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【ケース2】 「介護が必要になっても安心・快適」はイメージと正反対

一人暮らしの叔母が転倒・骨折。高齢者住宅の紹介事業者から「介護が必要になっても訪問介護併設で安心」「介護付とほとんど同じですよ」と説明を受けてサ高住に入居したが・・・・。

高齢者・家族向け 連載 『高齢者住宅選びは、素人事業者を選ばないこと』 055


入居者・・・叔母(80代前半)、車いす利用、要介護1⇒要介護4

60代で夫を亡くし、一人暮らしをしていた叔母(亡父の妹)が、自宅で転倒、大腿骨を骨折し、車いす生活となりました。頭はしっかりとしているのですが、リュウマチなどの持病もあり、食事や入浴などが難しくなっていました。叔母に子供はなく、一人暮らしは不安だということで、入院していた病院から、地元の「高齢者住宅の紹介センター」を紹介され、サービス付き高齢者向け住宅に入ることになりました。

私自身も夫の母の介護があり、月に一度、二度程度訪問する程度で介護はできません。ただ、叔母はずっと働いていたので年金額も多く、預貯金もありました。これから要介護が重くなることを考えると「介護付の方が良いのでは」と思っていたのですが「安いところの方が良い・・」という叔母の意見や、紹介センターやサ高住の営業の方も、「訪問介護併設で介護が必要になっても安心」「24時間 ヘルパー常駐で介護付と変わらない」という説明を受け、新しく開設されたサービス付き高齢者向け住宅に入居することになりました。
それほど頻繁に交流があったわけではありませんが、他に親族がいないということもあり、姪の私が紹介センターの人の説明を一緒に聞いて、保証人となりました。しかし、実際の生活は「介護が必要になっても安心・快適」という説明・イメージとはかけ離れたものでした。

叔母は、要介護1でトイレや食事は自分でできますが、大腿骨を骨折し、足の筋肉が少ないため、ベッドから車いすに移るのが不安定で介助が必要です。
しかし、トイレに行きたくなった時にコールをしても、「ちょっと待ってください」というだけで、10分、20分は待たされてしまいます。叔母も「そう思ってだいぶ前に連絡しないと、トイレに行けない・・」と笑っていましたが、間に合わずに何度も失敗することがあったようです。
ようやく来られたスタッフの方に聞くと、「介護付きではないので、ケアプランに指定された時間通りにしか介護できません」「時間の中で働いているので、それ以外の介助のコールは待っていただくことになります」とのことでした。その時は制度のことが詳しくわからなかったので、「入居時には、介護付きと同じだと聞いたのですが・・」と恐る恐る質問すると、「他の家族の方からも文句言われるのですが、現場を良く知らない営業さんがそう言っているだけで、実際は違うんですよ」「でも一人暮らしよりはマシでしょ・・」と投げ捨てるように言って出ていかれました。

叔母は自分では動けないため、食事時間以外はずっと部屋に閉じこもることになりました。
自宅にいるときはデイサービスに楽しく行っていたので、「デイサービスでも利用すれば・・」と言ったのですが、「デイサービスを利用すると、困った時にすぐに来てもらえなくなる」とのことでした。また、叔母の部屋にあったケアプランを初めて見せてもらうと、3時間置きに30分~1時間の訪問介護が来ることになっていましたが、私が訪問しているときに、ヘルパーさんが来られたことは一度しかなく、それも「お変わりないですか?」「トイレ大丈夫?」と言うだけで、忙しそうにすぐに帰っていかれました。(私はサ高住の保証人であり、介護サービスの契約は本人がサインをしていました)

また、入居時には「サービス付き高齢者向け住宅は安い」と説明を受けていましたが、そこには介護サービスの費用は含まれておらず、またスタッフコールのたびに加算されるような価格設定となっていたため、実質的には介護付有料老人ホームと同程度の支払いとなりました。叔母には、「もう少しきちんとした介護のところを探そうか…」と提案したのですが、気持ちが弱っているのか「今さら他のところに動くのも大変・・」とのことで、そのままになってしまいました。

それから半年たったある日、叔母が一人でトイレに行こうとして転倒、再び骨折し、入院となりました。
その結果、ほとんど寝たきりの状態となり、要介護4となってしまいました。要介護4であれば特養ホームへの入所ができるということを聞いていたので、退院を待って、ユニット型個室の特養ホームに入所することができました。そのサ高住の営業担当者からは、転倒時の説明はまったくなく、「要介護4になったので、これまでよりもたくさん介護サービスが使える」と、戻ってくるのが当然かのように言われましたが、これまでの疑問や入居時の説明の違いについて質問すると、舌打ちをして出ていかれました。

特養ホームの相談員の方に質問すると、
① サ高住の訪問介護併設と、介護付や特養ホームは介護サービスの内容が全く違うということ。
② 訪問介護だけでは、臨時の排泄介助や移動介助はできないこと。
③ 併設の訪問介護サービスしか利用させないのは「囲い込み」という不正であること。
など、丁寧に説明を受け、ようやく制度や介護サービスの内容について理解することができました。

「介護が必要な高齢者は朝3時に起こされるサ高住」というニュースを見て驚きましたが、そう言えば、訪問すると一階の食堂でぐったりしている車いすの高齢者が数名おられたことを思い出しました。
親族から見れば、ほとんど詐欺であり、あまりにも腹立たしかったので行政に訴えようかと思いましたが「契約上はそうなっているし、書類上は整っている。行政もわかっていて目をつぶっているだけだから言っても無駄ですよ・・」と言われて、家族は何を信頼すればよいのか・・・と愕然としました。

【何がダメだったのか・・どうすればよかったのか・・】

【ケース1】病院から紹介された介護付有料老人ホームに入居したが・・・ 🔗 で述べたように、高齢者の退院を促進したい病院と、入居者を確保したい高齢者住宅の利害は一致しています。
ただ、病院の相談員が直接紹介すると、トラブルになるため、最近では多くの病院で退院促進ツールとして「高齢者住宅の紹介事業者」を使っています。紹介業者の中には、事前に厳しく調査したり、要介護状態や希望をしっかり聞き取って紹介してくれるところも、ごくごくまれにあるのですが、基本的にその仕組みは「営業のアウトソーシング」「バックマージンビジネス」ですから、特に、病院と提携しているところは「とりあえず、どこかに押し込む」「紹介料の高いところを紹介する」ということになります。もちろん、話を聞いて高齢者住宅への入居以外に適切な方法があったとしても、提案してもらえません。

「介護サービス併設で安心」の高齢者住宅はなぜダメか 🔗 で解説したように、相談ケースの対象者は、トイレなど日常生活の移動に介助が必要になるため、区分支給限度額方式のサ高住や住宅型有料老人ホームでは対応できません。また、親族が姪しかいないため、将来重度要介護状態になった時の「介護サービスの充実」「終の棲家」を求めているのですから、自立~要支援程度の高齢者にしか対応できないサ高住を勧める時点で、悪徳な紹介業者だといって良いでしょう。

それは高齢者住宅事業者も同様です。入居時の時点で、訪問介護サービスだけでは、この入居者の介護ニーズに対応できない、生活を支えられないことはわかっているはずです。それでも、「24時間ヘルパー常駐だから安心・・」「介護付と同じようなものですよ・・」という曖昧な説明で、制度理解が不十分な高齢者や家族に、介護サービスが充実しているかのように思い込ませているのです。
「表面的には安く見せかけて、実態はそれ以上の費用がかかる」ということも併せて、「高齢者・家族の理解不足につけ込んだ」ということになるでしょう。

高齢者住宅は、毎月20万円近くのお金を支払う高額商品だけでなく、生活の根幹となる「住宅サービス」です。劣悪な高齢者住宅に入居すると生活が破綻するだけでなく、生命に関わる問題にも発展します。
しかし、現行制度の矛盾、不公平な契約だけでなく、指導監査体制も整っていないため、事業者主導の不正が野放しになっているのが現実です。また、家族が契約不備や実際にサービスが提供されていないことなどを証明することは難しいことや、要介護状態になってから他の高齢者住宅に転居することは本人への負担も大きいため、このような高齢者住宅に入居すると、多くの場合、「泣き寝入り・・」となってしまうのが現実です。

ただし、「ここがポイント 素人事業者の特徴」🔗 でのべたように、最低限の知識があれば、このような素人事業者、悪徳事業者を見分けることはそう難しいことではありません。介護問題は突然発生することが多く、本人だけでなく、家族が混乱することが多いのですが、「老人保健施設」を利用するなど、心と時間に余裕をもって、じっくりとプロの高齢者住宅を選ぶということが必要です。



「こんなはずでは・・・」 高齢者住宅選びに失敗した家族の声を聴く

  ⇒ 【F053】 高齢者住宅選びに失敗している家族に共通するパターン 🔗
  ⇒ 【ケースⅠ】 病院から紹介された有料老人ホームに入居したが 🔗
  ⇒ 【ケースⅡ】 「介護が必要になっても安心・快適」はイメージと正反対  🔗
  ⇒ 【ケースⅢ】 生活保護受給者をクイモノにする悪徳高齢者住宅 🔗
  ⇒ 【ケースⅣ】 高額の入居一時金を支払ったのに ~要介護対応の不備~  🔗
  ⇒ 【ケースⅤ】 高額の入居一時金を支払ったのに ~トラブル退居~ 🔗
  ⇒ 【ケースⅥ】 「協力病院」の医師に無理やり寝たきりにされた父  🔗
  ⇒ 【ケースⅦ】 不正を訴えても「自己責任でしょ・・」と無関心の役所🔗
  ⇒ 【ケースⅧ】 家族が住む近くに高齢者住宅を探せばよかった  🔗
  ⇒ 【ケースⅨ】 意見や希望を上手く伝えられずにストレスに 🔗
  ⇒ 【ケースⅩ】 月額費用の説明に対する誤解がホームへの不信感に 🔗

高齢者住宅選びの基本は「素人事業者を選ばない」こと

  ☞ ポイントとコツを知れば高齢者住宅選びは難しくない (6コラム)
  ☞ 「どっちを選ぶ?」 高齢者住宅選びの基礎知識 (10コラム)
  ☞ 「ほんとに安心・快適?」リスク管理に表れる事業者の質 (11コラム)
  ☞ 「自立対象」と「要介護対象」はまったく違う商品 (6コラム)
  ☞ 高齢者住宅選びの根幹 重要事項説明書を読み解く (9コラム)
  ☞ ここがポイント 高齢者住宅素人事業者の特徴 (10コラム)
  ☞ 「こんなはずでは…」 失敗家族に共通するパターン (更新中)



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