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市場価値の高い介護のプロになるための5つの視点・働き方


介護のプロを目指すための働き方は5つ。「事業所を選ぶこと」「常勤・正規職員で働くこと」「必要な資格を取得すること」「5年先、10年先を見据えること」「市場価値の高まる知識・技術を得ること」。質の高い事業所で目的を持って働けば、必ず介護のプロフェッショナルになれる

介護スタッフ向け 連 載 『市場価値の高い介護のプロになりたい人へ』 017


ここまで、社会の変化と介護の仕事について、述べてきた。
これからは、企業や会社というものの組織・概念そのものが大きく変わっていく。
それに合わせて、仕事も働き方も、その評価方法も大きく変化していく。これからの労働者・職業人は、みずからの労働の価値を企業内・組織内の評価だけではなく、社会・市場の評価、価値の向上を目指して働く必要がある。

介護業界も本格的な競争の時代に入るため、M&Aで吸収されたり、倒産する事業者も増えていく。介護サービス事業の成否は、高い知識・技術・ノウハウを持つ中核となる介護人材が確保できるか否かによって決まると言っても過言ではない。ヘッドハンティングは、ますます活発になり、優秀な人材はライバル会社に高い給与・待遇で引き抜かれていくだろう。

資格も経験もないまま介護の仕事を始め、「介護はブラックだ・・」と騒いでいるひとがいる一方で、いまでも、優秀な管理者やケアマネジャー、介護看護スタッフには好待遇での引き抜きの声がかかっている。「あの人が辞めるらしい」「定年で、三月末度退職します」とあいさつにいくと、「うちに来てくれないか・・」という声が他の事業者から一斉にかかるという人も多い。「しばらく休もうと思っていたのに・・」と苦笑いしている。それは、その人の能力、仕事が個別企業にもとめられているのではなく、これからの社会に求められているからだ。

もちろん、仕事のやりがいは給与や待遇だけではない。
「自分の居心地のよい場所で、信頼できるスタッフと楽しく仕事をしていたい・・」「理想の老人ホームをみんなで作る・・」という人もいる。介護の専門職には定年もなく、自分のライフスタイルの変化に合わせて、全国どこでも働き続けることができる。
有意義な人生を歩むには、市場価値の高いプロフェッショナルになる必要があり、間違いなく介護業界にはそのチャンスが大きく広がっているのだ。


介護のプロを目指すための働き方

これから介護の仕事を目指す、介護のプロを目指すために、働き方の注意点を5つ挙げる。

① 働く事業所を選ぶこと

まず、第一は働く事業所を選ぶということだ。
介護労働の未来は大きく開けている、将来性も安定性も高い仕事だという話をすると、「私の周りでは実際に・・」「実体験だ・・」という反論がたくさんくる。 それを否定するつもりはない。
ただ、それは「介護の仕事は最悪」と言われる原因はどこにあるか🔗 で述べたように、介護サービス事業者の質が二極化しているというのが原因だ。介護業界には「悪徳事業者」は少ないが、圧倒的に「素人事業者」が多い。

サービスの向上、労働環境の改善に取り組んでいる事業者も多い一方で、目先の利益にしか興味がなく、中には「介護なんて誰にでもできる仕事」「介護のプロよりも素人・新人の方が文句言わないのでよい」とその専門性を否定している経営者も少なくない。このような事業所で働くと、ノウハウや知識、技術を得られないだけでなく、重大事故が発生すると、個人で業務上過失致死などの刑事罰や資格取消などの行政罰を受けるリスクも高くなる。
どのような事業者で働くのかによって、その未来は天地ほど変わってくる。
介護のプロになりたいのであれば、働く事業所をきちんと選ぶということが何よりも重要だ。

② 常勤・正規職員で働くこと

二つめは、常勤・正規職員で働くことだ。
介護のプロになるという成長過程では、責任のある常勤・正規職員で働くということが大前提となる。
パートや派遣労働は、あくまでも正規職員のお手伝い、補助でしかなく、「言われたことをやる」というだけで、自分で「これで良いのか」「何か他に良い方法はないのか」を考え、実践することができない。パートや派遣の仕事を10年やっても、20年やっても、それは本当の意味での介護経験にはならないし、介護のプロにはなれない。

また、高齢者介護は単純労働ではなく、製造業のように「一時的な需要増加を派遣で対応する」というタイプの事業でもない。派遣スタッフが多い事業者は、常勤で介護スタッフが集まっていないということであり、「派遣労働者の多い事業者=介護サービスの質が低い事業者」であることは間違いない。

③ 資格取得をすること

三点目は、資格を取得することだ。
介護は、専門的な生活支援サービスを提供する「専門職」であり、医師や看護師と同様に資格が必須だ。
「介護は資格よりも経験だ」「資格試験と実際の現場は違う」という人がいるが、これは大間違いだ。様々なケース、事例を経験することは、介護や福祉の現場ではとても重要だが、「我流の介護」は専門性の低い、独善的な個人の経験でしかない。「今まで、この方法でやってきた」というのは、ある利用者に対して行った、間違った対応や介助方法がたまたま上手くいったため、それが正しい方法だと勘違いしているにすぎない。

専門的介護とは、科学的介護のことだ。 資格は、介護のプロとして必要な技術・知識を効率的に取得でき、かつ効果的にステップアップできる最良の手段だ。経験に頼った、自己流の介護は、建物の土台がないのと同じで、自己評価が高いだけで、社会や介護市場からは評価されない。

介護の資格は、国家資格(社会福祉士・介護福祉士)+介護支援専門員が基礎・土台となる。 ただ、その資格を取得すればOKというものではなく、関連資格の取得も含め、一生勉強し続けることが必要だ。
介護は専門性の高い業界であり、勉強が嫌いな人はプロにはなれない。

④ 5年先、10年先を見据えること

4つ目は、5年先、10年先を見据え、目標をもって日々を過ごすことだ。
介護のプロの世界・未来は大きく広がっていく🔗 で述べたように、介護サービス事業は、日々の生活支援サービスであり、同じスタッフ、同じ利用者に対して、同じ生活支援サービス・ルーティンワークを繰り返す、単調なものだ。最初の頃は緊張していても、仕事に慣れるにしたがって、「他に良い仕事があるのではないか」「このままでいいのだろうか」という思いが生まれてくる。
介護の仕事に限ったことではないが、プロになるということは、不安や不満、気持ちの揺らぎなど、いくつもの壁を乗り越えて、信念をもって努力を継続することが必要だ。

そのためには、今日、明日ではなく、目標をもって、5年後、10年後をイメージして働くことだ。
新人の頃は、目標になる先輩でも良いし、資格試験でもよい。「管理者になりたい」「生活相談員になりたい」といった事業所内での昇進や昇格でも良いし、将来的な独立・起業でもよいだろう。
職場だけでなく、業界団体の集まりなどで外部の人と話をすることも大切なことだ。そうすると自分が「井の中の蛙」であり、介護の世界・未来が大きく広がっていることがわかるだろう。

⑤ 市場価値の高まる知識・技術を得ること

最後の一つは、市場価値の高まる知識・技術の理解だ。
介護の専門性とは、その土台となる「基礎知識・技術」と、その個々人の経験によって培われた「ノウハウ」に大別される。 基礎知識・技術として必要なのが「資格」であり、その上で介護の専門性、個人の市場価値を高めるには、「ノウハウ」が必要となる。
大切なことは、このノウハウを漠然とした経験ではなく、体系的・科学的に理解し、習得することであり、それを得られる事業者を選ぶことだ。
このノウハウが、サービス管理を行うために不可欠な「ケアマネジメント」「リスクマネジメント」「経営マネジメント」だ。 この3つのマネジメントが、これからの介護のプロとして最も市場価値の上がるノウハウだと言える。


ここまで、私の考える「介護という仕事の未来」について10回にわたって述べてきた。
あなたの介護のプロフェッショナルとしての未来が、少しずつ見えてきただろうか。
人生は常に思い通りにはならないが、自分の望む方向、視線の先にしか進まないということもまた事実。 自分の人生の未来を見据えて働いている人と、そうでない人とでは、介護という仕事の未来は変わってくるのだ。




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