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サ高住が本当に危ない理由 ~10年で半分は潰れる~

 

安否確認が義務づけられたサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)で、2015年1月から1年半の間に、死亡や骨折など少なくとも3千件以上の事故が報告されたことがわかった。制度上は民間の賃貸住宅に近いが、要介護者が入居者の大半を占める例も多く、国土交通省が改善に乗り出す。
2017年5月  朝日新聞

 

高齢者住宅の関係者と話をしていると、
「サービス付高齢者向け住宅を否定されていますね・・・」
「サービス付高齢者向け住宅は本当にダメなんですか?」 と、聞かれる。
「中らずといえども遠からず・・・」なので、時間のないときは 「そうですかね・・」 と曖昧に答えるが、正直に言えば、有料老人ホームでもサ高住でも、単なる制度なので、どちらでも良い。「大切なのは、制度ではなく商品性ですよ」 と言っても、そのイメージは払拭されそうにない。

逆に、 「何故、サ高住が継続的な制度だと言えるのか・・」 と聞くと、制度の中身・内容ではなく 「厚労省と国交省が共管して力を入れている制度なので、これから必ず発展する」「これからは施設ではなく住宅が必要だから」と反論・力説される人が多い。個人のポリシーにケチをつけるつもりはないが、この時代、現在の政府 「お上の言うことが全て正しい」と盲目的に従うのは、ビジネスとしては他力本願すぎる。はっきり言えば危険だ。

 

~現在のサ高住の多くは欠陥商品 10年以内に半分は潰れる~

高齢者住宅の制度は、大混乱している。
有料老人ホームとサ高住の二つの制度は説明できても、何故それが必要だったのかは誰も説明できない。
問題の根幹は、国交省が、厚労省に独占されていた高齢者住宅事業に触手を伸ばしたい、補助金を確保したいという一心で、高齢者住宅事業の特殊性を全く理解しないままに、「とりあえず数を増やせば良い」「補助金を出せばいい」と、安直な制度を作ってしまったことにある。
それが後々どのような大変な結果をもたらすのかも考えず・・・。

この高齢者住宅制度の混乱は、国交省だけでなく厚労省の責任も重い。
「高齢者の住まいの確保」に関する政策は、厚労省・国交省共管で行うことになっているが、共管というのは、それぞれの専門性・実績・強みを活かして、協力して推進するものだろう。
ただ、厚労省は、要介護高齢者を対象とした特養ホームや介護付有料老人ホームでやりますので、国交省さんは、自立・要支援高齢者を対象にした高齢者住宅をお願いします・・という、補助金や福祉利権の単純な区分けでしかない。サ高住も、その前の高専賃も、その方針に従って制度設計されている。

しかし、高齢者住宅への入居を考える家族、高齢者の最大のニーズは「介護不安」である。
経営実務を考えると、加齢変化による認知症対応や重度化対応が難しいため、自立・要支援高齢者を対象とした住宅・施設は経営・サービスが安定しない。厚労省はそのことをケアハウスや養護老人ホームの経験から知っているはずだ。ケアハウス等でこれらの問題が表面化しないのは、介護が必要になれば、系列の特養ホームに優先的に転居させるという裏口入所があるからだ。実際、「自立高齢者が要介護状態になっても住み続けられるために」 という趣旨で作られたケアハウスに、認知症高齢者・重度要介護高齢者は住んでいない。

このような裏技を持たない単独の自立・要支援高齢者を対象とした高齢者住宅、特に借家権のものは、安定的にサービス提供、安定経営を続けることは100%不可能だ。「早目の住み替えニーズ」は、厚労省が20年前にケアハウスで試験的に行って、上手くいかないということがわかっているのに、厚労省はそれを体よく国交省に押し付けた、そして、国交省は訳もわからず、目先の利権でそのカードをひいたのだ。

需要・ニーズがあるということと、事業性がある・事業として成立するということは基本的に違う。
事業性を詳細に検討しないまま、「補助金がもらえる」 「厚労省と国交省の重要施策だから」 と参入した事業者は、自己責任で破綻するしかないが、そのジョーカーを最終的に押し付けられるのは、管理責任を追わされる地方自治体と、行き場のない入居者・家族、そして無駄遣いのツケを押し付けられる国民ということになる。

高齢者住宅は、事業リスクの視点でみれば、生き残ることのできる商品性は限られてくる。
断言しても良い。サ高住として補助金や税制優遇を受けたもの、半分は10年もたない。認知症の周辺症状や重度要介護高齢者への対応ができず、トラブルやクレームが急増し、火災や虐待などの問題も激増するだろう。重度要介護高齢者の生活環境が整わないということは、介護環境も整わないということだ。介護スタッフもどんどん辞めていくだろう。

また、このサ高住のビジネスモデルと介護保険制度は全く違う方向を向いている。2018年の介護報酬改定はまだプロローグでしかなく、監視が強化されると、現在のサ高住のビジネスモデルは崩壊し、行き場のない高齢者・要介護高齢者が激増する。
今の自治体にサ高住の登録・新規開設を止める力はない。それどころか、多くの自治体は、現在の「囲い込みビジネスモデル」によるサ高住の低価格化は、介護保険財政の悪化に直結することを理解せず、「安いしエエやん」「補助金つけよ・・」とケアマネジメントの本質を無視した不安定な低価格サ高住が増え続けている。

本当にひどい話だ。

 

~有料老人ホームとサ高住の事業者の決定的な違い~

ただ、ここで述べるのは、この脆弱な制度設計や、現在計画されているサ高住の商品性の課題ではない。残念ながら、私も想定していなかった、もう一段深刻な話だ。

私のところには、ホームページや書籍を通じて、高齢者住宅に関する様々な相談が持ち込まれる。京都に住んでいるので、京都まで来られる方には、時間の許す限り無料で相談に応じている。
これまでの有料老人ホームでも、足し算も合っていないような無茶苦茶な事業計画はたくさんあった。
しかし、サ高住の開設相談の中で驚くのは、そもそも「高齢者住宅を経営する」 という意識が希薄な開設者が、とても多いということだ。

相談者の立場を聞くと、「私は家主・オーナーです」「家賃収入を受け取るだけです」という答えが返ってくる。この事業計画は誰が作ったのかと聞けば、「デベロッパー」「コンサルタント」と答え、入居希望者や家族への説明は誰がするのかと聞くと、代行業者に委託する、併設の訪問介護事業者が行うというところばかりだ。

このあたりから???が増えてくる。「訪問介護を運営する法人に一棟貸(サブリース)するのか?」 「訪問介護事業者がサ高住の事業者なのか?」と聞くと、訪問介護は単なるテナントだと話す。入居者との入居契約は自分(家主)との賃貸契約、介護・見守りサービスは入居者と訪問介護事業者との個別契約、食事はテナントのレストランと入居者との個別契約だと言う。その訪問介護やレストランの事業者も、デベロッパーやコンサルタントが連れてきた人たちで自分は関係ないと平然としている。
私は宅建主任者の資格を持っているが、その立場から見れば、本来の業務とは関係も責任もない訪問介護事業者が、賃貸住宅の入居者募集や入居説明、斡旋を継続的に行うことが法律に触れないのか疑問が生じるところだが、法的にどうかという以前に、あまりにもシステムとして杜撰で、関係するすべての人が、すべてにおいて考えが甘い。

「住宅内で発生するトラブルや事故は誰が対応するのか」と聞くと、「すべて訪問介護事業者がやってくれるはず・・」と答え、逆に「どんなトラブルがあるのでしょうか」「トラブルや事故が発生した時に、家主に何か責任が及ぶのでしょうか・・」と質問される。「テナントの訪問介護が倒産したり、経営に失敗して出て行けばどうするのか」と聞くと、「そんなことがあるのでしょうか」「そうするとどうなるのでしょうか?」「私の責任なのでしょうか」と雲行きが怪しくなってくる。

高齢者住宅を運営する上での経営悪化リスク、サービス提供上のリスク、囲い込みビジネスモデルの問題点について説明すると、「それは、私が考えることなんですか」 「私は単なる家主なんですけど・・」 と、困惑と不安の顔を向けられる。入居者・家族に対して、このサービス付高齢者向け住宅で 「安心・快適に生活できますよ・・」と説明・約束するのは誰なのか、サービス付高齢者住宅の運営責任はどこにあるのかを理解せず、事業上のリスクなど自分には全く関係ないと、事業者自身が思っているのだ。

これは、業務シミュレーションのレベルや商品設計以前の問題だ。
有料老人ホームの制度にも、利用権の運用含め様々な課題があることは明らかで、住宅型有料老人ホームの中にも、『制度基準の建物に訪問介護を併設しただけ・・』 という脆弱な商品性を持つものも多い。その経営体質・商品性は、同様に玉石混淆であることは間違いない。
ただ、少なくとも 「有料老人ホームの事業者は私なんですか?」というレベルの話は一つもない。

これには、近年「住居とサービスの分離」が叫ばれてきたことと大きく関係している。多くの人が勘違いしているが、「施設か住居か」 というカテゴリー分類と、「住宅サービスと介護サービスの分離」には、何の関係もない。そもそも、施設的か否かというのはイメージだけの話で、同一事業者によって、すべてのサービスが一体的に提供されるほうが連携・調整が容易なことや、サービス提供責任が明確なことから、高齢者住宅の商品・システムとしては安定している。更に、特定施設入居者生活介護を抑制し、併設サービスによって区分支給限度額を限度額まで利用させると、高齢者住宅の最大の社会的メリットである介護サービスの効率運用・介護保険財政の効率運用の視点もつぶれてしまう。

しかし、これらことを理解しないまま、一部の介護ジャーナリストや識者と呼ばれる人達が、「脱施設」の流れの中で、それぞれのサービス主体がバラバラであることを推奨してきた。それは、ユーザーのニーズを無視した「サ高住は施設ではなく、自宅なのです・・」という意味のない、言葉遊びのマスターベーションでしかない。
結果、設置面が凸凹の積み木で作ったようなサービス付高齢者向け住宅が増加していく。サービス間の連携・調整が難しく、一つでもパーツの質が低いと、全体のサービスレベルは大きく低下する。更に、それぞれ別に経営しているため、倒産や不正請求などで、一つのサービスがストップすると、居住権に関わらず入居者は実質的に生活できなくなる。

その行き着く先が 「誰が高齢者住宅の事業者かわからない」 「事業者が経営責任を理解しない」 という事業者が激増している現状だ。入居者や家族は、介護サービス外の様々なトラブルや事故が発生した場合、誰に相談するのだろうか。国交省は、制度化にあたって「サ高住」の指導・監査体制を整えたと言っているが、担当者は誰に監査をするのだろうか。

「私は家主で、事業者ではないですよ」
「えっ? 形式的には私が事業者になるんですか? でも聞かれても何もわからないですよ」
という人に、
「あなたが事業者・経営者なんですよ・・」
と説明するところから始めるのだろうか。

このような高齢者住宅に補助金が交付され次々と増えていくことに、不安というよりも戦慄を覚える。
制度を推進している国交省・厚労省はどう思うのだろうか。

政・官・民共に、「えっ? それは私の責任なんですか?」というのが今の流行なのだろうか。

 

【以前の高住経ネットのニュースを一部見直し、掲載ています】

 

 

 

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