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高齢者住宅選びに失敗している家族に共通するパターン

高齢者住宅選びの失敗家族に共通する「負の連鎖」。
介護の不安から「時間が足りない…」「早く安心したい…」と、「基礎知識や事前準備のないまま…」「とりあえず見学をして…」「担当者から美辞麗句を聞いて…」「その場で決断…」となってしまう。実際の事例から「こんなはずではなかった・・・」という家族の後悔の声を聴く。

高齢者・家族向け 連載 『高齢者住宅選びは、素人事業者を選ばないこと』 053


有料老人ホームやサ高住の増加に比例して、トラブルやクレームも増加しています。経営悪化による倒産、転倒死亡事故やスタッフによる虐待などの報道が続いていますが、それでも表面化するのは氷山の一角でしかないということも事実です。実体はその数倍、いや数十倍では利かないでしょう。
高齢者住宅は、入居一時金がゼロのところを選んでも、毎月20万円以上の金額を払い続けるという大きな買い物です。また、身体機能の低下した高齢者、要介護高齢者が終の棲家として選ぶケースがほとんどですから、「気に入らないから」「合わないから」といって簡単に転居できるわけではありません。
「こんなはずではなかった・・」という家族からの相談、意見は、枚挙にいとまがないほどです。
セミナーなどで、高齢者や家族と話をすると、入居後に「高齢者住宅選びに失敗した・・」と後悔している人の多くが、同じような過ち、失敗を犯していることがわかります。

失敗の連鎖 ① ~不安・焦り~

有料老人ホームへの入居を検討する最大の理由は、将来の生活や健康への不安です。
親の介護の問題は、転倒大腿骨骨折、脳梗塞による麻痺等で、ある日突然やってくることが多く、特に、要介護高齢者を対象とした高齢者住宅の入居希望は、よりその傾向が強くなります。
田舎で元気に一人暮らしていたのに、脳梗塞で突然入院したとの連絡。病院から早期の退院を促され「自宅では生活できない」「同居もできない」「特別養護老人ホームも一杯で入れない」と、家族が慌てて探しているケースは少なくありません。
しかし、不安や焦りの中で探すと、「早く不安から解消されたい」「どこでも良いので早く探したい」という意識が強くなります。特に、入居率の低い経営やサービスが不安定な素人事業者、悪徳事業者は、その家族の不安を上手く突いてきます。その結果、安心・快適といった美辞麗句に惑わされ、トラブルや虐待事件を聞いていても「一部の悪徳業者だけの問題だろう」「このホームだけは大丈夫だろう」と、トラブルやリスクなど重要な問題から目を背けてしまうことになります。

失敗の連鎖 ② ~見学からスタート~

最近は、高齢者住宅の入居者募集のチラシが新人広告にも、たくさん入っています。
高齢者住宅選びは、ほとんどの人にとって初めての経験で、サ高住と有料老人ホーム、介護付も住宅型の違いもわかりません。そのため、事前準備をしないまま、「百聞は一見に如かず」「実際に直接話を聞くのが一番良いだろう」と見学からスタートします。
もちろん、ホームの雰囲気やサービスの質を確認すること、経営者やスタッフと話をすることは、高齢者住宅選びに不可欠です。しかし、基礎知識や事前準備もなく、ただ見学に行っても、一方的にセールストークを聞くだけになってしまいます。それでは、その場限りの質問しかできず、事業者からの「安心・快適」「要介護対応OK」という説明を鵜呑みにして、結局は「感じが良い」「部屋がきれい」等の見た目や雰囲気だけで決定することになります。
それは事業者から見れば、お腹を空かせたカモがネギを背負ってやってきたようなものです。

失敗の連鎖 ③ ~人任せにしてしまう~

「よくわからないので、第三者に任せてしまう」というのも、失敗パターンの一つです。
「良い高齢者住宅」というのは、一人一人違います。それはサービス内容や価格帯だけでなく、「本人の要介護状態」「家族との関係」「希望する生活」など多岐に渡ります。最近は、テレビの情報番組で紹介していますが、「テレビで褒めていたから、大手だから優良な事業者」と言う訳ではありません。
これは、「紹介業者の利用」も同じです。どちらを選ぶ ・・ 家族で探す? 紹介業者に頼む? で述べたように、高齢者住宅の紹介業は、一般の賃貸住宅の「仲介業者」とは全く別ものです。
一般住宅の「不動産仲介業」は、高い不動産の知識を持つ「宅地建物取引士」の国家資格者が、法律に基づき中立・公平を基礎として行うものですが「高齢者住宅紹介業」は「高齢者住宅の立場に立った入居者募集・営業活動のアウトソーシング」でしかありません。

「プロの目線でたくさんの高齢者住宅を比較・検討している紹介事業者は安心だ」「相談すれば、最も良い高齢者住宅を紹介してくれるだろう」と考えるのは全くの間違いです。
入居率の低い高齢者住宅、地域の事業者から信頼されていない高齢者住宅ほど、高額の紹介料になっていますし、逆に優良な高齢者住宅・老人ホームは紹介事業者を使わなくても入居者が集まります。なぜ利用者は無料なのか、紹介業者はどこから報酬を得ているのかを考えれば、その仕組みがわかるはずです。

失敗の連鎖 ④ ~美辞麗句に惑わされる~

高齢者住宅に見学に行くと、どこでも「介護になっても安心です・快適です」という話を聞かされます。
高齢者住宅は、個人と運営会社との契約ですから契約書に書かれた内容が全てなのですが、その美辞麗句に乗せられて、契約書の中身を詳細に検討せずに、契約書に判を押したという人も少なくありません。高齢者住宅は、特別養護老人ホームのような福祉施設ではありませんから、「介護付有料老人ホーム」と言っても、そのサービス内容は事業者によって大きく違います。
そのため高齢者住宅のトラブルで最も多いのが、「聞いた説明とサービス内容が違う」「そんな話は聞いていない」といった、契約を巡るトラブルです。「月額費用18万円」といっても、その金額にどこまでのサービスが含まれているのかは事業者によって違いますし、それ以外にも生活費はかかります。また、「快適・安心」は主観的なもので、サービス内容や質を保証するものではありません。

失敗の連鎖 ⓹ ~その場で気に入って決断~

「高齢者住宅選びに失敗した」という相談者の話を聞くと、逆に選んだ時には「一目見て気に入った」「話を聞いて信頼できると思った」と即決している人が多いことに気づきます。
見学に行っただけなのに、管理者やスタッフと話をしてその場で決めてしまったという人は、自分の持っている高齢者住宅のイメージと比較しただけで、実際のサービスや、他の高齢者住宅と比べたわけではありません。契約した後で他のホームのパンフレットや広告を見て、「向こうのホームが本人には良かった」「もう少し考えれば良かった」と後悔しても、どうしようもありません。
優秀な高齢者住宅は、それぞれの入居者、家族の不安に向き合って、「できること、できないこと」「家族の役割」について説明してくれます。契約やサービス内容についての理解が不十分なままで契約となると、事業者も困りますから「他の事業者の話を聞いて、きちんと選んでください」というスタンスです。
一方、見学に行っただけで、「今ならすぐに入れます」などと、その場で契約を迫られるような高齢者住宅は「入居者確保」に困っている素人事業者であり、家族や高齢者の知識不足や不安につけ込んで入居率を上げることしか考えていません。それは紹介業者でも同じです。
「その場で即断して失敗」というのは、いわば当然のことなのです。


以上、高齢者住宅選びに失敗する高齢者・家族の、5つのパターンを挙げました。このように整理すると、失敗の原因は個別のものではなく連鎖的なものだと言えるでしょう。要介護の不安から、「早く介護の不安から逃れたい」と、「基礎知識や事前準備のないまま…」「見学をして…」「美辞麗句を聞いて…」「その場で決断…」という、失敗の連鎖を重ねてしまうのです。

高齢者住宅選びに失敗すると、本人だけでなく家族も悲惨です。
毎月、20万円以上の高額な費用を払いながら、訪問するたびに「こんなところで生活したくない…」「家に帰りたい…」と親に泣きつかれ、その度になだめて後ろ髪をひかれるような思いで泣きながら帰るという人もいます。亡くなってから10年、20年たっても、「親に申し訳ない・・」とずっと後悔しつづけているという人も少なくありません。

ただ、これ以外にも「きちんと時間をかけて選んだはずのに…」「最初は良いホームだと思っていたのに…」というケースもあります。そこにも失敗の原因や特徴があります。
ここでは、なぜ、そんなことになってしまうのか。実際の事例から「こんなはずではなかった」「高齢者住宅選びに失敗した」という家族の後悔の声と、その原因、注意ポイントについて考えます。



「こんなはずでは・・・」 高齢者住宅選びに失敗した家族の声を聴く

  ⇒ 【F053】 高齢者住宅選びに失敗している家族に共通するパターン 🔗
  ⇒ 【ケースⅠ】 病院から紹介された有料老人ホームに入居したが 🔗
  ⇒ 【ケースⅡ】 「介護が必要になっても安心・快適」はイメージと正反対  🔗
  ⇒ 【ケースⅢ】 生活保護受給者をクイモノにする悪徳高齢者住宅 🔗
  ⇒ 【ケースⅣ】 高額の入居一時金を支払ったのに ~要介護対応の不備~  🔗
  ⇒ 【ケースⅤ】 高額の入居一時金を支払ったのに ~トラブル退居~ 🔗
  ⇒ 【ケースⅥ】 「協力病院」の医師に無理やり寝たきりにされた父  🔗
  ⇒ 【ケースⅦ】 不正を訴えても「自己責任でしょ・・」と無関心の役所🔗
  ⇒ 【ケースⅧ】 家族が住む近くに高齢者住宅を探せばよかった  🔗
  ⇒ 【ケースⅨ】 意見や希望を上手く伝えられずにストレスに 🔗
  ⇒ 【ケースⅩ】 月額費用の説明に対する誤解がホームへの不信感に 🔗

高齢者住宅選びの基本は「素人事業者を選ばない」こと

  ☞ ポイントとコツを知れば高齢者住宅選びは難しくない (6コラム)
  ☞ 「どっちを選ぶ?」 高齢者住宅選びの基礎知識 (10コラム)
  ☞ 「ほんとに安心・快適?」リスク管理に表れる事業者の質 (11コラム)
  ☞ 「自立対象」と「要介護対象」はまったく違う商品 (6コラム)
  ☞ 高齢者住宅選びの根幹 重要事項説明書を読み解く (9コラム)
  ☞ ここがポイント 高齢者住宅素人事業者の特徴 (10コラム)
  ☞ 「こんなはずでは…」 失敗家族に共通するパターン (更新中)




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