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【F017】プロと素人の違いは「リスクマネジメント」に表れる

家族向け 連載 『高齢者住宅・老人ホーム選び』は難しくない 17

激増する高齢者住宅・老人ホームでの事故・トラブル。その原因は、「補助金ありき」で進められた制度の混乱と、「開設ありき」で増加した素人事業者の増加。プロの事業者と素人事業者を見極めるポイントは「リスクマネジメント」にある。



有料老人ホームやサ高住への入居を検討する最大の理由は、介護を中心とした不安の解消です。
そのニーズを取り込むために、「安心・快適」といったイメージでセールスが行われています。
しかし、そのイメージとは正反対に、転倒による骨折や溺水による死亡事故は多発していますし、経営悪化による値上げのケースも増えています。「介護職員による虐待や窃盗、暴力」「手抜き介護で死亡」といった痛ましい事件も、テレビや新聞で報道されている通りです。
事故やトラブルが噴出している事業者は全体の一部ですが、同時に表沙汰になるものも、死亡などの重大事件だけ、それも氷山の一角であるということも事実です。

高齢者住宅で事故やトラブル、倒産が増えている理由は大きく分けて2つあります。

指導・監査などの入居者保護施策が大きく後退

一つは、入居者保護施策が遅れていることです。
高齢者住宅は、特養ホームのような老人福祉施設ではありません。
しかし、「身体能力や判断力の低下した高齢者・要介護高齢者が対象」「入居者・介護スタッフが限定され、閉鎖的になりやすい」「一旦入居すると行き場がないために入居者・家族が弱い立場に立たされやすい」という事業特性は変わりません。転倒・骨折などの事故や入居者間のトラブルが起こりやすく、また、それが外部から見えにくい、隠蔽や改竄などの二次被害も起こりやすい事業であると言えます。
そのため、産業として健全に育成するには、行政など第三者による入居者に対する相談体制の整備、指導・監査など、強制力をもった入居者保護施策の充実が必要です。

しかし、これまで国は「有料老人ホームとサ高住」の制度矛盾に見られるように、「補助金ありき」「とりあえず高齢者住宅を増やす」という安易な発想のもとで、参入基準を大きく下げてきました。
その結果、登録だけで誰でも開設できるサ高住が激増し、それに引きずられるように有料老人ホームの指導監査体制も有名無実化しています。更に、混乱する二つの制度の中で、無届施設などの不正な脱法施設、貧困ビジネスも、激増しています。
入居後に、家族が高齢者住宅の契約違反やトラブル、不正について相談したくても、専門的に相談する場所もない、相談を受けても誰も対応する人がいないというのが現実です。

『高齢者住宅は儲かる』で激増した素人事業者

もう一つが、「需要が高まる」「儲かりそうだ」と安易に参入してきた素人事業者の激増です。

高齢者住宅事業の対象は、身体機能の低下した高齢者・要介護高齢者です。
生活上、転倒や溺水、誤嚥による窒息などの発生可能性は高く、認知症によるトラブル、身体機能の急変、更には失火による火災や感染症等の発生リスクも高くなります。
そもそも、高齢者住宅が利益率の高い、事業性の高いビジネスなのであれば、補助金がなくても、学生マンションのように増えていたはずです。
しかし、今でも、一般の賃貸マンションや賃貸アパートのほとんどは、「独り暮らしの高齢者お断り」です。それだけ身体機能の低下や認知症などによるトラブル、事故が多く、対応が難しいからです。

高齢者住宅を長期安定的に経営するには、これらのリスクやトラブルの理解、その発生予防や対応策に関するノウハウが不可欠です。しかし、残念ながら、そのノウハウやリスクを無視して「高齢者住宅は儲かる」「需要が高まる」と安易に参入してきた素人事業者があまりにも多いのです。
それが、現在の高齢者住宅で事故やトラブルが増えている最大の理由だといって良いでしょう。

高齢者住宅選びの中で、「大手の事業者ならノウハウがあるだろう・・」「高額の有料老人ホームなら大丈夫だろう・・」という人がいますが、これも大きな間違いです。
中小・個人事業者の中にも、きちんとしたノウハウをもって運営しているところはたくさんあります。逆に、トップ10に入る超大手と呼ばれるところでも、介護保険制度やリスクの管理のノウハウがまったくないまま、拡大路線だけを走りつづけてきたところも少なくありません。大手の「ホーム長」「サービス管理者」と呼ばれるそれぞれの高齢者住宅の責任者と話をしていても、介護の経験や事故対応の基本的な知識のない、「単なる営業マン」という人が、たくさんいます。
その結果、信じられないようなレベルの介護連続殺人や集団的な介護虐待が発生しているのです。

『安心・快適』の素人事業者は、悪徳業者よりも怖い

これらの素人業者は、必ずしも悪徳業者と言う訳ではありません。
だから、やっかいなのです。
現在、無届施設は全国で1200ケ所を超えています。無届施設は脱法施設であり、貧困ビジネス化しているところもたくさんあります。「高齢者や社会保障制度をクイモノにする悪徳業者」と見られがちですが、多くの事業者は、「行き場のない高齢者の受け皿としてやっている」という認識です。「福祉の心」など、善意だと言い切る人も少なくありません。
ただ、群馬県の「たまゆら」や札幌の「そしあるハイム」のように、基本的な最低限の安全対策さえ行われていないため、一旦火災が起こると、ほとんどの高齢者が逃げ遅れ、十数人の入居者が亡くなる大惨事に発展します。

これは、制度基準に合致しているサ高住や有料老人ホームでも同じです。
「安心・快適」と説明していても、安全対策や事故対策が不十分なところは少なくありません。
ただ、これらの素人事業者には「高齢者や家族をだましてやろう」という明確な意図はありませんし、説明時にウソをついているという認識もありません。「介護が必要になっても安心・快適」「お任せください」と胸を張って自信たっぷりに説明していても、要介護高齢者の生活にはどのような事故、トラブルがあるのかさえ理解していないのです。
このような素人経営の高齢者住宅に入ると悲惨なことになります。無免許運転のタクシー、それも自分の運転技術を過信しているタクシーに乗るようなもので、危険極まりないのです。

ただ、これは逆説的でもあります。
現在の高齢者住宅は、サービスの質・ノウハウは二極化しています。
どの産業、業界でも同じことが言えますが、プロの経営者・事業者と、素人経営者・事業者の最大の違いは、「事業を不安定にするリスクを理解しているか」「適切な対応策をとっているか」で決まります。
それは、「大手・中小」「高額・低価格」は、関係ありません。「プロの事業者」と「素人事業者」の見分ける最大のポイントは、「トラブル・リスクへの対応力」なのです。

いくつかのポイントを知って入れば、それはそう難しいことではありません。
事業者以上に、入居後のリスクやトラブルについて、詳しくなれば良いのです。
高齢者住宅選びの最大のポイントは、「リスク対策の見極め」なのです。
ここからは、入居後のリスク・トラブルと、その対応力のチェックポイントについて整理します。


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