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どちらを選ぶ ・・ 家族で探す? 紹介業者に頼む?


激増している「老人ホーム紹介業」。不動産業と老人ホーム紹介業は似ているが、法的・制度的にはまったく違うもの。老人ホーム紹介業者は、「中立・公平」ではなく、事業者の「営業のアウトソーシング」でしかない。家族に最も適した高齢者住宅を選ぶことができるのは、家族しかいない。

高齢者・家族向け 連載 『高齢者住宅選びは、素人事業者を選ばないこと』 016


私たちが、進学や就職で、学生マンションや賃貸アパートを探す場合に頼りにするのが、仲介をしてくれる不動産会社です。そのため、有料老人ホームなどの高齢者住宅を探す場合でも、「紹介業者」を利用する人は多いようです。
しかし、利用する場合、「不動産仲介業」と、「高齢者住宅紹介業」とは、法的にも制度的にも、まったくの別物だということを、理解しておかなければなりません。


不動産仲介業と老人ホーム紹介業の法的役割の違い

一般の不動産取引(売買・賃貸借)の仲介の基礎に、宅地建物取引業法という法律があります。
仲介業を行うためには、都道府県知事に申請し、免許を受けなければなりません。宅建業者であっても、取引不動産の内容を説明する人は「宅地建物取引士」という国家資格に合格する必要があります。
この資格は、合格率が15%~16%程度という、なかなか難易度の高いプロフェッショナルな資格です。仲介を行う宅建業は都道府県知事の認可(5年毎に更新)を受けるだけでなく、説明前には宅地建物取引士であることの証明書を入居希望者に提示しなければならないという厳しい規制です。
それは、不動産取引は高額な取引になることや、実際に引っ越しをして住んでみると「説明時に聞いた話と違う…」というトラブルが多いからです。

この仲介者は、何よりも正確性・中立性を求められます。
そのため、仲介料・仲介料は、家主・オーナー側も入居者側も、どちらも支払わなければなりません。
双方にどのような書類を提示し、何を説明しなければならないかも厳しく定められています。物件の内容について「家主・オーナーから聞いた話をそのまま、入居希望者に伝える」というのは不十分で、家主・オーナーからの情報が正しいか否かを調べて、判断する義務は仲介業者にあります。
仲介者が、事実と違う事項を告げたり、必要な事項を説明しなかったりすると、法的な刑事罰に問われたり、資格停止・はく奪になるほか、高額な損害賠償を求められることもあります。


これに対して、現在の老人ホーム紹介業には、法律も資格も免許もありません。
法体系の規制がなく、介護の知識や経験が何もない人でもすぐに始められます。もし説明や内容に虚偽や間違いがあっても、紹介業者は責任を取る必要はありません。

何度も実際に足を運んで、事業者だけでなく入居者からも聞き取りを行い、「あの紹介業者に認められると優良事業者の証」と言われるところもあります。入居後も、「何か問題はありませんか?」「困ったことはありませんか?」と、紹介した高齢者や家族にアンケートを取っているところもあります。ただ、このような手間のかかることをやっている紹介業者は、ごく一部で片手で数えるほどもありません。

その業態、立場も、不動産仲介業とは全く違います。
不動産仲介業の場合、仲介手数料は、その金額によって上限が決められています。
これに対して、高齢者住宅の紹介業者は「相談料、紹介料無料」ですが、規制がないため高齢者住宅の事業者から、一人あたり数十万円、ときに数百万円と高額の紹介料を得ています。このように、そもそも、高齢者住宅の紹介業は中立的な立場にはないのです。


残念ながら、実際に話をしていても、ここまで述べてきたような「介護付と住宅型の違い」も「サ高住と有料老人ホームの違い」も、何も知らない、素人紹介業者が大半です。中には「ご利用者の立場で…」「中立・公正名立場で…」と言いながら、大手老人ホーム企業が筆頭株主で、実質的に営業の出先機関のようなところもあります。
それは当然のことで、その仕組みをみると、高齢者住宅の紹介業は「仲介業」ではなく、「高齢者住宅の営業活動のアウトソーシング」なのです。
それを隠して「中立・公平」としているところに、問題があるのです。


なぜ、高齢者住宅・老人ホーム選びは、自分ですべきなのか・・

紹介業者は、基本的に契約している高齢者住宅しか紹介しませんから、その選択の幅が狭くなります。
また、どうしても、その性格上、「その高齢者・家族に合った高齢者住宅」よりも、「紹介料の高いところ」を勧める紹介する、「どこかに押し込む」ということになります。
また、優良な事業者は、高額な紹介料を支払って紹介業者には頼まなくても、入居者を集めることができます。逆に人気のないところは、高い紹介料を設定することになります。
どっちに転んでも、玉石混淆の紹介業者を利用するのは、リスクが高いのです。

最大の問題は、「紹介制度の不備」ではありません。
高齢者住宅選びも、高齢者住宅での生活も、ほとんどの家族、高齢者は初めての経験です。
何もわからないところからスタートします。それが当然です。
「高齢者住宅はよくわからない」「時間がないから」と言って紹介業者に頼み、「あなたの希望なら、ここが良いですよ…」と、紹介されて入居をしてしまうと、他の事業者との比較が全くできないだけでなく、「高齢者住宅とはどんなサービスなのか」「転倒やトラブルへの対応力」も知らないままに、入居することになります。

特に、高齢者住宅業界は、まだ新しい業界であり、玉石混淆から二極化に向かいつつある過程です。
厳しい見方をすれば、玉よりも石の素人事業者が多い業界です。
だからこそ、「高齢者住宅選び」という過程の中で、しっかりとその事業特性やリスクについて勉強し、信頼できる事業者を納得して選ばなければならないのです。高齢者住宅選びの過程は、「良い高齢者住宅を選ぶ」ということだけでなく、家族が高齢者住宅をよく知るための大切な勉強の場所なのです。

「子供が介護できないのが申し訳ない」などと考える必要はまったくありません。
しかし、そのためにも、家族が親の生活を全力でサポートするためには、家族が「高齢者住宅での生活」を理解し、相談員やホーム長などの管理者とじっくりと話をして、色々な話をして、その人となりを見極めなければならないのです。
そうして選んだ高齢者住宅は、「こんなはずではなかった…」と後悔することはないはずです。


「どっちを選ぶ?」 高齢者住宅選びの基礎知識 

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高齢者住宅選びの基本は「素人事業者を選ばない」こと

  ☞ ポイントとコツを知れば高齢者住宅選びは難しくない (6コラム)
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