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こんな介護サービス事業者で働いてはいけない ~法人の経営体質を見る~

介護経営は、一般の営利事業とは違う、公的な社会保障制度・介護保険制度を土台とする「公益性・公共性」の高い事業。「議員が理事長・天下り施設長のいる社会福祉法人」「介護上場企業・投資ファンドが主たる株主」という事業所は法人・企業の体質として問題が大きい

介護スタッフ向け 連 載 『市場価値の高い介護のプロになりたい人へ』

こんな介護サービス事業者で働いてはいけない・・・
その八つ目、重要なチェックポイントは、事業者・法人の経営体質です。

「株式会社など民間企業で働く方が良いのか、社会福祉法人の方が良いのか…」
「大手事業者で働く方が良いのか、中小の事業所で働くのが良いのか…」
「新しい法人の方が良いのか、それても古くからある法人の方が良いのか…」
そんな質問を受けることがあります。
もちろん、そんなことで「プロの事業者か、素人事業者か」が決まるわけではありません。「大手の方が、教育体制がしっかりしているだろう…」と漠然と思っている人が多いのですが、ノウハウの構築や安全対策、人材育成を後回しにして、目標全国50施設、100施設と拡大だけを目指してきたところは、規模が大きいだけで中身はスカスカです。逆に、デイサービスだけ、介護付有料老人ホームが二か所・三か所というところでも、質の高いサービスを提供し、きちんとマネジメントができているところもあります。
「新規開設の新しい事業所は、うるさい先輩が少ないから、自分たちで一から作り上げられる」という人もいますが発想が単純です。そんなところもあるかもしれませんが、「新人スタッフばかりの介護現場に丸投げ」のような事業者では、事故予防も法的なトラブル対応もできませんから、怖くて働けません。メリットとして挙げるとすれば、「建物が新しい」というだけです。
「こんなところで働いてはいけない…」とまでは言いませんが、その経営体質として注意をした方が良いと思う、法人の特徴を3つ挙げます。

「経営者のいない、わからない事業者」
私のところには、高齢者住宅の事業計画を見てほしいという相談がメールを通じて、また資料をもって九州や四国地方からもこられる方もいます。その多くは、「デベロッパーから遊休土地を高齢者住宅にしないか…」と勧められているけれど、どうしたらよいかというものです。
このような事業者は「高齢者住宅の経営者になる」という意識はゼロ、「わたしは家主です。家賃収入を受け取るだけです…」という答えが返ってきます。入居希望者や家族への説明は誰がするのかと聞くと、テナントで入る(コンサルが連れてきた)訪問介護や通所介護の事業者に委託する、食事も外部の事業者が入るというものです。
「住宅内で発生するトラブルや事故は誰が対応するのか」と聞くと、「すべて訪問介護事業者がやってくれるはず…」、逆に「どんなトラブルがあるのでしょうか」「トラブルや事故が発生した時に、家主に何か責任が及ぶのでしょうか…」となります。「テナントの訪問介護が倒産したり、経営に失敗して出て行けばどうするのか」と聞くと、「そんなことがあるのでしょうか」「そうするとどうなるのでしょうか?」「私の責任なのでしょうか」と雲行きが怪しくなってきます。
このような「高齢者住宅の面接に行ったのに、雇用されるのは訪問介護」といった、誰が誰だかよくわからない、無責任極まりない事業者で働いてはいけません。

「介護上場企業・投資ファンドが主たる株主」
「M&A」という言葉を聞いたことがあると思いますが、現代社会においては、企業・会社は売り買いされる商品でもあります。それは介護サービス事業も同じです。特に、有料老人ホームやサ高住は不動産事業でもあるため、高齢者住宅を専門にしている「M&A」の会社もあります。
最近は、海外のものも含め「投資ファンド」と呼ばれる、投資会社も介護ビジネスや高齢者住宅に目を付けています。すでに大手事業者の中にも、投資ファンドが実質的な経営者、大手株主というところは増えています。ただ、彼らの目的は、会社を安く買って高く売ることですから、目先の株価・目先の利益だけで、介護サービス事業にもサービス向上にも全く興味がありません。
同じことが言えるのが、株式の上場会社です。
最近は、介護サービスを主とする企業でも、株式を上場するところが増えてきました。株式を上場すると、銀行からお金を借りなくても、市場から直接資金調達ができるというメリットがあり、事業者数をどんどん増やすことができます。ただ、株式の投資家も株価の値上がりや配当金を期待してその株式を購入しているのですが、どうしても目先の株価、目先の利益優先になります。
介護は医療同様に、公的な社会保険制度を土台とした、公的・社会的役割の大きな事業です。本来、その利益は地域社会や介護看護労働者に還元すべきものです。株式上場や投資ファンドのように、短期利益に縛られ、利益を投資家や株式に還元するようなシステムが、介護サービス事業に適しているのかどうかを、考える必要があります。
実際、違法な「囲い込み」を当たり前のように行ったり、考えられないような労働環境で悲惨な死亡事故や虐待事件を起こしているのは上場会社や投資ファンドの経営する事業者がとても多いのです。投資ファンドの存在を全否定するわけでも、介護サービス事業の株式上場を全否定するつもりはありませんが、「大手だから、上場会社だから…」というメリットは一つもありません。

「理事長が地方議員・施設長が天下り」
社会福祉法人は、民間企業とは違い、営利目的の事業ではなく、地域の高齢者福祉の拠点となる法人です。そのために、介護サービス事業者でありながら、補助金の支出や税制優遇が行われています。社会福祉法人の理事長には、社会福祉に強い情熱がある人が、また特養ホームの管理者(施設長)には「介護のプロ」だけではなく、「介護と福祉のプロ」であるべきで、介護福祉士・社会福祉士・ケアマネジャー・看護師などの国家資格の資格者であること、そして10~15年程度の介護・福祉の現場の経験があることが絶対条件です。
しかし、実際は、社会福祉法人の理事長が地元の地方議員で、無資格・未経験の息子や妻が施設長というところや、社会福祉法人といっても実際は市町村との第三セクターで、理事長職は副市長の天下り専任ポスト、施設長も建設や理財局といった全く部外者からの天下りというところがたくさんあります。
わたしは、社会福祉法人の施設長向けの介護経営やリスクマネジメントのセミナーに呼ばれることがありますが、この天下りの人達は、どこにでもいて、やる気なくほとんど寝ています。恐らく、採用の面接に行っても、この手の人は一目でわかるはずです。
どうして彼らがセミナーや面接にでてくるのかといえば、することがなくヒマだからです。
でも、何もしない理事長は1500万円、施設長は1000万円近い給与をもらっています。
社会福祉事業の一族経営・天下りというのは、反社会的行為と言って良く、彼らのような介護や福祉をクイモノにしているから、介護の地位・給与が上がらないのです。
こんなところでどれだけ働いても、責任が重く、給与は安く、不愉快なだけです。

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こんな介護サービス事業者で働いてはいけない

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