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「みんなやってる」コンプライアンスのない素人事業者

「囲い込みビジネス」に内在する、介護保険の根幹に関わる3つの不正

それは「グレーゾーン」ではなく、要介護高齢者の生活を破壊する卑劣な詐欺


 

介護保険を知らない素人事業者🔗で述べたように、区分支給限度額方式の住宅型有料老人ホームやサ高住では、重度要介護高齢者、認知症高齢者に対応することはできません。区分支給限度額のサ高住や住宅型有料老人ホームには重度要介護高齢者は、実際に生活していないのか、退居を求められるのかと言えばそうではありません。
そのことを指摘すると「見守りやスタッフコールへの対応、移乗、移動などの介助は、時間の空いているヘルパーがします」という回答が多く寄せられます。しかし、そのためには、緊急対応やコール対応、見守りや状態把握のために、常時、介護保険の介助時間に束縛されない介護スタッフを、別途確保しておかなければなりません。
また、「手が空いていればやります」というのは、「手が空いていなければやりません」というのと同じです。随時・緊急対応もコール対応もできなければ、「便が出てもそのまま」「頭が痛くてもそのまま」ということになります。

「区分支給限度額方式では重度要介護高齢者への対応は絶対無理」と言っているわけではありません。
ただ、臨時ケア、隙間のケア、間接介護、随時コール対応などは対象外ですし、臨機応変に動くことができない分、また対象外となる介助が多い分、区分支給限度額の訪問介護で対応するほうが、介護付よりも、2倍~3倍多くの介護スタッフが必要になります。それは、介護保険以外の全額自己負担の介護サービスが多くなるということですから、月額費用は40万円以上にはなるでしょう。
しかし、現実を見ると、サ高住のほとんどは15万円前後と介護付有料老人ホームよりも低価格に抑えられています。最近は、住宅型有料老人ホームでも同程度の価格のものが増えてきました。

なぜ、そのようなことが可能なのか。
それは、「なぜサ高住は介護付よりも格段に安いのか」🔗で述べたように、「囲い込み」のビジネスモデルが横行しているからです。この「囲い込みのビジネスモデル」に対する問題意識は高まってきましたが、必ずそこで入るのが、「併設サービスを使うことも、区分支給限度額全額を使うことも、それ自体が不正ではない」という注釈です。
しかし、低価格のサ高住や住宅型有料老人ホームで行われている「囲い込み」は、ほぼ100%不正です。
どのような不正が行われているのか、3つの問題を指摘します。

 

~認定調査にかかる不正~

一つは認定調査にかかる不正です。
「囲い込み」は、入居者にたくさん自前の介護サービスを利用してもらうことによって、利益を上げようというものです。そのビジネスモデルから見れば、「たくさんサービスが使える人」、つまり要介護状態が重い人が、ありがたいお客様ということになります。
その度が過ぎると、認定調査に対する不正につながります。

要介護度は、原則として6ケ月に一度見直され、担当しているケアマネジャーから出される認定調査票と、かかりつけ医の意見書によって、各市町村の「介護認定審査会」が判定します。もちろん、これは高齢者住宅の経営とは完全に分離したところで、それぞれの専門倫理を基礎として作成すべき書類です。
しかし、高齢者住宅、関連法人のケアマネジャー、協力病院の医師が結託し、実際の要介護状態よりも重くなるように不正に書き換えているところもあるのです。
私は、以前、ある政令都市の介護認定審査会の委員をしていましたが、その専門的な視点で実際に高齢者住宅を見学すると、明らかに実態よりも要介護状態が重く判定されているケースがたくさんあります。

それは、一部事業者に留まりません。
「自宅では要支援1だったのに、いきなりサ高住に入れば要介護2になった」「事業者から要介護度を上げて良いかという打診があった」という話は、枚挙にいとまのないほどです。NHKの夕方の情報番組の特集で紹介されたサ高住の入居者は、どう見ても「自立高齢者」でしたが、「要介護2」と紹介されていました。それがテレビで放映されることに疑問を感じないほど、認定調査の不正が通常運転になってしまっているのです。

公平を期すために言えば、このような不正は、サ高住や住宅型だけでなく、一部の介護付有料老人ホーム、特養ホームや老健施設でも行われています。それだけ介護報酬が高くなるからです。
ただこれは、医療保険制度で言えば、「風邪だけれど、診断は肺がんにした」「ステージ1だけで、ステージ3にした」と言うのと同じです。
介護保険制度の根幹に関わる不正です。

 

~サービス利用にかかる不正~

一つはサービス利用にかかる不正です。
自宅で生活している要介護高齢者の区分支給限度額の利用割合は、50%~60%ですが、大阪市の調査によれば、サ高住などの高齢者住宅の入居者の利用割合は90%に上るといいます。
ただ、自宅で生活している高齢者は家族と一緒に生活している人も多いため、高齢者住宅と同じように独居高齢者に限定すれば、もう少し利用割合は高くなるでしょう。また、入居者本人の希望によって、結果的に同一法人の併設サービスの利用が多くなったということであれば、問題ではありません。
しかし、「関連・併設サービスしか利用させない」「限度額一杯まで利用させる」というのは明らかな不正です。

この不必要な介護サービスの押し売り利用は、財政悪化の原因となりますが、それ以上に問題となるのが、不適切なサービスによる要介護高齢者の生活の破壊です。
本来、介護サービスは、それぞれの高齢者の要介護状態や生活リズム・生活ニーズをアセスメントし、それに沿って、それぞれの高齢者が安全に、快適に生活できるように行われるものです。
しかし、押し売り介護は、本人の生活ではなく、事業者の利益優先です。「部屋でゆっくりしていたいのに、毎日デイサービスに行かされる」「訪問看護が必要なのに、訪問介護しか入れない」「自分で排泄できるのに、オムツ介助にさせられる」というのは、本人の生活を破壊する行為です。

医療に置き換えれば、適切な治療が行われず、無関係な薬を飲まされているようなものです。
実際、無届施設や一部のサ高住では、訪問看護が必要なのに訪問介護だけで全サービスが占められ、健康管理や薬剤管理が行われず、高血圧や糖尿病が悪化して亡くなる高齢者もいます。「床ずれ」が悪化し、ひどい状態で救急搬送になるという人もいるといいます。
しかし、入居者や家族は、退居を求められると行き場所がないため、「お任せします」と事業者の言いなりになりがちです。それを盾に、「契約上問題ない」「家族も印鑑を押している」と抗弁するのは、倫理違反というよりも、あまりにも卑劣です。

 

~介護報酬の不正請求~

もう一つは、介護報酬の不正請求です。
区分支給限度額方式は、時間管理に厳格です。そのため同程度の要介護高齢者数、介護サービス量であっても、臨機応変に動くことができない分、また対象外となる介助が多い分、訪問介護の方が、特定施設入居者生活介護の介護スタッフよりも、2倍~3倍のホームヘルパーが必要になります。

しかし、要介護高齢者の多い、サ高住や住宅型有料老人ホームの夜勤帯や食事時間帯の訪問介護のホームヘルパーを見ると、介護付有料老人ホームのスタッフ配置と、ほとんど変わりません。また、働いている訪問介護のホームヘルパーの業務体系や働き方も、ほとんど特養ホームや介護付有料老人ホームの介護スタッフと同じです。

それは、報酬請求の書類上は、それぞれの入居者と個別に契約し、時間通りに個別に介助したことになっているけれど、実際は、全く違う内容、時間で介助を行っているということです。
無届施設やサ高住、住宅型有料老人ホームで働いていたケアマネジャーやホームヘルパーと話をすると、「実際は臨機応変に介助していて介護付と同じ」「不正だとわかっているけど、実態はサラリーマンだから仕方ない」という話がたくさんでてきます。
つまり、ほぼ、不正請求が日常化しているということです。

この3つの不正は、つながっています。
① 食事や排せつが自立している人も、できていないように見せかけ要介護状態を重くする。
② 食事や排せつの介助が必要だと、不要な訪問介護をケアプランの中に入れる。
③ 実際には食事や排せつのサービスを行っていないが、介護報酬だけは算定・請求する
ということです。

表面上は、「入居者とサービス事業者との契約だ」と言いながら、実際には、高齢者住宅事業者と関連法人の「居宅支援事業所(ケアマネジャー)」「訪問介護事業所(ホームヘルパー)」が結託し、すべての入居者の区分支給限度額を一元管理し、自分たちの都合のいいように、最も少ない人員で限度額全額の介護報酬が得られるように、書類を整えているにすぎません。

これらは不正請求というよりも、明らかな有印公文書偽造による詐欺行為です。
路上生活者に生活保護を受けさせ、住宅を斡旋し、その振り込み口座を取り上げるという「貧困ビジネス」が社会問題となりましたが、同じことを介護保険でやっているのです。その金額は、一人当たり生活保護受給者の数倍にのぼります。

更に問題は、この3つの不正によって、適切なアセスメント・ケアマネジメントによる安全な介護が行われないために、転倒事故や死亡事故が多発しているということです。

埼玉県のある住宅型有料老人ホームでは、重度要介護高齢者が特殊浴槽での入浴中に亡くなるという事件が発生しました。報道によると、ここでは7人の入浴者に対して3人で介護していたといいます。入浴は溺水や急変が発生するリスクの高い生活行動であり、入浴中は介護スタッフが目を離さないというのが基本です。特に、特殊浴槽を利用する重度要介護高齢者の場合、自分では動けないのですから、目を離せばどうなるかわかるはずです。
特に、ここは介護付ではなく住宅型です。訪問介護事業者との個別契約で入浴介助が行われるはずです。
このように、実際に行われている介護サービスと、ケアマネジメントや介護報酬算定が、無茶苦茶で、それによって入居者が傷つき、亡くなっているのです。

問題は、このような「囲い込みビジネスモデルによる不正」が、程度の差はあれ、また大手・中小などの事業規模を問わず、高齢者住宅で蔓延しているということです。上記の死亡事故が発生した住宅型有料老人ホームは、全国でトップ10に入る大手有料老人ホーム事業者です。
経営者は、「グレーゾーンだ」「不正を指示しているわけではない」「ケアマネジャーや訪問介護の管理者に任せている」と明確な不正の意思を否定します。「多かれ少なかれ、どこでもやっている」と開き直る人も少なくありません。

この問題の背景には、説明不可、制度・政策の混乱🔗で述べたように、制度の混乱によって、指導監査体制が崩壊しているという課題もあるのですが、悪意か故意かは別にしても、事業者サイドも、法令順守に対する意識が完全に麻痺しているのです。

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