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こんな介護サービス事業者で働いてはいけない ~ホームページから見える事業者の質~

介護サービス事業者のホームページからは、その事業者のノウハウ・経営者の資質が透けて見える。「更新が数か月以上止まっている事業者」「イメージ画像や美辞麗句が多い事業者」はなぜダメなのか。「介護の風呂の自認する自信満々の経営者」はどうして胡散臭いのか

介護スタッフ向け 連 載 『市場価値の高い介護のプロになりたい人へ』

こんな介護サービス事業者で働いてはいけない・・・
その11は、ホームページの見方です。

インターネット社会となり、多くの介護サービス事業者がホームページやブログを作成していますし、フェイスブック、インスタグラムなどSNSを使って情報を発信しています。
ここまで、介護のプロになるためには事業者選びが重要だということ、素人事業者の見極め方、チェックポイントを解説してきましたが、その多くは公開されている重要事項説明書やホームページで発信されている情報から読み取れるものです。

例えば、高齢者住宅事業者であれば、
「囲い込みを行っているサ高住や住宅型有料老人ホームかどうか…」
「何でもOK のマネジメント力の乏しい事業者ではないか…」
「介護付有料老人ホームの介護看護スタッフの人員配置は必要十分なものか…」
「建物設備は、要介護高齢者の生活環境・介護環境に適したものか…」

更に、重要事項説明書説明書が公開されていれば、
「介護スタッフのパートや派遣社員の比率が多くはないか…」
「有資格者の数、スタッフの離職率、管理者の資格や専従専任…」 
 ・・・等々

それ以外にも、運営している会社の名前がわかれば、介護事業以外にどのような種類の会社やビジネスを展開しているのか、その評判はどうなのか…、経営者の名前や管理者の名前がわかれば、その人がブログやフェイスブックでどのような発信をしているのか、どのような人物なのかもわかります。
20年前であれば、ハローワークや求人広告といっても、その会社名と労働時間、勤務体系、給与くらいしかわからなかったのですが、いまや、調べる気さえあれば、自宅にいながら、パソコンやスマホから事業だけではなく、そこで働く人に関する様々な情報まで得ることができるのです。

ただ、ホームページを作っているけれど、イメージ画像と美辞麗句ばかりで、誰に対して、何を言っているのかわからないようなものもあります。また、半年に一度程度しか更新されていない、ブログもフェイスブックもずっと止まっている…、というところもあります。

「忙しいからそんなことまでやってられない…」
という人がいますが、そうでしょうか。別に特別な労力をかけなくても、「今日は利用者と一緒にお団子づくりをした…」とか「今週の特別食はお刺身だった…」とか、「新しい仲間が入ってくれた…」とか、一週間に一度程度の更新はできるはずです。それさえできない、誰もやらないというのは、やる気がないと思われても仕方ありません。

「ホームページの更新はそれほど重要じゃない」「実際の生活環境の改善、介護に注力すべきだ」
という人はいますが、そうでしょうか。老人ホームに入っている老親がどのような生活をしているのか、デイサービスで何をしているのかを知りたいという子供は多いでしょう。遠方に暮らしている子供や孫、特に今回のようなコロナ禍の中では面会もままなりません。
基本的な情報発信さえできていないのに、「ご家族に寄り添う介護」「安心・快適」などと言っている時点で、その事業者は口先だけだ…ということがわかるはずです。

「美辞麗句が多い」「自信満々の経営者」はどうして胡散臭いのか…

「自分の本当のおじいさん、おばあさんだと思って介護します…」
「『ありがとう』、入居者さま、ご家族様の笑顔が私たちの誇りです…」
「私たちの会社は、介護事故ゼロ、オムツゼロを目指します…」
ホームページには、聞いているこちらの方が寒くなるような美辞麗句を発信しているところもあり、できもしないこと、それが何の意味があるのかよくわからないようなことを、さも重要なことであるかのように、自信満々に話す経営者もいます。

自信満々の経営者は、人を引き付ける力があり、時に「カリスマ」と呼ばれることがありますが、安物の政治家や腕の悪い美容整形医と同じで、こんなことを言っている介護サービス事業者は、たいしたことはありません。介護業界でも、これまで数人、そんな人がでてきましたが、重大な事故や不正請求、劣悪な労働環境が明るみにでて、全員が消えています。

ここには二つの問題があります。
ひとつは、介護現場というもの全く理解していないこと。
例えば、「介護事故ゼロ」。介護事故の予防は必要ですが、対象は身体機能・認知機能・判断力の低下した要介護高齢者ですから、事業者がどれほど努力をしても介護事故をゼロにすることは不可能です。ゼロを目標にすると、見て見ぬふりや隠蔽するか、もしくは事故を起こしたスタッフを悪者にするか…どちらかしてありません。

これは「おむつゼロ」も同じです。
排泄は本人の尊厳や生きる気力にも関わってくる、重要な生活行動の一つです。ご本人の排泄機能・排泄リズム・希望に合わせて排泄環境を整え、「オムツに頼らない介護」を目指すことは重要です。ただ、これも「おむつゼロ」というのは少し違います。失禁をしたときに慌てないように念のために紙パンツにするというのはあることですし、事故リスク軽減のために必要なこともあります。
本当に「介護事故ゼロ」「おむつゼロ」を目指すのであれば、見守りや声掛け、24時間の迅速なコール対応などたくさんの介護人員配置が必要です。しかし、「介護事故ゼロ」「おむつゼロ」を目指すと言っている経営者が、本当にそこまできちんと考えて、必要な介護体勢を整えているのかと言えば、そうではありません。

もう一つの問題は、「やる気・善意の搾取」です。
介護業界にはいろいろな人がいますから、「介護の仕事をしている人はいい人、優しい人」というわけではありませんが、そのサービスの特性を考えると、またこれまでお付き合いしている介護スタッフを見ると、心優しい、責任感の強い真面目な人が多いということは言えるでしょう。
要介護高齢者、困っている家族のために、少しでも質の高いサービスを提供したい、なんとか改善策を見つけてあげたいと思うのは、介護のプロとして当然のことです。しかし、その善意・やる気を逆手にとって、無理難題を押し付けてくる介護経営者はとても多いのです。

「認知症でも医療依存度の高い高齢者もOK」「介護事故ゼロ」「おむつゼロ」を目指すのであれば、そのストレス・負担を介護スタッフに押し付けるのではなく、それができるような手厚い介護体制、労働環境を整えるのが経営者の仕事です。わたしは大企業、中小企業含めたくさんの介護経営者を知っていますが、鼻息の荒い、自信満々の人は二流かそれ以下です。事業展開を自分の能力、手柄かのように吹聴している人はあっという間にいなくなります。

一流の経営者はみな、頭が低く、経営環境の変化、介護の未来、労働環境の改善に頭を悩ませています。介護ビジネスは現代の「ウイン-ウイン」「勝ち組・負け組」といった軽佻浮薄なものではなく、目先のイメージ戦略やブランディングだけで成功できるような簡単なものでもありません。
地域に根差して地域住民からも他の介護サービス事業者から信頼されて、20年30年と長期安定的につづけることができて、初めて成功と言えるのです。

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こんな介護サービス事業者で働いてはいけない

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