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地域ケアネットワーク 構築例 ① ~情報発信・共有・管理~


地域ケアネットワークにどのような機能を持たせるのかは、各自治体で考えるべきこと。ただ概念、概論だけではイメージすることが難しいため、一例として、私たちが策定を検討している地域ケアネットワークシステム「KaIT」の機能について、その情報共有・情報管理の機能を紹介する

【特 集】 地域包括ケアの土台となる地域ケアネットワークを構築する 005   (全9回)


地域ケアネットワークは、地域包括ケアシステムの土台ですから、「それぞれの地域特性・地域ニーズに合わせて作る」というのが基本です。どのような情報ルールを作成するのか、どのような情報を共有するのか、どのように維持していくのか・・・は、それぞれの自治体が中心となって、域内の関連事業者と話し合って決めていきます。
ただ、概念、概論だけではイメージが難しいため、一例として、私たちが策定を検討している地域ケアネットワークシステム「KaIT」の機能を、二回に渡って紹介します。

地域ケアネットワークへのログイン・セキュリティ

まず一つは、「地域ケアネットワーク」を利用するためのログイン・セキュリティです。
この地域ケアネットワークで扱う情報は、個人情報でも企業秘密でもありません。「使いやすさ」を考えると過度なセキュリティは必要ないと考えています。その一方で、一般利用者に開示する種類のものではありませんから「誰でも自由に閲覧可能」というものでもありませんし、閲覧だけでなく書き込みもできますから「誰が情報を発信したのかわからない」「営利目的のセールス情報が氾濫する」ということでは困ります。

そのため、基本的には「事業者名」+「パスワード」でログインできるシステムを考えています。
「事業者名+パスワード」だけでなく、閲覧者を限定するために「事業者名+個人名+パスワード」を設定することもできますし、閲覧権限と書き込み権限を分けることも可能です。いずれも、「誰が閲覧したのか」「誰がどのような書き込みをしたのか」が追跡できるようになっています。更には、書き込みができる端末(パソコン等)は、各事業所内のものに限定するということも可能です。
もちろん「こうあるべき…」というものではなく、どのレベルのセキュリティにするのかは、それぞれの自治体、地域ケア会議で検討すべきことです。「地域ケアネットワーク」への、ログインやセキュリティは、情報ルールの基本だといって良いでしょう。


地域ケアネットワークのトップページ

次は、トップページを見ていきます。
このトップページは、地域ケアネットワークの基本機能のゲートになるものです。KaITの基本機能は大きく4つに分かれています。
その全体像を示した画像とともに、その機能を見ていきます。

① カレンダー機能に連動したスゲジュール管理
一つは、カレンダー機能です。
ここで、その地域で行われるイベントや研修会、資格試験など、全体のスケジュールが一覧でわかるようになっています。そのカレンダーと連動して、本日の予定やイベントや研修会などの申し込み、期限などが示されています。また、それぞれをクリックすると、日時や場所の詳細や参加費用の有無、イベント・研修の内容がわかるようになっています(外部のサイトにリンクを張って、より詳細な情報を提供することも可能です)。更に、参加の申し込みが必要なものについては、その出欠や参加人数についてもケアネットワークを通じて連絡することができます。イベントの主催者は、事前に、その出欠の有無、参加人数を把握することが可能です。

自治体や団体が行う公的なセミナー・研修会なものだけでなく、下記の③で述べるような、介護サービス関連企業や各事業所が行う勉強会や域内で行われるセミナー・イベント情報などにも連動しています。
これまで、リスクマネジメント、レクレーションなどのイベントを開催しようと企画しても、それを周知するのが大変で、結局はSNSを使って自分の知っている人にしか伝えられず、もしくは、メールやFAX通信などを使って宣伝するしかありませんでした。また、事前の参加人数を把握するのは更に難しく、「結局、お願いしてきてもらう」「いつも同じ参加者ばかりになる」「50人の部屋をとったのに、参加者は5名程度」ということになっており、一方で「あの先生のセミナーならば聞きたかった」「申込期日後にFAXに気が付いた」というミスマッチが発生していました。
「地域ケアネットワークで発信すれば、確実にすべての事業者に届く」「地域ケアネットワークをチェックしていれば、重要情報を見逃さない」ということが、地域の事業者すべての連帯意識を高める効果につながります。それは情報の管理に関して、「連絡したはず…」「聞いていない…」ではなく、発信者・受信者がそれぞれに責任を持つということです。

② 域内関連サービスの検索機能
二つめは、地域内の介護関連サービスの検索機能です。
これは、ケアマネジメントにおける高齢者(サービス利用者)と各サービス事業者つなぐもので、地域包括ケアシステムの「域内のサービスを効率的・効果的に利用する」という目的を達成するためには不可欠となる機能です。
ここでは、「施設系」「住宅系」「訪問系」「通所系」「短期入所系」など、サービス種別・サービス内容ごとに域内サービスが検索できるようになっています。またその市町村全体ではなく、「行政区単位」「地域ケア会議のエリア単位」など小さな単位での絞り込みも可能です。その他、訪問診療、配食サービス、見守りサービス、金銭管理サービスなど、介護保険サービス以外の生活関連情報も、網羅し、検索することもできます。
各サービスの検索方法・内容については、次回のコラムで示します。

③ 行政・業界団体・各事業所 双方向からの情報提供
三つ目は、行政・業界団体・各事業所からの情報発信です。
行政からは、申請や届け出などの指導に関する連絡や、資格試験の受験申込、制度変更に関する国の動向などの情報の発信、勉強会やセミナー情報などスケジュールに関するものは、上記①のカレンダー機能と連動します。
全サービス事業所への一斉連絡だけでなく、「介護保険施設のみ」「通所介護サービス事業者のみ」と限定したり、「老人福祉協議会」「老健協会」「看護協会」などの業界団体から、各協会内の事業者に限定して発信することもできます。更には、情報ルールを定めることにより、「介護支援専門員会」「社会福祉士会」などの個人資格者の団体からの発信も可能です。

各サービス事業所からは、独自に企画したセミナー・勉強会や、ケアマネ・家族向け見学会などのイベントの紹介のほか、域内事業者の合同忘年会のお知らせ、「譲ります・探しています」「忘年会のお誘い」といった様々な情報を発信することができます。特に、民間の単独デイサービスや訪問介護事業者は、単独で勉強会やセミナーを行うには限界があります。そのため、他の事業所がどのような取り組みをしているのか、どのような活動をしているのかわからなかった、興味がなかった人も、自由に様々な情報に触れることができるため、事業所間だけでなく、働く介護スタッフ間の連帯・連携の強化、一体感の醸成につながります。

以上、3つの基本機能を紹介しました。
実際の「地域ケアネットワーク」のイメージをしていただけたかと思います。
ただ、あくまでも、これらはあくまでも基本機能であり、それぞれの地域特性・地域ニーズに合わせて、組み合わせていく必要があります。「基本機能はこれだけあればOK」「ネットワークアプリケーションを導入すればOK」というものでもなく、その土台・バックワードになる情報発信・情報共有・情報管理のルールを、それぞれの地域で定めていくことが必要だということがわかるでしょう。
次は、②で述べた「域内関連サービスの検索機能」「サービスのマッチング機能」について、もう少し詳しく見ていきます。


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