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地域包括ケアの土台は地域ケアネットワークの推進・構築・導入


多くの自治体で「地域包括ケアシステム」がお題目化しているのは、その土台となる情報発信・情報共有・情報管理を有機的・包括的に行う「地域ケアネットワーク」が構築されていないから。ここでは地域ケアネットワークがなぜ必要なのか、その全体像とその構築例、検討例について紹介する。

【特 集】 地域包括ケアの土台となる地域ケアネットワークを構築する 001 (全9回)


これからの介護政策の柱となるのが、「地域包括ケア」です。
それは、高齢者介護システム構築の権限・財源・責任が国から自治体に移ることを意味しています。公的な健康保険、介護保険が破たんすることはありませんが、このまま収支バランスを無視して放漫経営を続けていけば、間違いなく自治体の財政は破たんし「財政再建団体」に転落します。
それは遠い未来の話ではなく、この5年、10年内の話です。財政に危機意識をもつ首長も増えてきましたが、一方で「何から始めればよいかわからなない」という声は少なくありません。「地域包括ケアを推進しています」という自治体でも、地域ケア会議など国の指示に従っているだけというところが大半で、地域特性の分析や需要・財政の推計も不十分なまま・・・というのが実態です。


地域包括ケアとは何か、その推進の難しさ

地域包括ケアとは何か (全8回) で述べたように、これまで全国一律の基準で整備されてきた高齢者介護・福祉計画を、市町村などの基礎自治体が中心になって地域特性・地域ニーズに基づいた効率的・効果的なケアシステムに変えていくというものです。
しかし、それはそう容易なことではありません。
日本の高齢者医療・介護問題の本丸は「85歳以上の後後期高齢者の激増」です。 それは要介護発生率は約6割、重度要介護発生率も23.5%と、84歳までと比べて一気に高くなるからです。現在、600万人程度の後後期高齢者は2035年までの15年間で1000万人へと激増、「後後期高齢者1000万人時代」は2070年代まで続くことがわかっています。
一方で、介護を担う世代の人数(生産年齢人口)は減少するため、「支えるもの、支えられるもの」のバランスは極度に悪化します。現在、85歳以上の高齢者一人を12人の生産年齢人口で支えているのに対し、2035年では6.5人と半減、2065年には4人一人と1/3にまで減少することがわかっています。(超ハイパー高齢社会の衝撃 参照)

財政的にも、社会保障費の公的負担は限界を超えています。
いまでも税収の半分以上は社会保障費に消え、毎年1000兆円という巨額の赤字国債は増加の一途を辿っています。「国のバランスシートを見れば、日本の財政は健全だ!!」という識者は多いのですが、「この先、40年・50年も社会保障費の増加に耐えられるのか?」「後後期高齢者を支え続けることができるのが」と問えば、首を縦に振る人はいません。

「地域包括ケアの推進」という掛け声とともに、財源・権限ともに、大きく自治体に移行されることになりますが、それは財政難・人材難の問題、責任が国から自治体へと移るというだけです。
10年先、20年先も介護需要の増加に合わせて必要な人材・財源を確保できるという自治体は全国で一つもありません。超高齢社会という大波が押し寄せ、高齢者介護・医療の需要が激増するのを目前にして、すでに「国も自治体も、人もお金も全く足らない」という状態に直面しているのです。


地域包括ケアの基礎は、地域ケアネットワークの整備

介護に投入できる財政・人的は限られていますから、需要の増加に比例して、介護サービスを増やすことはできません。各自治体は、その脆弱な社会資源を知恵と創意工夫によって補い、公平・公正、かつ効率的・効果的なシステムを構築しなければなりません。それが地域包括ケアシステムの本当の目的です。
私は、その対策実務の第一歩となるのが、地域ケアネットワークの整備だと考えています。
地域包括ケアシステム ~ネットワーク構築の基本~ 🔗 で述べたように、その整備のポイントは、大きく分けて4つあります。


すべてに共通するのは、自治体が主体となって進めなければならないということです。それは、「地域包括ケアシステム」の最初のステップは、情報ルールの徹底による全体像の可視化だからです。
今後は、独居認知症高齢者、老老介護、認認介護、介護虐待など発見が難しく、また発見できても一つの事業所、一人のケアマネジャーだけでは対応できない難しいケースが増えていきます。介護サービスを増やすだけでなく、医療機関、老人福祉・法律家、更には民生委員や自治会、新聞販売所などとの連携も必要になってきます。様々な困難ケースを地域の課題として取り組むには、まず「地域介護・福祉の見える化」に取り組まなければなりません。

ルールの徹底・共有化は、劣悪な事業者の排除にもつながります。
「どこでもやっている・・・」「グレーゾーンだ・・・」と高齢者住宅の囲い込みや劣悪な無届施設、不正請求などが増えていますが、地域包括ケアシステムの時代には、「不正事業者」の排除も国ではなく各自治体の仕事です。「囲い込みに対する規制」「無届施設の排除」「介護報酬 不適切な運用例」などを丁寧に示し、域内のルールの周知や徹底をすることで、すべての事業者が公平・公正なルールのもとで、競争を行う環境を整えなければなりません。

また、ネットワーク化によって全体の情報を可視化・蓄積することで、個別事業者・個別の困難ケース検討ではなく、全体として「この地域にはどのサービスが足りないのか」「高齢者・家族・サービス事業者どのようなことに困っているか」「どのような政策・ルール化が必要か」ということが見えてきます。「〇〇エリアでは訪問介護スタッフが絶対的に不足している」「介護施設での転倒での家族とのトラブルが増えている」と、地域全体の問題点が見えてくれば、地域ケア会議で方策を検討することになります。

「効率的・効果的な利用希望者とサービス事業者のマッチング方法の検討」
「行政・業界団体・サービス事業者の情報発信・共有・管理業務の軽減」
「地域ニーズに沿った、情報ルールの検討・域内サービスの偏重・不足の可視化」

「医療行為や終末期に関する高齢者・家族の意思・希望の聞き取り」
「ケアカンファレンスに参加しない、できない家族への意思・希望の確認方法」
「セクハラや介護以外のサービスの強要など、問題のある利用者・家族への対応」
「施設・住宅・在宅における、転倒事故やトラブル時の対応」
「台風・地震・大雨・火災など災害発生時における連携・連絡体制の構築」

など、個別事業者の経営上の課題ではなく、多くの介護サービス事業者が困っている問題・課題に対して、自治体が率先してルール化し、情報共有することで、全体のサービスの質、ケアシステムの質は必ずあがります。更に、「情報の可視化」「情報ルールの共有」「情報発信の活発化」は、サービス事業者だけでなく、そこで働くスタッフの一体化、チームケアの進化につながっていきます。
言い換えれば、2005年に「地域包括ケアシステム」の方向性が示され、2025年の目標を目前にしても、多くの自治体で対策が進まないままにお題目化しているのは、その構築のための土台となる「地域ケアネットワーク」が検討・整備できていないからです。

ここでは、「地域ケアネットワーク」の考え方や目的などの全体像と、その一例として私たちが構築を推進しているクラウドサービスを使った地域包括ケアシステム「KaIT」の検討例をご紹介します。

※ 地域ケアネットワークシステム KaIT に関するご質問・お問い合わせは こちらへ>


地域包括ケアの土台となる「地域ケアネットワーク」を推進する (更新中)

 ➾ 地域包括ケアの土台は、地域ケアネットワークの推進・構築 🔗
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 ➾ 地域ケアネットワークがもたらす直接的効果とその広がり 🔗
 ➾ 地域ケアネットワークの推進方法 ~地域包括ケアのプロセス~ 🔗
 ➾ 地域ケアネットワーク 導入までの流れ・協力事業者の選定 🔗

【TOPIX】 キーワードを切り取る、超高齢社会を読み解く

  ☞ 地域包括ケアは超高齢社会を救う「魔法の呪文」ではない (全8回)
  ☞ 地域包括ケアシステム 構築の要件とポイント (全7回)
  ☞ 地域ケアネットワークの推進・構築・導入のポイント (全9回 更新中)
  
  ☞ 高齢者住宅の「囲い込み」とは何か、グレーかブラックか (全9回)
  ☞ 老人ホーム崩壊の引き金 入居一時金経営の課題とリスク(全8回 更新中)




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