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地域包括ケアの誤解 ③ ~方針なき地域ケア会議~

「地域包括ケアの推進」=「地域ケア会議」は大間違い

方針なき形だけの地域ケア会議は、無意味というだけでなく、有害


 

もう一つは、「地域ケア会議」です。
厚労省は、「高齢者個人に対する支援の充実」と「それを支える社会基盤の整備」を同時に進めていく「地域包括ケアシステム」の実現に向けた手法だとしており、すでに全国の市町村で行われています。

 

~よく考えられた地域ケア会議の5つの機能と役割~

この地域ケア会議は、5つの目的・機能が想定されています。

Ⅰ 【個別課題解決機能】
困難ケースに対して多職種が多角的に検討し、解決に導くとともに、ケアマネジメントの向上を図る
Ⅱ 【ネットワーク構築機能】
地域の多職種、関係機関が連携して課題に取り組むことで、相互連携を高める
Ⅲ 【地域課題発見機能】
個別ケース検討を通じて、解決すべき地域の課題を明らかにする
Ⅳ 【地域づくり・資源開発機能】
関係機関の役割分担、社会資源の調整を行い、見守りネットワークなど必要な資源を地域で開発
Ⅴ 【政策形成機能】
【地域ケア会議】で明らかになった地域課題に対して、市町村が新たな施策の立案・実行を行う


「地域ケア会議」の実施と、その5つの役割・機能は、よく考えられたものです。
高齢者の生活は「介護」「医療」だけ、また「訪問介護」「通所介護」だけと、一つの事業所、単独サービスだけで支えられるものではありません。認知症よるセルフネグレクト、家族による暴力・虐待、ごみ屋敷問題など、福祉的な課題や近隣トラブルを抱えるものも多くなっており、社会福祉協議会、福祉事務所、警察や消防署、弁護士などとの連携も重要になっています。

また、これらの機能はそれぞれ独立するものではなく、【Ⅰ個別課題解決機能】をファーストステップとして、「Ⅱネットワークの構築」「Ⅲ地域課題の発見」「Ⅳ資源開発」「Ⅴ政策形成」と、理想の地域包括ケアシステムの構築に、実務的な視点からつながっていくものです。
例えば、今後は「要支援・軽度要介護から重度へのリバランス」が進むことになりますが、「軽度要介護高齢者の孤独死を防ぐため、新聞販売店・牛乳配達員と連携し、前日の新聞等が取られていない場合は連絡してもらう」といった、地域的な取り組みが必要になってきます。個別の困難ケースへの解決・対応力だけでなく、ネットワークの強化、地域課題の発見、資源開発、政策形成につなげるために、それぞれの地域性に沿った「地域包括ケアシステム」の構築には不可欠な手法だと言えます。

 

~地域ケア会議は、企業のQCサークルと同じ道を辿る~

しかし、「地域ケア会議」は、ただ招集、開催すればよいというものではありません。
これによく似たものに、企業の「QCサークル活動」というものがあります。

「QC」というのは、クオリティコントロール(品質管理)のことで、「品質第一の商品をつくる」「顧客満足度と従業員満足度を向上させる」「作業工程の管理・改善」「品質・納期・コストの改善」に対する提案を、部署内、また部署を超えて小さなサークルを作って検討しようというものです。それぞれの部署の課題を発見し、部署間の連携強化することによって解決に導く、それを会社がバックアップするというもので、高度経済成長期に大流行し、ほとんどのメーカー、企業で行われていました。

しかし、現在、その多くは形骸化し、廃止されています。
会社が明確な方針を示さず、「何か問題を発見しろ・・」「課題をみんなで話し合え・・」というだけでは、「会議をすること」だけが目的となり、活性化しないからです。逆に、残業ばかりが増え、資料作りなどで本来の業務に支障がでるからと、取りやめる企業が増えています。

この「地域ケア会議」も同じことが言えます。
「皆さんで地域課題を検討してください」「困難ケースを討議しましょう」という漠然とした内容では、「あれができていない」「これが不足している」「こんな強化が必要」と、それぞれの地域ケア会議から課題が噴出します。しかし、財政的にも人材的にできることは限られていますから、すべての問題を解決することはできません。
結局、忙しい地域サービス事業者の管理者や地域包括支援センターの職員の時間を浪費させるだけで、効果が見えないために「忙しいから」「他の業務を優先」と参加者が減り、「改善策を提案しても、意味がない」と自治体に対する信頼度も低下することになります。

「地域包括ケアシステムの推進として、地域ケア会議を行っています」という自治体は多いのですが、このような形だけの「地域ケア会議」は無意味というだけでなく、明らかに有害です。地域包括ケアに向けて、「これからは地域が中心となって・・」と、今はまだ高い意欲・目標をもって行われている会議が多いでしょうが、早晩、多くのケア会議は確実にそうなります。また、事業者の管理者、各種業界団体の代表や役員ばかりになると、自らの事業、団体への利益につながる議論になりがちです。
「地域ケア会議が中核となって」「地域ケア会議の現場の声を聴いて」「トップダウンからボトムアップへ」というのは、耳当たりは良い言葉ですが、厳しい言い方をすれば、確とした方針を示せない自治体の責任逃れでしかありません。

「10年後、20年後の要介護高齢者の増加、財政見通し」「独居高齢化率、高齢者の密集割合」を基礎として、この市町村、この地域にはどのような特性があるかというデータとしてしっかりと示し、「地域包括ケアシステム推進の指針」「地域ケア会議の目的・役割」「どのような方針で課題を検討してほしいか」を明確に示せなければ、優秀な人材を集めても、有意義な議論などできないのです。

地域ケア会議は、地域包括ケアシステムの構築には、有効であり、かつ不可欠な手段です。
その機能を十分に発揮するには、市町村がイニシアチブをとり「地域包括ケアシステムの未来・方向性」に対して、明確な討議の指針を示す必要があるのです。

 

 

 

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