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地域包括ケアシステムに必要な「4つ」の構成要素

地域包括ケアシステムは、単なる「介護サービスの整備計画」ではない。

【設置運営基準】【ネットワーク】【低所得者対策】を含む包括的対策が必要。


 

自治体の関係者と話をしていると、漠然と「地域包括ケアシステム=将来的な介護医療サービスの整備計画」だと誤解している人が多いように感じます。公平性・効率性・持続性の観点からの「サービス整備計画」は重要な柱であることは間違いありませんが、検討すべきことはそれだけではありません。
地域包括ケアシステム構築の柱となる4つの構成要素を考えます。

 

【各種サービス事業計画】
まず一つは、介護サービスを中心とした整備計画です。
ただ、市町村単位で「通所介護 〇ケ所」「特養ホーム 〇床」といった漠然としたものではなく、訪問サービス、通所サービスの指定にあたっては、基本となる対象地域・対象エリアを設定し、その対象地域のサービス実施に責任を持ってもらうなど、事業者との個別の協定も検討しなければなりません。特に、社会福祉法人は、民間の介護サービス企業とは違うのですから、そのエリアの福祉的サポートが必要な困難ケースの受け入れも、積極的に行ってもらう必要があります。

高齢者の住まいについても、計画的に進めていかなければなりません。
現在のサービス付き高齢者向け住宅は登録制のため、事業者都合だけでどんどん数は増えていきます。
一部の自治体は、「お金がかかる特養ホームではなく、低価格のサ高住を歓迎している」などとのんきなことを言っていますが、サ高住の自己負担が安いのは医療や介護サービスをたくさん使わせているからです。本来自己負担であるべきものを介護保険や医療保険に付け替えているにすぎません。このような「囲い込み型」のサ高住や住宅型有料老人ホームが増えれば、「地域包括ケアシステム」はコントロール不能となります。

これは介護付有料老人ホームも同じです。訪問サービス、通所サービスは、運営主体が違っても、サービス内容や価格設定にそれほどの違いはありません。
しかし、高齢者住宅事業は、それぞれの運営主体、事業所によって、建物設備やサービス内容、ターゲット、価格設定は違います。「特定施設入居者生活介護 60名」などと指定数だけ設定し、事業者任せにすると、その市町村、地域ニーズにマッチしないものが作られ、そのまま不良債権となります。
サービス種別、サービス量だけではなく、そのエリアやサービス内容についても、整備計画の中で検討しなければなりません。

 

【設置運営基準・指導監査体制】
二つ目は、設置運営基準の整備、指導監査体制の構築です。
これは、①の「各種サービス事業計画」と一体的なものです。
厚労省は訪問介護、通所介護、特定施設入居者生活介護など、それぞれの介護サービス事業の設置基準、運営基準を介護保険法で定めています。その根幹は法律に準拠する必要がありますが、各自治体の地域ニーズに合わせて、一部緩和したり、また強化したりということも必要になってきます。

これは介護保険法だけでなく、老人福祉法の「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」や高齢者住まい法の「サ高住の登録基準」も同じです。今後、整備が必要なのは激増する「重度要介護高齢者」に対応できる住まいです。現在の有料老人ホームやサ高住の基準だけでは、要介護高齢者に対応することができません(参照 制度基準に沿って作った高齢者住宅欠陥商品🔗)から、「重度要介護高齢者に対応できる高齢者住宅をつくる」という指針を明確にして整備する必要があるのです。

また、現在、全国で無届施設が課題になっていますが、「有料老人ホーム基準に合致しないからダメ」ということでは、対応の方法がありません。ただ、なし崩し的に基準を緩める、見て見ぬふりをするものではなく、届け出や情報公開を徹底させ、入居者の人権や安全が阻害されないように、指導や監査体制を強化しなければなりません。

 

【ネットワークの構築】
三点目は、ネットワークの構築です。
最近、介護福祉系の展示会でも、要介護高齢者の個別情報をサービス事業者間で共有・管理する「地域包括ケア 管理ソフト」というものが増えてきました。しかし、個別連携はケアマネジメントのケアカンファレンスで行うものであり、「地域包括ケアシステム」における連携・ネットワークは、まったく別のものです。

「地域包括ケアシステム」のネットワーク構築のポイントは3つあります。
① 自治体の責任でネットワーク構築を行うこと。
② ネットワークとは、地域関連サービスの情報の取り扱いなどルールの設定
③ ネットワーク参加やルールの順守は、その地域のすべての関連サービス事業者の責務

簡単に言えば、「地域包括ケアシステムのネットワーク」とは、自治体が主導して、各事業者間での情報発信や情報の取り扱い、連携などのルールを定め、それを、すべての関連する事業者に徹底、順守させることです。「インフルエンザなどの感染症発生時の情報発信」「緊急ショート利用時の申し送り・注意点」「医師への情報共有」「ターミナルケアに向けての支援」など、検討すべきことはたくさんあります。
このネットワークを機能・向上させれば、その自治体の効率性・サービス力は、確実にアップします。

 

【自己負担の見直し・低所得者対策】
四点目は、自己負担の見直し・低所得者に対する減額制度です。
現在の医療保険、介護保険の低所得者対策は、前年度の収入を基礎として行われています。
これは、特養ホームのホテルコスト減額など一部を除き、高齢者医療・介護でも同じです。
もちろん、「医療や介護の保険料・利用料は安い方が良い」に越したことはありませんが、財政は極度に逼迫しています。特に、高齢者は年金生活者がほとんどですから、その保有資産の有無にかかわらず減額対象となっています。

そのため、この数年の内に、「マイナンバー制度導入」と並行して、「前年度収入だけでなく、金融資産も含めて負担可能額を算定」という方向に向かっていきます。合わせて、現在ユニット型特養ホームの負担最高額も、現在の13万円から2倍程度に上がるでしょう。
これらの減額制度の基礎については国が定めることになりますが、それぞれの自治体の地域特性に合わせて、独自に対策をとることが必要になります。

 

以上、地域包括ケアシステムの4つの構成要素、柱を挙げました。
「整備計画」「設置運営基準」「ネットワーク」「低所得者対策」のどれが欠けても、システムはできません。地域包括ケアシステムは、その名の通り「介護サービス整備計画」ではなく、「包括的なシステムの構築」です。自治体の責任は重く、その検討課題、やるべきことは、相当広範囲に渡るということがわかるでしょう。

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