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地域包括ケアの誤解① ~安易な「施設から在宅」~

今後、激増するのは独居・高齢夫婦の重度要介護高齢者、認知症高齢者。

要介護高齢者の住まいの整備が遅れると、「介護離職」が激増する


 

地域包括ケアシステムの目的は、「各市町村がマネジメント力を強化し、その地域ごとに限られた財源や人材を最大限に効率的・効果的に運用することによって、社会保障費の増大を抑制すること」です。その目的、方向性を理解しないまま進めても、長期安定的な理想のシステムは構築できません。
一部自治体にみられる、間違った「地域包括ケアシステム」について、気になるものを3つ挙げます。

その一つは、「施設から在宅へ」という安易な発想です。

 

~ポイント介助では重度化対応不可~

「地域包括ケアシステム」の中心となるのは、激増する重度要介護・認知症高齢者への対応です。
介護保険法では、要介護1~要介護5と要介護状態が重度になるにつれて、利用できる介護サービス量(区分支給限度額)が増える報酬体系になっています。そのため、重度要介護高齢者、認知症高齢者の増加には、サービス量の増加で対応すべきと考えがちですが、そう単純な話ではありません。
要介護1~2の軽度要介護と、要介護3~5の重度要介護では、必要な介護サービスの内容が違うのです。

重度要介護高齢者、認知症高齢者に必要な介助項目を一覧にしたのが、次の図です。

要支援・軽度要介護高齢者は、「食事の準備ができない人には食事の準備」「入浴が困難な人には入浴介助」「一人で通院できない人は通院介助」と、介助が必要な生活行動への「定期介助・ポイント介助」で対応が可能です。事前に作成したケアプランに基づき、「サービス内容」「サービス種類」「サービス時間」を予約して、訪問介護、訪問看護などのサービスを提供します。

しかし、重度要介護高齢者になると、排泄や移動、移乗など、ほとんどすべての生活行動に介助が必要になります。これは、日々の生活行動、体調変化によって変動するため、事前予約の訪問介護では対応できません。特に認知症高齢者になると、想定できない行動が多く、継続的な状態把握、見守り、声掛けなどが重要になってきます。重度要介護高齢者や認知症高齢者の安全な生活を支えるは、食事、入浴、排泄などの「ポイント介助」ではなく、「24時間365日の継続的・包括的な介助」が必要になるのです。

 

~重度要介護高齢者の住まいを整備しなければ、介護離職が激増する~

現在、特養ホームなどの介護保険施設の整備にはお金がかかることから、国の方針に従って、「施設から在宅へ・・」「最後まで住み慣れた自宅で・・」という指針を掲げる自治体が増えています。それどころか最近では、「介護付有老ホームは施設的だからダメ」「個別の訪問介護など在宅サービスで対応するサ高住を推進すべき」と主張している識者も増えてきました。

この政策は、まったくの間違いです。
このような、「自宅で、在宅で・・」という方策を継続した場合、確実に増えるのが「介護離職」です。
重度要介護高齢者、認知症高齢者は、排泄も一人ではできず、テレビも付けられず、最重度になると寝返りもできません。そのため「定期介助・ポイント介助」の量が増えても、生活上不可欠な「臨時のケア」「すき間のケア」「見守り」を行うためには、家族が同居しなければならないからです。

また、表のように、通常の訪問介護は、重度要介護高齢者、認知症高齢者に必要な「臨時のケア」「すき間のケア」、また「見守り、声掛け」などの介助サービスは、報酬算定対象外です。そのため、現在のサービス付き高齢者向け住宅では、軽度要介護高齢者には対応できても、重度要介護高齢者に対応できません。「施設ではなく住宅だから、ポイント介助で対応」「早めの住み替えニーズ」とつくられたサ高住は、重度要介護高齢者、認知症高齢者の増加という社会ニーズには、マッチしないのです。

「これからも特養ホームを作り続けろ」と言っているのではありません。
現在のユニット型特養ホームは、莫大な費用多くの介護人材が必要となる非効率な事業モデルであることは間違いありません。そのため、今後は特養ホームではない効率性を重視した低価格・包括算定の「重度要介護高齢者の住まい」を整備していかなければなりません。重度要介護高齢者が集まって生活すると、一軒一軒の自宅に向かう移動時間が必要ないため、一人の介護スタッフが臨機応変に、かつ効率的・効果的にたくさんの介助を行うことができます。
その介護の効率性は、介護財政の削減、効率的運用につながります。

「高齢者住宅はお金がかかる」「お金がないから在宅で」「高齢者住宅は施設的ではないポイント介助で」という一面的な考え方は、明らかに間違いなのです。

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