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こんな介護サービス事業者で働いてはいけない ~経営者の顔が見えない~

重要事項説明書からは、事業者のコンプライアンス・情報開示の意識、管理者の資質や資格、経験までもを読み取ることもでき、インターネットを使えば事業者・経営者がどのような人か、何を考えているのかも調べることが可能。しっかり事業者分析・企業分析をしよう

介護スタッフ向け 連 載 『市場価値の高い介護のプロになりたい人へ』

こんな介護サービス事業者で働いてはいけない・・・
その七つ目は、経営者・管理者の顔が見えない事業者です。

前回、重要事項説明書について、少し触れました。
その本来の目的は、介護サービス事業所の利用希望者、特養ホームや介護付有料老人ホームへの入所・入居希望者が、事前に契約内容の重要事項について情報が得られるように作られているものです。ただ、入居者数や建物設備の概要、その要介護状態の分布、男女比、費用の他、従業者に関する事項も網羅されていますから、事業者分析を行う求職者にとってもとても役に立つ、有益なものです。
例えば、介護付有料老人ホームでも【3:1配置】【2:1配置】というだけでは、介護看護スタッフの配置が違うんだな…ということしかわかりませんが、重要事項説明書を読めば、全体の人数だけでなく、介護スタッフ・看護スタッフの割合、パートや派遣スタッフの数、夜勤帯の人員配置も書かれていますし、全スタッフの有資格者数(資格別)や勤続年数の分布、前年度の採用数・退職者数までわかります。「この事業者は短期の離職者数が多いな、働きにくいのかな」「介護福祉士とか社会福祉士とかの国家資格者が少ないな…」と想像することはできるでしょう。
それ以外にも重要事項説明書から読み取れることはたくさんあります。

「作成日時・作成者」
重要事項説明書は、価格やサービス内容を知るために不可欠な、その名の通り重要な説明書類・契約書類です。そのため、できるだけ最新のものでなければなりません。随時の変更は難しくても、半年に一度程度は見直す必要があります。しかし、中には作成日が一年以上、二年以上前、その作成者がすでに退職して働いていないというところもあります。
この手の事業者は、基本的なガバナンスが整っていない、情報開示の意識が低いということになります。
つまり、日付をみただけで、コンプライアンス(法令順守)の意識がわかるのです。

「事業主体・設立年・経営者」
事業主体や経営者の氏名も書かれています。
自分が入職しようとしている事業所だけでなく、それ以外にどのような種別の介護サービス事業を展開しているのか、どれくらいの規模なのか…ということもわかります。介護関係だけでなく保育園や障害者施設などを展開しているところもあれば、大手企業の子会社、居酒屋やホテルなど、全く異業種の事業がメインという会社もあります。法人の設立やその事業所の開設年月日などもわかりますから、事業所の成り立ちがわかるはずです。

ここで重要なのは、経営者です。
介護経営は、片手間にできるほど簡単なものではありません。介護人材不足や介護財政の悪化による制度改定・報酬削減など経営課題は山積しています。
しかし、介護サービス事業は「介護の需要が高まるから」「介護は儲かりそうだから…」と、介護のことを全く知らないまま、全くの異業種から安易に参入してきた経営者が多いということも事実です。折角のインターネット社会なのですから、経営者の名前くらいはネットで検索をしてみましょう。
自分の理念や考え方を丁寧に発信している人もいれば、全く顔が見えない、名前だけで何をしているのかわからないという人、中には「えっ?」というような経歴の人もいます。経営者の顔が見えない、何を考えている人なのかわからないということは、どんな会社なのかわからないということです。

「管理者・管理者の資格・専任専従」
もう一つは、管理者です。
管理者は、各介護サービス事業所のケアマネジメント・リスクマネジメント・介護経営マネジメントの責任者です。管理業務には決まった仕事はありませんが、適切にサービスが遂行されているか、過重労働になっていないか、トラブルの種がないかを見廻ったり、家族や入居者の話しを聞いたりと部門の調整をし、経営者に現場の意見を上げるなど、その業務は多岐に渡ります。
もちろん、介護サービス事業の管理者は、「介護のプロ」であることが必要です。
介護福祉士・社会福祉士・ケアマネジャー・看護師などの国家資格の資格者であること、そして10~15年程度の現場の経験があることが絶対条件です。

加えて、介護保険施設や高齢者住宅などの場合、管理者は専任専従であるべきだということです。専任というのは「看護師や介護スタッフと兼任ではなく、管理者だけの仕事をしているということ」、専従というのは、「他の事業所の管理者と兼務していない、当事業所だけの管理者」ということです。
ただ、実際は介護付有料老人ホームでも、管理者が介護業務を兼任していたり、看護師を兼任しているところがあります。それは管理者が業務に入らないと仕事が回らないということ、適正な管理業務ができていないということ、そして管理者も含めて数字をつくらないと指定基準や契約基準を満たさない事業者だということです。

以上、3つのポイントを挙げました。
これらは、すべて「重要事項説明書」に書かれています。
もちろん、重要事項説明書だけで、ここまで述べてきた条件をクリアすれば、その事業所が「プロの事業者だ」ということではありません。最後は自分で説明会に参加し、管理者の面接を受け、質問をし、見学をして決めることになります。
ただ、重要事項説明書を読めば、「素人事業者か否か」「働かない方が良い事業者」は、ある程度わかるのです。介護のプロになりたいと強く願うのであれば、「こんなはずではなかった…」と後悔しないためにも、しっかりと事前に事業者の分析、企業分析をすることが必要です。


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こんな介護サービス事業者で働いてはいけない

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