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プロの高齢者住宅は絶対口にしない3つの「NGワード」 

高齢者や家族は「高齢者住宅に入れば、自宅で一人生活するよりも安心」と思っているが、その漠然としたイメージやサービス提供責任の認識の違いは、高齢者住宅事業者にとって大きなリスク。素人事業者が良く使うフレーズで、プロの事業者が絶対に口にしないNGワード

高齢者・家族向け 連載 『高齢者住宅選びは、素人事業者を選ばないこと』 052


ここまで、9回に渡って、素人経営の高齢者住宅を見分けるポイントを整理してきました。
素人事業者のほとんどは悪徳事業者ではなく「高齢者を騙してやろう」という気持ちはありません。説明時にウソをついている意識もありません。ただ、その説明している当人が高齢者住宅の事業特性や高齢者の生活上のリスクについて、わかっていないのです。
ある意味、素人事業者は悪徳業者よりも怖いと言ってもいいのかもしれません。
このような高齢者住宅に入ると悲惨なことになります。 それは無免許運転のタクシー、それも自分の運転技術を過信しているタクシーに乗るようなもので危険極まりないのです。


経営ノウハウ・サービス管理力など「サービスの質」が表れる説明力

素人事業者の特徴を、もう一度整理してみましょう。

① 希望したサービス、約束したサービス、商品が提供されない。
② 提供される商品・サービスの質、スタッフの質が低い
⓷ 入居後に、聞いていなかったトラブルや事故が多発する
④ 最初に聞いた説明内容と、実際にかかる費用が違う

大きく分けるとポイントは二つです。
一つは商品性・ビジネスモデルの瑕疵です。
高齢者住宅へ入居を考える高齢者・家族の最大のニーズは「介護の不安への解消」です。「介護が必要になっても安心」と標榜するのであれば、「介護付きだから・・介護サービス併設だから・・」ではなく、事業者の責任で重度要介護高齢者が生活しやすい、介護スタッフが安全に介護できる建物設備、介護システムを構築しなければなりません。

住宅型やサ高住など区分支給限度額方式のポイント介助では重度要介護、認知症には対応できませんし、介護付でも【3:1配置】程度では、重度要介護高齢者が増えると必要の最低限の介護サービスさえ提供できません。また「居室・食堂フロア分離型」は、介護の手厚さに関係なく「重度化対応不可」です。
「要介護高齢者が安全に暮らせる生活環境」は「介護スタッフが安全に介護できる労働環環境です。「介護できないのに、できる」と言い張ってしまうため、働く介護スタッフが過重労働となり、問題となっているような手抜き介護による死亡事故やスタッフによる虐待、トラブルが増えているのです。

もう一つのポイントは、リスクに対する説明不足です。
高齢者住宅に入っても、転倒や誤嚥などの事故は発生しますし、火災や災害、感染症や食中毒などのリスクもあります。素人事業者は「リスクを隠して契約している」というのではなく、そもそも、どのようなリスクがあるのか知らない、考えていないのです。そのため、「看取りOK、認知症OK、医療OK」と何でも安易に請け負い、「お困りでしょう。すぐに入居できますよ」と介護現場の負担を理解しないまま、次々と入居させてしまうのです。

ただ、高齢者住宅事業者には、法的に高い「安全配慮義務」が科せられていますから、「入居者の生活上のリスク」は、「事業者や介護スタッフが負うリスク」でもあります。「リスクが理解できていない」ということは、「その予防策も対応策も何もとれない」ということですから、骨折や死亡事故が発生すれば、事業者や介護スタッフは民事上も刑事上も、重い責任を負うことになります。
そのことさえもわかっていないのです。
リスクに対する説明力のない事業者が、どれだけ怖いかわかるでしょう。

プロの高齢者住宅は絶対に使わない「3つのNGワード」

事業者の説明が正しいか、正しくないのかを理解するためには、高齢者住宅に関する高い知識や経験が必要です。 ただ、高齢者住宅の事業者がよく使うフレーズだけれど、プロの事業者は絶対に使わない「NGワード」というものがあります。

① 「安心・快適、多分・恐らく、全力で・・」
一つは、「安心・快適」などの美辞麗句です。
高齢者や家族は、「高齢者住宅に入れば、自宅で一人生活するよりも安心・・」と思っている人が多く、そのイメージで販売されているものが多いのですが、それはプロの事業者にとっては、とてもやっかいなことなのです。
高齢者住宅に入っても、自宅で生活しているのと同じように転倒事故や骨折事故は発生しますし、食事中に、誤嚥や窒息を起こし、それが原因となって肺炎や亡くなる方もいます。認知症の高齢者になると、「危ないので、座って待っててくださいね」と言葉をかけても、すぐに忘れて歩き出してしまいますし、自分がどこにいるかわからずに混乱したり、何か全く違うことを思い出して、急に怒り出す人もいます。

ほとんどの高齢者や家族は高齢者住宅に入居するのは初めての経験です。
「高齢者住宅に入れば安心・快適」という漠然としたイメージ、「どこまでが事業者の責任なのか」というサービス提供責任の認識の違いが、プロの事業者にとって大きなリスクなのです。そう考えると、「一人で生活するよりも安心ですよ・・・」「今ならすぐに入居できますよ・・・」と安易に言っている事業者は、それだけで素人だということがわかるでしょう。

② 「同じような方もおられますから・・」
どのような生活をしたいのか、どのような不安があるのかは、高齢者一人一人違います。
特に、高齢者住宅に入居する場合は、生活環境が大きく変わるのですから、「他の入居者と上手くやっていけるか・・」「母は引っ込み思案だから、父は頑固なところがあるから・・」と本人、家族ともに様々な不安があって当然です。

不安や心配を相談した時に、「同じようなタイプの方もおられますよ」「それは大した問題ではありません」と説明されると、「さすがプロの方なので、色々なケースをよくご存じなのだな・・」「父よりも大変なケースはたくさんあるんだな・・」と安心するかもしれません。

しかし、 プロの事業者は「よくあるケース」「他の人も同じ」といったフレーズは絶対に使いません。
「引っ込み思案」「頑固」といっても、単なる性格のものか、うつ病や認知症などの可能性があるのかによって違うからです。家族や高齢者本人が心配していることは、そこに何かの事情やトラブルになる要因があると考えるべきです。プロの事業者であれば、「どんなことがあったのか」「どんな時にそう感じるのか」というその症状や内容について、質問を重ねます。そうでないと、その高齢者の受け入れの可否の判断や準備ができないからです。

家族は介護のプロではありませんから、父親、母親一人の状況・状態しかわかりません。その原因が性格上のものか、認知症の初期症状なのかも判断できません。ただ、「そんなタイプの人もおられますよ」「大した問題ではありませんよ」と言われると、「そうなんだ。よかった」と納得して、それ以上は何も説明しなくてよいと判断してしまいます。
高齢者介護や生活支援は「個別化」が大原則であり、このようなラベリング(人格や環境の決めつけ)や、カテゴライズ(同じような問題をまとめて分類し、一律の対応しようとすること)は、知ったかぶりをしたい、経験豊富のふりをしたい素人事業者、素人介護者の特徴なのです。

⓷ 「私たちにお任せください。ご家族の代わりに・・」
もう一つのフレーズは、「お任せください」です。
高齢者住宅は、通常のサービス・商品と違い、楽しい気持ちで探している人ばかりではありません。高齢者本人も、介護が必要になってから住み替えるとなると不安が大きいものですし、多くの家族は「自分が介護できないのが申し訳ない」という気持ちを持っています。
「私たちに、お任せください」と言われると、「介護はプロにお任せしよう・・これで安心だ・・」という気持ちになるでしょう。

しかし、これは大きな間違いです。
「介護できないのが申し訳ない」と悔やむ必要はない 🔗  で述べたように、介護サービスや高齢者住宅は、「家族介護の代行サービス」ではありません。高齢者住宅で高齢者が精神的に安定し、安心して生活するためには、家族の精神的なサポートが不可欠です。また、認知症や重度要介護状態になれば、本人の意思が確認できなくなるため、ケアプランをどうするか、医療や終末期をどうするのかを家族に相談します。高齢者住宅に入居直後は、寂しさを訴える人もいるため、「できるだけ来てあげてください」「来訪が難しければ電話をお願いします」という依頼もすることもあります。

働く介護スタッフが家族の代わりになどなれるはずがありませんし、それは高齢者住宅の仕事でもありません。 要介護状態になっても、安心して安全に生活できるだけの環境を、家族と高齢者住宅が一体となって整えていくのです。
プロの事業者は、「お任せください。ご家族の代わりに・・」などという歯の浮くようなセリフ絶対に言いませんし、逆に家族から「お任せします・・」と言われると、一番困るのです。

この「お任せください、家族の代わりに・・」という言葉が怖いのは「囲い込み」のリスクです。
本来、生活ニーズは個々人違うものですから、提供する介護サービスや医療の内容は、高齢者本人と家族が決めるべきものです。高齢者住宅事業者やケアマネジャーにできるのは、専門的見地からのアドバイスでしかありません。「高齢者本人の希望」が最優先、本人が決められない時には「家族の希望」が優先です。プロの事業者は、提供する介護サービスの内容を決めるケアカンファレンスには、必ず家族の参加を求めてきますし、状態に変化があった時には、随時家族に連絡、相談します。

しかし、高齢者に提供する介護サービスや医療の内容を、家族に相談しないまま事業者の都合、利益優先できめてしまい、家族には事後報告(もしくは報告もしない)という高齢者住宅も少なくないのです。これはサ高住や重苦型有料老人ホームだけでなく、介護付有料老人ホームでも「医療の押し売り」は増えています。そのタイプの高齢者住宅が使うのが、「お任せください」であり、それは「家族はサービスなどについてあれこれ口出ししないでください」なのです。
高齢者住宅は、素人事業者がとても多い未成熟な業界です。「プロに任せておけば安心」と考えていると、劣悪なサービスの押し付けで搾取されるだけ・・ということになるのです。

ここまで、10回に渡って「素人事業者の見極めのポイント」について述べてきました。
高齢者住宅業界は、「玉石混淆だ」と言われますが、実際は二極化しています。
つまり、高齢者住宅選びの基礎は「良い老人ホームを選ぶこと」ではなく、「プロの事業者」と「素人事業者」を見分けること、つまり「素人事業者を選ばないこと」なのです。
「大手・中小」「高額・低価格」に関わらず、「プロの事業者か、素人事業者か」の判断は共通です。 それは、「ポイント」と「コツ」を知っていれば、そう難しいことではないのです。


ここがポイント 高齢者住宅 素人事業者の特徴

 ⇒ 高齢者住宅 悪徳事業者・素人事業者の特徴は共通している 🔗
 ⇒ 「居室・食堂フロア分離型」の建物の高齢者住宅はなぜダメか  🔗
 ⇒ 「介護サービス併設で安心」という高齢者住宅はなぜダメか 🔗
 ⇒ 「介護付だから安心・快適」という高齢者住宅はなぜダメか  🔗
 ⇒ 「看取り、認知症、何でもOK」の高齢者住宅はなぜダメか 🔗
 ⇒ 「すぐに入居できます」という高齢者住宅はなぜダメか  🔗
 ⇒ 「早めの住み替えニーズ」を標榜する高齢者住宅はなぜダメか 🔗
 ⇒ 「医療は協力病院・医師にお任せ」の高齢者住宅はなぜダメか 🔗
 ⇒ 「安かろう・悪かろう」低価格アピールの高齢者住宅はなぜダメか 🔗
 ⇒ プロの高齢者住宅は絶対口にしない3つの「NGワード」

高齢者住宅選びの基本は「素人事業者を選ばない」こと

  ☞ ポイントとコツを知れば高齢者住宅選びは難しくない (6コラム)
  ☞ 「どっちを選ぶ?」 高齢者住宅選びの基礎知識 (10コラム)
  ☞ 「ほんとに安心・快適?」リスク管理に表れる事業者の質 (11コラム)
  ☞ 「自立対象」と「要介護対象」はまったく違う商品 (6コラム)
  ☞ 高齢者住宅選びの根幹 重要事項説明書を読み解く (9コラム)
  ☞ ここがポイント 高齢者住宅素人事業者の特徴 (10コラム)
  ☞ 「こんなはずでは…」 失敗家族に共通するパターン (更新中)

 




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