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介護休業取得のポイント ~分割方法と二つの選択肢~

介護休業は「親の介護をするための休業期間」ではない。それがわからず家族が介護を行ってしまうと「子供が介護しないと親の生活が維持できない」「仕事を辞めるしかない」という「介護離職推進ための介護休暇」になってしまう。介護球場所得のポイントと二つの選択肢について整理する

高齢者・家族向け 連載 『高齢者住宅選びは、素人事業者を選ばないこと』 059


介護休業の取得推進の目的は、「介護休業取得率を上げる」ということではありません。
また、介護休業は、育児休業とは違い「家族や子供が親の介護をするための休業期間」ではありません。
それがわからないと、介護休暇を取得できたとしても、自分で介護を行ってしまい、それが一ヶ月、二ヶ月続くと、「自分が介護しないと親の生活が維持できない」「結局、仕事を辞めるしかない」という「介護離職推進ための介護休暇」になってしまいます。
介護休暇・介護休業の目的は、「介護と仕事の両立」と言われていますが、それも少し違います。介護休業の目的は「親の介護環境・生活環境を集中して整えることで、家族や子供はできる限り従前と同じ生活を行えるようにすること」です。
ここでは、介護休業を取得するにあたり、留意すべきポイントについて整理します。

介護休業の分割方法と使い方
まず一つは、介護休業の使い方です。
介護休業は、「育児介護休業法」という法律に定められた制度であり、労働者の権利です。
① 介護休業の対象となる労働者の範囲 
② 介護休業の対象となる家族の範囲
③ 介護休業の日数(93日)及び分割取得(3回まで)
④ 介護休業の申請方法と申請事項

などが法律で定められており、対象となる労働者から申請があった場合、事業者は介護休業を与えなければなりません。

【外部リンク】 介護休暇とは?介護休業との違いや内容を押さえておこう 

介護休業は、93日間、つまり最長3ケ月連続して休むことができるのですが、従来は期間の長短に関わらず一度しか認められていませんでした。それが平成29年の改正で、3回まで分割して取得することが可能となりました。つまり、一度に93日連続して利用しても良いし、1.5ケ月×2回、1ケ月×3回と分割して取得しても良いのです。「他の兄弟と連携しながら交代で介護休業を取る」という人もあるでしょうから、それぞれの事情に合わせて日数・回数を検討すればよいのですが、基本的には二回に分割しての取得が一般的であると考えています。
それは、「軽度要介護の介護環境・生活環境」と「重度要介護になった時の介護環境・生活環境」は変わるため、途中で見直しが必要になるからです。

ただ、同じ二回分割としても、要介護状態や生活環境整備によって分割日数のイメージは変わります。
それをイメージにしたのが、下記の図です。
例えば、要支援~軽度要介護で自宅での生活環境整備を前提とする場合は一回目の介護休業が1ヶ月程度。中度~重度要介護状態になった時の介護体制見直しや老人ホーム入居検討のために、二回目の介護休業が採れるよう2ケ月程度を残しておくのが良いでしょう。
対して、軽度~中度要介護で、自宅で生活し続けられるのか高齢者住宅へ入居するかを検討する場合、一回目が1ヶ月半~2カ月と長め、二回目が1ケ月~1ケ月半程度。
また、中度~重度要介護で、自宅で生活するのが困難で高齢者住宅や老人ホームへの入居を前提とする場合は、一回目が2ケ月程度とし、「老人ホームでの生活が予想していたのと違う」「民間の老人ホームが倒産した」などと言った不測の場合に対応できるよう、一ヶ月程度残すのが良いでしょう。
「自宅介護+ターミナルケア」など医学的に余命いくばくもないことがわかっており、亡くなるまで兄弟姉妹で交代しながら介護を行うなど特別な事情がない限り、二回の分割取得が基本です。

ただし、ほとんどの人が介護休業取得や介護体制構築は未経験ですし、要介護状態や生活環境は一人一人違いますから、実家に戻ってからどんな生活になるか予想することはできません。そのため、初めての介護休業の場合、1ケ月半~2ケ月程度の少し長めの申請を行い、実際に生活が安定すれば期間を短縮するという弾力的な取得方法が望ましいと言えます。

自宅で生活できるか、高齢者住宅・老人ホームを探すか

もう一つは、「自宅で生活できるか」「高齢者住宅・老人ホームを探すのか」の見極めです。
介護休業は、要介護者(親など)の生活環境・介護環境を整えることが目的ですが、それは大きく「住み慣れた自宅(実家)で生活を続けるのか」「介護機能の整った老人ホーム・高齢者住宅に住み替えるのか」という二つの選択肢に分かれます。その選択において留意すべき3つのポイントを整理します。

① 「自宅で生活できるか」「老人ホーム・高齢者住宅が良いか」
「自宅で生活するのか」「老人ホーム・高齢者住宅に転居するのか」、それを最終的に選択するのは本人です。ただプロの目から見て、「自宅で生活し続けられるか、高齢者住宅・老人ホームで生活する方が良いのか」と相談された場合、その判断基準の一つとしてお話するのが「ポイント介助で生活が維持できるか否か」です。それは「要介護〇以上」ではなく、「認知症による要介護」なのか「身体機能低下による要介護」なのかによって変わってきます。

例えば、認知症の場合、中核症状として場所や時間、人が分からなくなる見当識障害、「食事をしたことを忘れる」といった記憶障害、更には、認知症進むと被害妄想や暴力・暴言、徘徊といったBPSD(周辺症状)もでてきます。入浴や食事などの行為ができても、「脱衣室で裸になったままウロウロ」「食事中であることを忘れてウロウロ」「真夜中に寝間着のまま家を出ていく」など、想定できない行動が多くなるため、継続的な見守りや声掛けが必要になります。「認知症は自宅生活の継続は無理」というわけではありませんが、中程度以上の認知症になると独居生活は難しいのが現実です。

これに対して、身体機能低下の高齢者の場合、要介護状態がある程度重くなっても、「調理ができなければ調理介助や配食サービス」「一人で入浴ができなくなれば訪問介護・通所介護」と、在宅介護サービスの利用を組み合わせながら生活をすることができます。
ここで判断の一つのポイントになるのが「排泄」です。排泄は食事や入浴と違い、事前に排泄リズムを完全に想定することができません。お腹の調子が悪く「何度も便がでる」という日もあるでしょう。「排泄介助の訪問介護」で、朝8時、12時、16時・・・と時間決めていても、自分でトイレにいくことができなくなれば、下着やオムツが汚れた不衛生で気持ちの悪い状態のまま何時間もいなければならないということになります。ポータブルトイレなどを利用しても、一人で排泄が難しくなれば、快適な独居生活は難しくなります。

② いつ判断するのか、どこで判断するのか
2つ目のポイントは、この「自宅で生活できるか」「老人ホーム・高齢者住宅が良いか」を、いつ・どのように判断するのかです。
脳梗塞などで重度の麻痺が残ったり、認知症が進み自宅で生活するのは難しいと判断した場合は、介護機能の整った老人ホームや高齢者住宅を探すことになります。逆に、本人が自宅で生活したいと希望し、「入浴だけ見守りが必要」「買い物だけが難しい」といったポイント介助だけで、十分に自宅で元の生活が継続できるケースもあります。
難しいのが、「本人は大丈夫だと言っているが、家族から見れば不安…」という判断がつかないケースです。それを見極め、考え、覚悟するというのも、介護休業中の大切な目的の一つです。

この場合、まずは自宅で介護サービスを利用しながら生活することをお勧めします。
ここで大切なことは、介護休業を取った家族・子供は、介護には手を出さずに生活を見守るということです。親は子供がいてくれると、「あれしてほしい、これしてほしい」と依存度が高くなってくるのですが、介護休業中に介護をすると「誰か家族が同居しないと生活が維持できない」という本末転倒の事態に陥ります。「私は一ヶ月しか休めないのよ…」と優しく伝え、「一人になればどんなことが困るのか…」を一緒に考えましょう。
もう一つ重要なことは、家族が「一人暮らしは難しい」「リスクが高い」と判断しても、「老人ホームに入った方が安心」と強引に勧めてはいけないということです。
反発から感情的な喧嘩になったり、本人が納得しないまま強引に老人ホームや高齢者住宅に入ると、認知症が進んだり、他の入居者とトラブルを起こして退居を求められることもあります。「私の家の近くのホームだと、毎日会いに行けるのだけれど…」「私たちも安心なんだけどね…」と親のことを大切に考えているという思いを伝えるとともに、「将来のこともあるし、探すだけ探してみれば…見学して嫌だったらやめれば良いよ…」と、最終的には親が判断すればよいというスタンスで進めてみましょう。

もう一つは、「高齢者住宅・老人ホームを探し始める期間」です。
自宅に戻り、一週間、二週間経過すれば、「自宅で生活できるか」「解決できる問題か」「解決できない課題があるか」はある程度見えてきます。また本人も、「一人で大丈夫」と言っていたものの、「やはり、一人では不安だ…」ということがでてきます。ただ、本人が固辞しているのにパンフレットを請求してそれが目に触れると、反発を受けることになりますから、「老人ホームの転居」を前提にしなくても、きちんと承諾を得て探し始めたいものです。できるだけたくさんの老人ホームを比較して選ぶ必要があるため、パンフレットの比較や見学など、少なくとも選択・申込までに1ケ月程度、その後入居までには2週間程度は必要になると考えておいた方がよいでしょう。

③ 「独居よりも老人ホームの方が安心・快適」という落とし穴
「一人暮らしの親の介護環境・生活環境の整備」において、家族が犯してしまう最大の失敗は、「高齢者住宅・老人ホームに入った方が安心」「老人ホームに入れば介護問題が解決する」と安易に考えてしまうことです。「介護スタッフが24時間365日常駐しているし、定期巡回や生活相談もあるから、自宅で一人暮らしをするよりも安心じゃないか…」と思うでしょうが、実はこれは全くの間違いです。
そこには、二つの理由があります。

一つは、同じ老人ホーム・高齢者住宅といっても、「要支援~軽度要介護向け住宅」と「中度~重度要介護向け住宅」は基本的に違うものだということです。
これは、現在の老人福祉施設が、要介護状態によって「ケアハウス」「養護老人ホーム」「特別養護老人ホーム」などに分かれていることを考えるとわかります。それぞれ、建物設備設計も介護システムも根本的に違います。「要支援~要介護1」程度の時に、その生活に合わせた高齢者住宅に入居すると、中度~重度要介護状態になった時に、もう一度住み替えが必要になります。要支援~軽度の時に入居して、そのまま重度要介護になっても生活し続けられる老人ホーム・高齢者住宅はありません。

もう一つは、民間の老人ホーム・高齢者住宅は玉石混淆で素人事業者が非常に多いということです。ほとんどの高齢者住宅は「介護が必要になっても安心・快適」と標榜していますが、適切な介護サービスが提供できる体制が整っているところは全体の半数以下です。「自宅よりも高齢者住宅に入った方が安心・快適」「元気な時に入居して介護が必要になっても安心・快適」「認知症も医療対応も何でもOK」「今なら、すぐに入居できます…」などと、言っているところは素人事業者です。
特に、過度な低価格化路線のところは注意が必要です。素人事業者の老人ホームや高齢者住宅に入居すると、適切なサービスが受けられないだけでなく、介護スタッフが足りないからと毎日朝3時半に起こされたり、夕方4時半頃に夕食を食べなければならないところもあります。また「入浴中に放置され溺死」「他の入居者に殴られて死亡」といった悲惨な事故・事件も発生しており、「こんなはずではなかった…」「とんでもないところに入居させてしまった…」「でも、もう自宅に戻れない…」と頭を抱えている家族は少なくありません。

もちろん、そうでないプロの高齢者住宅・老人ホームもたくさんあります。
ただ、「安心」という反面、自宅で過ごしていたようにすべて自由気ままというわけではなく、集団生活という側面も強くなります。朝・昼・夕と「栄養管理された食事」は食べられますが、「好きな時間に好きなものを食べる」ということはできません。外出やお酒、たばこなども一定の制約がありますし、他の入居者とトラブルになる可能性もあります。
自宅で生活できる間は自宅で生活し、ポイント介助で対応できない24時間継続的な介護が必要になる状態になれば、介護機能の整った中度~重度要介護高齢者専用の老人ホーム・高齢者住宅に入居すると言うのが、生活環境整備の基本的な考え方です。漠然と「老人ホームに入ってくれた方が安心」と押し付けると必ず失敗するのです。



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