、直線的に急こう配で右肩上がりで増えていく社会保障を一致させることはできません。
日本はバブル経済の崩壊とその対策の遅れによって「失われた20年」と呼ばれる、暗く長い低成長時代が続きましたが、一方の社会保障制度はそのまま変更されず「高い経済成長モデル」のまま、続けられてきました。その無謀な希望的観測と低成長時代と少子高齢化が重なり合うことで、高度経済成長時代に作られた社会保障制度とのひずみが大きくなっているのです。

どのような時代でも、一定の高い経済成長が期待できるわけではありません。
「これからの日本はAI、ロボットが経済をけん引する」という人がいますが、「ITバブル」の時も、その人たちはそう言っていました。技術革新によって、新しい産業、ビジネスが発生し、ビジネスモデルや働き方に大きな変化を与えたことは事実ですが、それが継続的、安定的な経済成長や税収の増加に直結するわけではありません。

逆に、これからは「少子化」「人口減少」という大きな壁が立ちふさがります。人口が減少すれば、労働生産力、国内内需は小さくなり、経済成長率は低下します。「たら、れば」の過剰な期待で作られた社会保障制度は、すでに微調整では維持できないところまで来ているのです。


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