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「聞いた金額と違う」費用のトラブルを起こす事業者は悪徳事業者

高齢者住宅選びの基礎となるのは「費用・価格」。費用に掛かる金銭トラブルが増えているが、それは事業者の努力で100%回避てきるもの。安く見せかけるなど不透明の価格表示の高齢者住宅は、単なる「説明不足・ノウハウ不足」ではなく、悪徳事業者である可能性が高い。

高齢者・家族向け 連載 『高齢者住宅選びは、素人事業者を選ばないこと』 025 


高齢者住宅選びの基礎となるのは、「価格」です。
高齢者住宅は、月額費用15万円程度のものから、40万円、50万円というものまで、入居一時金もゼロから数千万円~数億円という超高級老人ホームまでさまざまです。
「お金に糸目は付けない・・」という一部の富裕層は別にして、ほとんどの人は、パンフレットなどを取り寄せ、「この程度なら入居できるだろう・・」「親父の年金と預貯金の範囲でいけそうだ・・」と考えて検討に入るというのが一般的でしょう。

しかし、実際に入居してみると、「聞いた話、金額と全く違う・・・」「こんな高いとは知らなかった・・」というトラブルが多発しているのです。
そこには大きな二つの落とし穴があります。

高齢者住宅の月額費用と月額生活費には、大きな差がある

まず一つは、月額費用と月額生活費は違うということです。
下図で、高齢者住宅で必要な生活費の項目について簡単にまとめました。
家賃や光熱水費などの建物関連費、介護や食事、医療費など生活サービス関連費用のほか、日々の衣服代や紙おむつなどの日用品費、介護保険料や健康保険料、お小遣いなど多岐にわたります。
それは、高齢者住宅に入居しても、高齢者住宅に支払う月額費用以外にも、これまでの日常生活で必要なお金は、そのままかかるのです。


光熱水費や電話代、日用品、医療費などは毎月必要になりますし、要介護状態が重くなればオムツ代などの費用もかさみます。その金額は想像以上に大きいものです。「月額費用15万円なら、だいたい親父の年金内でいけそうだな・・」と安易に考えてしまうと、実際の一ヶ月の生活費は23万円となり、資金計画が大きく狂ってしまいます。

特に、多くの高齢者は年金だけでなく、預貯金を取り崩しながらの生活になります。「お金がたりない」「誰が出すんだ」という家族間でのトラブルにもなりますし、途中でお金がなくなって退居しなければならなくなると大変です。「今、医療費はどれくらいかかっているのか・・・」「保険料は・・」「携帯代も必要だな・・」と、それぞれの要介護状態に合わせて、きちんと確認することが必要です。

もう一つの落とし穴は、月額費用として表示されている金額に含まれるサービス内容は、高齢者住宅事業者によって、それぞれ全く違うということです。

上図のように、介護付有料老人ホームの場合は、食事や介護看護サービスも一体的に提供されますから、月額費用の中にすべての費用を含んで表示されているのが一般的です。
これに対して、住宅型有料老人ホームの介護サービスは有料老人ホームから受けるのではなく、外部の訪問介護、通所介護との契約ですから含まれません。更に、サ高住は、食事も外部のレストランから提供されるとなれば、含まれていないこともあります。
このようにパンフレットに記載されている月額費用だけでは、金額を比較できないのです。

費用の表示方法・説明方法に表れる事業者の質

ここまで、事故やトラブル、火災や災害、感染症など、様々なリスクについ述べてきましたが、すべて事業者の努力だけで100%回避できるものはありません。
ただ、この費用にかかる金銭トラブルだけは、事業者の努力で100%回避できるものです。
それは、「入居前」に「数字」で、「明確」に、表すことができるものだからです。ですから、この月額費用や入居一時金の説明には、事業者の質、信頼性というものが如実に表れるのです。

プロの事業者は、月額費用に含まれるサービス、含まれないサービスにわけて、費用の説明を丁寧に行います。口頭だけでなく、個別に、これまでの自宅での生活状況などを聞き取り、「オムツ費用」や「医療費」などを含めて、「月額生活費見積表」を作ってくれるところもあります。将来、紙おむつが必要なった場合の費用や、入院時や外泊時に減額される費用、されない費用について、丁寧に説明してくれます。
それは「良心的」というよりも、入居後に金銭トラブルになると事業者が困るからです。

「聞いた金額と違う」と思っても、2~3万円であれば、ほとんどの家族は文句を言わないでしょうし、「退居する」「裁判する」ということにもなりません。しかし、「信頼できない事業者だ・・」という不満、不信感は必ず残ります。そうなると家族と友好な関係は築けませんし、その積み重なった不満は事故やトラブルが発生した場合に爆発します。
費用の中身を勘違いされたまま入居されると、事業者にとっても大きなリスクの種なのです。


更に問題となるのはここからです。
一部の事業者が、実際よりも安く見せかけようとしたり、費用の内容をきちんと説明しないのかと言えば、単純に「低価格に見せかけて、勘違いさせて入居させる」ということだけではありません。それは、併設の介護サービスや関連の医療サービス、日用品の押し売りが行われるからです。

例えば、自宅にいるときは、要支援でほとんど介護サービスは使っていなかったのに、高齢者住宅に入ると要介護2になり、食事介助や入浴介助などが行われるケース、また医療も二週間に一度、内科に高血圧の薬を病院にもらいに行くだけだったのに、歯科や眼科、精神科など、複数の診療所に強制的に通院させられるなど、様々なトラブルが発生しています。
使用される紙おむつの枚数なども、自宅にいるときの二倍、三倍ということもあります。
サービス内容と価格はリンクしますから、不正な「囲い込み」を行って利益を上げようとする事業者は、事前にサービス内容や価格について、丁寧に説明できないのです。

これは、月額費用だけでなく入居一時金の返還金も同じです。
途中退居の場合の返還金一覧表や保全方法、その保全契約書などを一覧表にして説明してくれる事業者もあれば、全く示さないところもあります。細かく聞かれと困るからです。

このように月額費用や入居一時金の説明は、単純に「高い・安い」ではなく、その事業者がプロか素人か、更にはその事業者の資質や信頼性、サービスの質までも見えてくるのです。


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高齢者住宅選びの基本は「素人事業者を選ばない」こと

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