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地域包括ケアへの取り組みの甘い自治体は崩壊する

市町村・自治体に迫られる、高齢者医療・介護対策の「選択と集中」

対策が遅れれば、遅れるほど、非効率なシステムが拡大し、不良債権は増えていく


 

これまで、「少子高齢化」が社会問題だという認識は共通されていたものの、「団塊世代が高齢者になる2015年問題」「団塊世代が後期高齢者になる2025年問題」と、常に問題は先送りをされてきました。

その理由は、一つではありません。
■ 右から左まで、ほとんどの国会議員が、バラマキ型の社会保障制度の膨張を政治利用してきたこと
■ 自治体や地方議員が、老人福祉施策や社会福祉法人を福祉利権や天下りの温床にしてきたこと
■ 社会保障費の不正請求、補助金不正など、公費横領に対する罰則や罪の意識が低いこと
■ バブル経済の崩壊、失われた20年の中で、社会保障に対する依存度が高まったこと
■ 『困ったら生活保護』『国の責任』と、国民の社会保障への権利意識が暴走していること
いわば、政治家、行政、自治体、国民すべてが、社会保障のぬるま湯につかった「総ゆでガエル状態」にあると言っても過言ではありません。

 

~自治体に迫られる「選択と集中」~

事ことに至っても、根本的な課題から目をそらした、「先延ばし体質」は変わりません。
今年(2018年)に入っても、内閣府は、国と地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化の時期について、従来の2025年から2年後退し、2027年度とする試算を出しています。
では、「2027年には確実に実施できるのか・・」と言えば、それはほぼ不可能です。
2027年プライマリーバランス黒字化のためには、2020年度以降のGDP成長率が、年3.1%~3.5%であることが基本ですが、いまだバブル崩壊後のデフレを脱却したとはいえず、2016年度の成長率は1.0%でしかありません。逆に、2020年までは一定の成長が見込まれるものの、東京オリンピックが終われば、その反動で景気は低迷するというのが、多くの経済学者の一致した見方です。
一方の社会保障関係費は、今後、急速な勢いで膨張します。

よく「経済」と「社会保障」は国の両輪だと言われます。
ただ、経済は波のように変動しますが、今後、社会保障費は直線的に、急角度で増加していきます。「AIが・・ロボットが・・経済をけん引する」「介護ロボットが・・外国人介護労働者が・・」という人もいますが、「ITバブル」の時も同じような話をしていました。
このような、先送りの「たら、れば」ばかりの話で、効率性も公平性、持続性も無視したまま社会保障費を膨らませたために、今のような財政状況になったのです。

これは少子化も同じです。少子化・子育て対策が社会問題として認識され始めたのは、ここ数年です。
人口を維持するためには、合計特殊出生率は2.07が必要だとされていますが、1975年には2.0を下回り、1989年には1.57、2005年には1.26まで落ち込んでいます。それでも総人口が減少しながったのは、平均寿命が伸びたから、つまりお年寄りが増えたからです。今さら「人口減少時代に入った」などと騒いでみても、その対策のポイントとなる時期は遠く過ぎているのです。

長期的な財政管理、制度マネジメントの視点が皆無のまま、放漫経営で問題解決を先延ばしし続けた結果、生産年齢人口は激減、高齢者は激増、国は社会保障政策のコントロールができなくなったのです。そのためその責任と後始末を自治体に押し付け、「地域包括ケアシステムだ」「これからは市町村、都道府県が中心となって頑張ってください」などと、臆面もなく言い始めているのです。

しかし、もうすでに「厚労省や政府の責任だ・・・」というレベルの話ではありません。
「財政・人材が絶対的に不足する中での高齢者対策の見直し」は、どうしてもやらなければならないことで、しかも、その対策の時間は、ほとんど残されていないのです。
高齢者にとって、医療や介護は、必要に応じて購入する一般的な「商品・サービス」というものではありません。介護が止まれば、食事を採ることも、トイレに行くことも、起き上がることもできません。医療も同様で、「インフルエンザにかかった、ケガをした」という緊急時のものではなく、高血圧や糖尿病の管理など日々の生活に不可欠なものですし、これからはターミナルケアも重要になってきます。
適切な介護や医療が受けられなければ「安心・快適」の生活ではなく、高齢者は最低限の生活や、生命の維持さえできなくなるのです。

地域包括ケアシステムは、いわば、自治体による高齢者施策の「選択と集中」です。今まで、「介護だ、福祉だ」「あれも大切、これも重要」「あの人も、この人も困っている」と膨らみ続けてきた社会保障政策を、それぞれの地域が基礎となったシステムに抜本的に作り直さなければならないのです。

 

~鍵を握るのは「都道府県」の調整力・指導力~

ここまで、「地域包括ケアシステムの構築を主体となって行うのは市町村だ」と述べてきましたが、この問題は、一部の政令指定都市を除くと、各市町村で解決できるレベル、範疇を大きく超えています。
人口減少と高齢化が、全国の自治体で一気に進むからです。

人口規模別にみると、2010年から2040年にかけて、人口が5000人未満の自治体は226から370へと1.6倍に、同時に、高齢化率が40%以上の自治体が87(5.2%)から10倍の836(49.7%)と、約5割に達します。特に、この人口減少、高齢化が顕著となるのは、北海道、東北、中国、四国です。1万人以下の人口規模で、高齢化率が50%~60%、後期高齢化率が30%~40%となれば、その市町村単独で「重度な要介護状態になっても・・住み慣れた地域で自分らしい人生を・・最後まで・・」などというのは、絵空事でしかありません。
都道府県が積極的にイニシアチブをとり、市町村の枠を超えて広域で検討する必要があるのです。

もう一つは、早急な対策が必要だということです。
「都道府県がイニシアチブを・・」といっても、都道府県単位でみても、人材の確保は難しくなります。
下の表は、都道府県別に、85歳以上の人口を生産年齢人口(16歳~74歳)で割ったもので、一人の85歳以上の高齢者を、何人の生産年齢人口で支えるか・・という指標です。

東北や北海道、四国、九州では、現在10人程度ですが、これが3人~4人になっていきます。
特に、秋田県は2015年の高齢化率は33.8%ですが、2040年には43.8%、その他、青森、高知、北海道、徳島などでも、40%を超えます。

東京や愛知など都市部の方が数字は高いのですが、地方と比較してまだ大丈夫なのかと言えば、そうではありません。今でも、一番介護スタッフの確保に苦労しているのは東京や神奈川といった大都市ですが、2030年にはその数字は半分以下に、2040年には1/3となります。このまま推移すれば、介護スタッフ不足は、東京や神奈川、大阪、京都など都市部の方が、確実に、より悲惨なことになります。

今でも、「希望者が多い特養ホーム」「補助金が出るからサ高住」と長期的視点のないまま、目先の人気取りや補助金目的に施設や高齢者住宅が増え続けていますが、あと数年後には、そのほとんどは「入居希望者がいても、スタッフがいないので空所」と不良債権化します。つまり、「地域包括ケア」の対策が遅れれば遅れるほど、解決困難な不良債権や借金が増えていくということです。

この「地域包括ケアシステム」は、単なる「要介護高齢者対策」ではありません。
市町村の統合・再編、都市の集約・再生を含めた、自治体のグランドデザインの一里塚なのです。
全国的な介護保険制度は破綻しなくても、その自治体は破綻、「財政再建団体」に転落します。
そうなれば、「高負担・低福祉」という最悪な状態となり、早晩、その自治体は消滅していきます。
自治体、地域の介護事業者、医療機関だけでなく、その地域のすべてのフォーマル、インフォーマルサービスを総動員して、一刻も早く対策を検討しなければなりません。
これができないと、自治体としての存在意義はありません。
2040年には、自治体の半数が消滅の危機に陥るという報道もありますが、市町村だけでなく、都道府県の名前も消滅することになるでしょう。

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