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「医療は協力病院にお任せ」の高齢者住宅はなぜダメか

高齢者住宅が、医療の専門領域に中途半端な知識で関わることは法的にも許されることではないが、高齢者、家族が望む医療が受けられるように支援することは大切な業務の一つ。「医療は協力病院、医師にお任せ」という高齢者住宅は、「押し売り医療」を受けるリスクが高い

高齢者・家族向け 連載 『高齢者住宅選びは、素人事業者を選ばないこと』 050


健康に見えても、ほとんどの高齢者は、高血圧や糖尿病など複数の慢性的な生活習慣病を抱えています。未病であっても、骨粗しょう症や嚥下機能の低下によって、転倒骨折や誤嚥、窒息などのリスクも高くなりますし、認知症の発症率も高くなります。医療は介護と同様に、高齢者、要介護高齢者にとって、日常的に必要なサービスの一つです。

その一方で、高齢者住宅では、法的に医療サービスを直接提供することはできません。
そのため、ほぼすべての高齢者住宅は、診療所、歯科診療所、病院などの「協力病院」を指定しています。「病院やケガの時には協力病院があるので安心です」「医師や協力病院にお任せしています」と聞くと、病気やケガをしても安心だと思うかもしれません。
しかし、「医療は、協力病院にお任せ・・」としか説明しない高齢者住宅は注意が必要です。

それは、若年層の受ける「医療」と、高齢者の受ける「医療」の目的は違うからです。
私たちは病気やケガを治療するため病院に行きます。しかし、高齢者の場合は、単に病気を直せばよいというものではありません。それは医療行為によって、要介護状態の悪化につながったり、認知症を進行させたりといった、「生活への悪影響」が大きいからです。
病院は、医療や看護の機能は整っていますが介護機能は脆弱です。
ベッドの上に座ったままでの食事、「転倒すると危ないから・・」とオムツをつけられ、それまで、食事も排泄も一人でできた要介護1の高齢者が、1〜2週間という短期の入院で、要介護3、4と一気に重度化し、排泄も食事も困難となることは、よく知られています。

本来、入院や治療は、その年齢や生活行動(ADL)に対する悪影響も含めて、総合的に考えるべきなのですが、「高齢者の生活」「介護への影響」に詳しくない医師は、若者に対するのと同じように「ちょっと肝臓の数値が悪いので、しばらく入院して検査しましょう」と病気の治療だけを優先して考えがちです。「医療を優先する医師はダメ」という単純な話ではありませんが、高齢者は、その「ちょっとの入院」が、生活レベルを大きく変えてしまう可能性が高いのです。

高齢者住宅に入れば、医療費が2倍、3倍になる現実

更に問題は、一部の高齢者住宅では「医療の押し売り」が行われているということです。自宅にいる時は「月に二度ほど内科で薬をもらう」という程度だったのに、高齢者住宅にはいると、内科、整形外科、精神科、歯科、眼科などの複数科の訪問診療を受診させられるところもあります。
もちろん、自宅にいる時には気づかなかった疾病があるのかもしれません。
しかし、ほとんどの入居者を対象に、ほぼ強制的というのは、明らかに不正です。

その多くのケースで、本人や家族に対して、診断内容や治療方法の説明が丁寧に行われないままに、一方的に治療方法が決められていきます。本人や家族の選択権はなく、大量の薬が処方されたり、不必要な入れ歯の作り直しを強制されたりといったことも起きています。また、入院の必要がないのに、高齢者住宅に関連する病院のベッドの都合で、入退院が行われるケースもあります。
「協力病院」の名のもとに、高齢者住宅の入居者をクイモノにしているということです。

「協力病院がある、かかりつけの診療所・医師がいる」ということは、安心できる反面、高齢者本人、家族は医師や病院を選べないということです。
このような不正な押し売りを行う医師と高齢者住宅は結託しており、「過剰な医療は必要ない」と、高齢者住宅の提携する医師の訪問診療や入院治療を拒否すると、「それなら…」と退居をちらつかせるところもあると言います。このような事例は、有料老人ホーム、サ高住など制度類型を問いませんが、低価格の高齢者住宅に多く見られる手法です。この家賃や食費などを低価格に抑えて入居者を集め、都合の良い医療や介護を押し売りすることで、利益を得るという手法で「囲い込み」と呼ばれています。
医師としてのプライドも、高齢者住宅としての専門性もない、利益ありきの違法な「押し売り」サービスですから、その質も推して知るべき・・でしょう。

優良な高齢者住宅は、優秀な在宅系医師と連携している

高齢者・要介護高齢者にとって、医療は介護と同様に、日常的に必要となる重要なサービスの一つです。
それは高齢者住宅の選択において、重要なポイントの一つだと言えます。
要介護高齢者を対象とした高齢者住宅の協力病院、協力診療所は、以下の図のように「高齢者住宅かかりつけ医(診療所)」と「総合病院(協力病院)」に分かれています。日常の健康管理や診療、薬剤の検討などは、かかりつけ医が行います。基本的に「内科医」または「総合医」です。
一時的な入院加療や専門科目による治療が必要な疾病については、かかりつけ医が総合病院と連携をして治療を行います。


もう一つは、高齢者住宅事業者の立ち位置です。
高齢者住宅の事業者やケアマネジャーが、医療の専門領域に中途半端な知識で関わることは法的にも許されることではありません。また、どのような医療を受けるのかは、本人やその家族が決めることですから、高齢者住宅事業者が「あの病院はダメだ」「かかりつけ医を変えてください」などと、直接的に関与することではありません。

ただ、高齢者、家族が望む医療が受けられるように支援することは、高齢者住宅事業者の大切な業務の一つです。看取りに対する本人やその家族の希望を、丁寧に聞き取り、それを医師や看護師に伝え、望む医療が受けられるように支援します。
また、優良な高齢者住宅は、必ず、本人や家族に丁寧に説明できる優秀な在宅医師と連携しています。医師は診療内容や投薬内容、副作用(眠気、ふらつきなど)を丁寧に、本人や家族、高齢者住宅の看護師や介護スタッフに伝えます。治療に複数の方法がある場合は、その違いやリスクを説明し、本人や家族が納得して治療に当たれるように配慮します。本人や家族の承諾なしに、強制的に診療を受けさせるというようなことは、絶対にしません。

優良な高齢者住宅は、かかりつけ医や薬剤師などと定期的に会議や勉強会を行ったり、看取りの方向性や家族の面談の機会を設けています。 高齢者住宅は、医療サービスを直接提供できませんが、「協力病院、医師にお任せ」では、その責任を果たしていることにはならないのです。


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