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こんな介護サービス事業者で働いてはいけない ~パート・派遣労働者が多い~

重要事項説明を読めば一目でわかる介護サービス事業者の人員配置やあれこれ。介護保険施設・高齢者住宅などで「パート比率の高い事業者」「派遣労働者のいる事業者」は人が集まっていない可能性があるため要注意。パート・派遣で働くのは「介護のプロ」になってから

介護スタッフ向け 連 載 『市場価値の高い介護のプロになりたい人へ』

こんな介護サービス事業者で働いてはいけない・・・
その六つ目は、パート社員や派遣労働者の比率が多い事業者です。

ただ、これには少し注釈が必要です。
訪問介護の場合、その中心選手は週三日、一日4時間程度のパートさんです。中には、週に二日・一日二時間、自分の空いた時間に、決まった利用者だけを担当しているという人もいます。
これは、何の問題もありません。週に二度しか働かないとしても、その利用者の要介護状態・生活希望・事故リスクだけが把握できていれば、それでよいのです。
最近は70歳を超えた高齢者の訪問介護スタッフも増えています。もちろん、訪問介護であっても、緊急時対応・トラブル対応など主になる常勤・正職員は不可欠ですが、高齢者になっても、健康のため、社会参加のために体力の続く限り介護の現場で働いていただくことは、利用者だけでなく、社会にとっても、また介護予防のためにも大切なことです。

一方の施設系・住宅系では、話は少し違います。
介護保険施設や高齢者住宅では、一人で数十人のという人の対応をしなければなりません。その中には、「数日前に転倒して要注意」「最近ふらつきが見られる」「誤嚥がありおやつが変更になった」など、要介護状態が変化した高齢者もいますから、それが把握できていなければ、事故を起こすことになります。
これは「施設系・住宅系にパートさんはいらない」と言っているのではありません。介護保険施設でも、洗濯や掃除、後片づけなど様々な業務がありますから、パートさんのサポートは必要です。それまで常勤スタッフだった人が、家庭の事情で短時間勤務になると言うケースもあります。
ただ、常勤・正規職員が少なく、短時間労働のパート職員の比率が高い、パートさんの労働時間をかき集めて、何とか指定基準や契約基準をクリアしている事業者は注意が必要です。

もう一つ、注意が必要なのが、最近増えてきた派遣労働者です。
非常勤職員としての派遣労働は、働き方が不安定なことから批判されることも多いのですが、季節的な要因によって、繁忙期と閑散期が分かれるような業種にとっては、すべての人材を常勤・正規職員が抱えることができないため、派遣労働を使うことはあります。
しかし、介護労働の場合、繁忙期も閑散期もなく、お盆でもお正月でも、必要サービス量はほぼ同じですから、そもそも、派遣労働が必要となる業種・業態ではありません。
実際、通常の正規職員よりも人件費が高くなる派遣労働者を好んで使いたいという介護経営者はいません。それでもなぜ、派遣労働者を使うのかといえば、正規職員で介護人材が集まってこないからです。使いたいのではなく、使わざるを得ないのです。

これはサービスの質にもかかわってきます。
「派遣労働者は質が低い」という経営者がいますが、そこまでは思いませんが、残念ながら、「この施設・事業者の質を高めたい」「工夫してより良いサービスを提供したい」「頑張って勉強して介護のプロになりたい」と思ってくれているかといえば、そうではありません。どちらかと言えば、「言われたことはやりますよ」「大変なこと・責任のかかることは嫌ですよ」というタイプの人が多いことは事実です。
また、気に入らないこと、大変なことがあれば、すぐに辞めてしまいます。いまは特に介護人材不足ですから、他にも派遣労働を受けてくれるところはたくさんあるからです。中には、派遣労働者が半数以上という事業所もあります。厳しいようですが、そのような事業所は、人が集まってこない、労働条件も雰囲気も良くない、人も育てられない事業者だということです。

「重要事項説明書」は介護労働者・求職者の強い味方

「でも派遣が多いか少ないかなんて、事前にわからないよね」
「面接で、派遣が多いか? パートさんが多いか? とか聞けないよね…」
そう思うかもしれませんが、介護保険施設や介護付有料老人ホーム、グループホームなどでは、従業者に関するデータは「重要事項説明書」の中で事前に、詳細に公表されています。それは、入所・入居希望者が事前に費用やサービス内容を確認するために作られたもので、介護サービス事業者は、その作成・公開が義務付けられており、ホームページなどで見ることができます。
この中には、介護労働者のパート職員の数や常勤換算での時間、派遣労働者の数と常勤換算での時間が記載されていますから、「ここは非常勤スタッフが多いな」「派遣労働が多いな…」ということが数字で、一目瞭然にわかるのです。
それ以外にも、利用者・入所者の要介護度の分布や、管理者は国家資格の有資格者か否か、介護労働者の有資格者(資格別)の数や割合、勤続年数なども書かれています。一般企業では、働く前に「業種分析・企業分析」をしますが、介護業界ではそれ以上の情報が一覧で示されているのです。自分が働こうとする事業者の重要事項説明書くらいは、手に取って調べておくべきでしょう。
もし、それが見つからない、公表していないような事業者であれば、法律で決められた最低限の情報開示さえできていない、内情を見られては困るコンプライアンス意識の低い事業者ですから、最初から、対象外ということになります。

最後にもう一つ、付け加えるとすれば、介護のプロになりたいのであれば、始めから「派遣労働・パートで働くのは辞めた方が良い」ということです。もちろん、介護のプロの事業者で働き始めても、家庭の事情などで退職して、転居などによって、パートや派遣に登録すると言う人もいるかもしれません。それは悪いことではありません。
ただ、「派遣の方が給与は高いから…」「介護福祉士もってるし、派遣の方が気楽だし…」と初めから派遣労働者になることはお勧めしません。
述べたように、そもそも派遣労働を受けているところは人が集まっていない、マネジメントが上手くできていない可能性が高く、また派遣やパートは、あくまでも穴埋めスタッフであり、「介護のプロになってほしい」「頑張って研修・教育を受けてもらおう」ということにはなりません。

現状を見ると、地域によっては新卒者・有資格者であれば正規社員よりも派遣労働の方が給与が高いようですが、これはあくまで「新人給与と比較して…」だけであり、そこから給与が上がっていくわけではありませんし、知識も技術もマネジメントのノウハウも、何ひとつ身に付きませんから、あなたの市場価値は低いまま、ずっと派遣でしか働けないということになります。
どんな仕事でも、「はじめ肝心」です。
最初に入った事業者がプロの事業者か否か、そこで介護のプロ・介護の専門職種としての基礎・ノウハウを得られるかどうかで、あなたの介護労働者としての市場価値・未来は全く変わってきます。5年くらいは「勉強代が引かれている」だと思って頑張ってみましょう。
もちろんそれは、優秀な人材、目標になるような先輩がいて、そうなりたい、成長できていると実感できる事業者であることが絶対条件ですが…。


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こんな介護サービス事業者で働いてはいけない

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