PLANNING

地域包括ケアで大きく変わる高齢者住宅ビジネス

地域包括ケアシステムで大きく変わる「高齢者の住まい」

それぞれの地域ニーズに適正な商品・サービスを提案できるか


 

これからの高齢者住宅の事業展開に大きく関わってくるのが、「地域包括ケアシステム」です。
厚生労働省は、「地域包括ケアの姿」として以下のような図を作っています。
真ん中にサ高住が配置されていますので、「やはりサ高住だ・・」「介護が必要になれば外部からのサービス利用だ」などと安易に考える人が多いのですが、「地域でネットワークを組んで・・」「地域の事業所で協力し合って」というイメージ図であり、それ以外の意味はありません。

地域包括ケアとは何か🔗で、詳しく述べていますので、お読みいただきたいのですが、「地域包括ケアシステム」とは、一言で言えば、介護や医療などの「高齢者政策」の立案・推進方法の変化です。これまで、国の主導で、ほぼ全国一律に行ってきた高齢者の介護・医療・住宅対策を、これからの基礎自治体である市町村が中心となり、それぞれの地域ニーズに沿って、計画・推進していくという役割の変化なのです。言いかえれば、それぞれの市町村のマネジメントの力によって、それぞれの地域の介護システムは大きく変わってくるということです。
大きな流れとして、高齢者住宅はどのように変わるのか、いくつかのポイントから整理しておきます。

 

①  「施設・住宅」ではなく、「高齢者の住まい」へ
「地域包括ケアシステム」の対策の一つとして、明記されているのが、「高齢者の住まいの整備」です。
現在、高齢者住宅の対策は、大混乱しています。それは、「有料老人ホーム・サ高住」「介護付・住宅型」という高齢者住宅の制度の混乱だけでなく、特別養護老人ホームやケアハウスなどの老人福祉施設の役割、更にはグループホームなども、その目的・役割がそれぞれに輻輳し、すでに誰も説明できない状況にあります。
そのため、これからは「特定施設入居者生活介護」「特別養護老人ホーム」「グループホーム」といった、制度種別毎の整備ではなく、「どのような高齢者の住まいが必要なのか」という視点での整備に変わるということです。

②  サ高住も届け出制に、有料老人ホームとの制度の統合
現在のサービス付き高齢者向け住宅は「登録制」ですから、担当課に登録用紙を一枚出せば、だれでもすぐに開設できます。またいま開設されているものの多くは、「+訪問介護」「+通所介護」といった囲い込みモデルです。しかし、このように市町村のコントロールが利かない中で、高齢者住宅が増え続けると、「地域包括ケアシステム」を構築することはできません。
そのため、サ高住も事前に市町村への事業計画の届け出が必要となります。その過程で法律的にもサ高住と有料老人ホームの制度は統合されることになるでしょう。

③  高齢者住宅は特定施設入居者生活介護が基本に
介護保険適用も同じことが言えます。
今後、多くの自治体で重要になるのは、激増する「重度要介護高齢者・認知症高齢者対策」です。
ただ、その需要の増加に合わせて特養ホームを作り続けることは不可能であることから、重度要介護高齢者向けの民間の高齢者住宅の整備が不可欠です。
その商品設計には「包括的・継続的な介護システムの構築」だけでなく、「介護サービスの提供責任の明確化」も重要です。そのため、今後は「特定施設入居者生活介護」の指定が基本となります。

④  事業計画の事前承認
③で述べたように、これからの高齢者住宅は「特定施設入居者生活介護」の指定が基本となりますが、指定枠だけを定めるのではなく、「ターゲット」「価格設定」など、その商品性が地域ニーズにマッチしていることが必要になります。
そのため、今後は、「届け出をすればよい」というものではなく、その自治体の「地域包括ケアシステム」に沿った事業計画、商品性でないと認められないということになります。

⑤ 指導監査体制の強化
地域包括ケアシステムで検討されるのは、「サービスの整備計画」だけではありません。
指導監査体制の構築、強化もその一環です。現在、「囲い込み型」の低価格のサ高住や住宅型有料老人ホームが増えていますが、そのほとんどはケアマネジメントの不正によって運営されており、財政悪化の要因ともなります。
2018年度の報酬改定で「集合住宅に対する減算」が強化されましたが、「減算にならなければ良い」「訪問介護を複数にして対応すればよい」という問題ではありません。現在、有料老人ホームには、「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」がありますが、サ高住と統一される中で、各自治体で、「囲い込み」のグレーゾーン廃止に向けた対策が取られることになるでしょう。

 

以上、5つのポイントを挙げました。
「地域包括ケアシステム」によって、各自治体にマネジメントの権限・財源が移譲され、市町村の責任は重くなります。その結果、「要介護高齢者が住みやすい市」と「要介護高齢者が暮らせない街」に二極化され、後者は財政破綻によって、崩壊していくことになります。
事業者としても、長期安定経営のためには、「マネジメント力のある自治体と組めるか」が重要なポイントなのです。そのためには、市町村に優良な高齢者住宅のプランニングを提案できるか否かが、事業の成否を決めることになるのです。

NEXT  ☞  建物設備設計の基礎となる5つの視点

 

 

 

 

 

関連記事

  1. 不安定な制度に依存する高齢者住宅事業
  2. 「住宅だからサービス分離が原則」という素人発想
  3. ローコスト化と修繕対策の検討
  4. 建物設備設計の工夫で事故は確実に減らせる
  5. ユニットケアの利点と課題から見えてきたもの
  6. 居室と食堂は同一フロアが鉄則
  7. 高齢者住宅には「可変性」「汎用性」がなぜ重要なのか。
  8. 「需要が高いから、事業性が高い」は大間違い

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

TOPIX

NEWS & MEDIA

WARNING

FAMILY

RISK-MANAGE

PLANNING

PAGE TOP