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【R 16】 感染症・食中毒の発生・蔓延

管理者・リーダー向け 連載  『介護事業の成否を決めるリスクマネジメント』 No 16

高齢者住宅は、様々な人が出入りするため感染症・食中毒が発生しやすく、入居者は抵抗力が低下しているため、蔓延、重篤化しやすいという特性がある。リスクマネジメントを基礎とした日々の業務、小さな努力の積み重ねによる、発生予防、拡大予防策の検討が不可欠。



インフルエンザやノロウイルスは、毎年のように流行しますし、数年に一度は大流行します。
亡くなる方のほとんどは、免疫力、抵抗力の少ない幼児や高齢者です。

介護保険施設、高齢者住宅は、高齢者・要介護高齢者が集まって食事やレクレーションを行うことや、浴室や食堂、エレベーターなど全員が利用する共用部が多いこと、更には、家族訪問、介護スタッフ・関連業者など外部からもたくさんの人が出入りすることから、感染菌・ウイルスが入り込みやすく、また一気に蔓延、拡大しやすいという特性を持っています。
その発生を完全に防ぐことは、困難だといって良いでしょう。

食中毒発生から見る事業者の責任・リスク

まずは、食中毒から見ていきましょう。
ノロウイルスや腸管出血性大腸菌(O157)など、様々な種類の食中毒が発生しています。

食中毒によって入院したり、最悪の場合、それが原因で入居者が亡くなるケースもあります。
その場合、食事サービスの提供・契約方法によって、法的責任の所在は変わってきます。

介護保険施設や有料老人ホームでは、入居者と高齢者住宅との直接契約で食事を提供しています。
この場合、入居者・家族に対して、その損害の賠償を行うのは高齢者事業者です。
栄養管理・調理などを外部の給食会社に、業務委託している場合は、給食業者に対して、高齢者住宅事業者が受けた損害(二次的損害)を訴求することになりますが、それは事業者間の話です。
これに対して、サービス付き高齢者向け住宅の場合は、入居者と給食業者や、併設レストランとの個別契約というのが一般的です。この場合、高齢者住宅は、契約上、無関係ですから、法的責任も負いません。

しかし、入居者とレストランや給食業者との個別契約であっても、「法的責任がないから、食中毒は高齢者住宅には関係ない」という話ではありません。
最近は、食中毒に対する社会的関心は高まっており、テレビや新聞などマスコミでも大きく報道されます。高齢者住宅で集団食中毒が発生した場合、名前がでるのはその高齢者住宅です。
「食中毒が発生した高齢者住宅」「衛生管理ができていない」というイメージを払拭することは簡単ではなく、その後の入居者募集、介護スタッフ募集に大きな影響を及ぼします。

また、食中毒が発生すれば、そのレストランには、少なくとも数日間の業務停止命令が出されますから、その間、入居者に食事を提供することができなくなります。
特養ホームや病院など、業務提携で給食業者が入っている場合、複数の給食業者間での倒産や食中毒などの緊急時の取決めがあるため、すぐに他の業者が対応してくれますが、テナントの個別のレストランの場合、そのバックアップ体制がとられていないところが少なくありません。
そのため、突然「今日の夕方の食事はどうするの?」「誰がつくるの?」ということになるのです。

感染症発生からみる事業者の責任・リスク

もう一つは感染症です。
インフルエンザだけでなく、ノルウェー疥癬などの感染性の強い皮膚病もあります。O157やノロウイルスは、毒性の飲食物を口にすることで発生する食中毒ですが、排せつ物や吐瀉物から人から人の二次感染もある、感染力の強い感染症でもあります。

感染症は、食中毒とは違い、その感染経路の特定が難しいことから、「感染症が発生したから・・・」と言って、すぐに事業者の責任が問われることはありません。
しかし、入居者の生活上の事故の発生🔗で述べた、生活上の事故と同じように、高熱を発したり、嘔吐したりする高齢者が多数発生したにもかかわらず、適切な対策を取らず、また行政への必要な報告を怠った結果、高齢者住宅内で、感染が拡大した場合、損害賠償や行政処分を受ける可能性があります。

また、食中毒同様に、責任の有無に関わらず、事業全体にかかるリスクは小さくありません。
特に、インフルエンザ、ノロウイルスなどの感染症は、入居者だけがかかるのではありません。働くスタッフが感染し、ダウンすることになれば、適切な介護看護サービスが提供できなくなります。更に、「感染症で入居者が亡くなった高齢者住宅」「適切なサービス管理ができていない」というイメージを払拭することは容易ではなく、その後の入居者募集、介護スタッフ募集に大きな影響を及ぼします。

食中毒・感染症のリスクを軽減する

これら感染症や食中毒対策は、手洗いの励行や嘔吐物・排泄物など感染源の取り扱いの徹底が基本です。高齢者住宅内のスタッフだけでなく、勉強内などを通じて、出入りの業者や入居者、家族にも周知しなければなりません。
これは、サ高住や住宅型などでも同じです。複数の訪問介護が入っている場合、一つの訪問介護、一人のホームヘルパーが排せつ物の杜撰な取り扱いをしていると、それだけで感染症・食中毒の発生原因となります。また、通所介護を利用している場合、その事業者の感染対策や感染者がいる場合の対策、連絡方法について、取り決めを行う必要があります。

高齢者住宅や老人福祉施設に見学に行くと、共用のバスマットや布タオルなどが置いてあるところがありますが、これらは皮膚病など感染を一気に拡大させる要因となります。更に、感染症や食中毒が発生したとき、発生が疑われる時にどのように対応するのか、どこに連絡するのか、何をすべきかといった対策のマニュアルも不可欠です。地域の保健所にすぐに連絡しなければならない感染症もありますし、家族への連絡や協力依頼も必要です。

感染症や食中毒は、どれだけ対策を行っても、その発生を防ぎきれるわけではありませんが、事業者の努力によって、その発生確率を下げること、爆発的な拡大を予防することはできます。
その「安全配慮義務」を怠り、食中毒や感染症が蔓延し、入居者が亡くなった場合、事業者の責任の有無を問われるか否かに関わらず、高齢者住宅事業の継続は困難になるのです。
経営の安定を阻害する、大きなリスクだという理解が必要です。


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