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地域包括ケアシステム ~ネットワーク構築の基本~

地域ネットワークは、個別の事業者間連携ではなく自治体主導

情報ルールの作成 ・ 包括的連携 ・ ルールの徹底・地域個別化


 

高齢者介護は「チームケア」です。要介護高齢者の生活を支えるためには、「介護・医療・保健・福祉」など、制度・法人・業種・事業所の壁を超えた連携が不可欠です。
これからは、自宅や高齢者の住まい(特養ホーム、有料老人ホーム、サ高住など)での、看取りケア、ターミナルケアが必要となることから、医療との連携も重要になります。

しかし、ここでお話する「地域包括ケアシステム」のネットワークは、個別の事業者間連携や入居者情報の共有などとは全く別のものです。まずは、「地域包括ケアシステムのネットワークとは何か」「どのようなネットワークが必要か」を整理します。

 

~地域包括ケアシステムのネットワーク構築の基礎~

「地域包括ケアシステム」のネットワーク構築のポイントは4つあります。

まず一つは、ネットワーク構築は自治体の責任で行うべきものだということです。
「地域ケア会議によって連携の強化を図っている」という自治体がありますが、介護サービス事業者間の個別連携、働くケアマネジャーの人間関係に依存した属人的なものは、ネットワークとは言いません。中心となっていた地域包括支援センターの職員や医療連携のリーダー格の医師がいなくなれば、とたんに機能しなくなります。
「地域包括ケアシステム」のネットワークは、個人ではなく組織的なシステムです。自治体の責任で「どのようなネットワークを作るのか」「何の目的で整備するのか」を明確に示して、設計しなければなりません。

二つ目は、情報ルールの作成です。
地域包括ケアシステムのネットワークの基本は、地域内の情報の集約と共有のルールを定めることです。
例えば、インフルエンザや疥癬などの感染症や皮膚病が発生した場合、自治体に報告するとともに、それが広がらないよう、一刻も早く、域内のすべての関連サービス事業者に知らせる必要があります。その他、個人情報共有時の注意点、サービスの空き情報の発信方法、書式・フォーマットなど、域内で共有しなければなりません。これらをしっかりとルール化することが、ネットワークの基礎となります。

三点目は、包括的連携です。
ネットワークの参加や情報ルールの順守は、その地域内すべての関連サービス事業者の責務です。
ネットワークといっても、SNSなど個人の趣味や嗜好によるものではありませんから、「参加したい人だけ参加する」「一部の事業者だけルールに従う」「守っていない事業所もある」ということでは効果がありません。
各自治体は、指導や監査を通じて、ルール順守を徹底し、各サービス事業者、関係機関に義務付けなければなりません。

四点目は、地域の個別化です。
述べてきたように、大都市部、地方都市、山間部、事業者数、事業種別、人口規模、高齢者規模などによって、それぞれ「地域包括ケアステム」の形は変わってきます。
それはネットワークも同じです。市内だけで事業所数が1000~2000か所という自治体もあれば、50か所未満というところもあります。地域特性・地域ニーズに沿った、個別のシステム、情報ルールの検討が必要です。また、自治体全体のネットワークだけでなく、その地域内個別の情報ルールなとも、「地域ケア会議」を通じて、検討することになります。

 

~ネットワーク構築の目的は、効率化・サービス向上・見える化~

ネットワークを構築するためには、「何を目的としてルール・ネットワークを構築するのか」を明確にしなければなりません。その目的は、大きく分けると3つあります。

一つは、業務の効率化、社会資源の効率的運用です。
例えば、ある高齢者が、家族が病気になって2週間程度の「緊急ショートステイ」が必要になったとしましょう。
デイサービス利用中だけれど、帰っても誰もいない、自宅に返すことができないという緊急を要するケースもあります。多くの場合、ケアマネジャーがそれぞれの事業者に電話をして、受け入れ可能な事業所を探しますが、予約で埋まっているケースも多く、見つけることはそう簡単ではありません。
しかし、ネットワークの中で、「ショートステイの空所」が整理されていれば、手間と時間をかけて、一つ一つの事業所に連絡する必要がありません。どこが空いているか、受け入れの見込みがあるかが、わかるからです。

これはショートステイの事業者にとってもメリットがあります。
月初めは予約で一杯だったとしても、対象は要介護高齢者ですから、体調変化による入院などでキャンセルになる可能性は高く、すべて予定通りに利用があるわけではありません。そのままでは収益減ということになりますが、「明日から一週間、空所がでました」となれば、すぐに利用したい人もいるでしょう。
最近は、特養ホームの入院ベッドの活用や介護付有料老人ホームの空きベッド利用のショートステイも増えています。限りあるサービスの効率利用という側面からも、とても重要です。

二つ目は、リスクマネジメントを基礎としたサービス向上です。
通常、介護サービスの利用にあたっては、事前にアセスメントの情報提供、ケアカンファレンスを行い、利用者・家族と面談し、トラブルや事故リスクの可能性や対策を、相互に確認します。
しかし、特に上記のような緊急利用の場合、十分に状態把握やリスク判断ができないまま、飛び込み利用となるため、事故やトラブルのリスクが増加します。それは利用者だけでなく、事業者にとっても大きなリスクです。
そのため、「どんな疾病があるのか」「食事のアレルギーはないか」「急変時の医療機関受診」などケアマネジャーが受け入れ側にどのような情報を提供すべきかを定めておく必要があります。同時に、事故やトラブルのリスクについて、家族にもしっかり伝えておかなければなりません。
このような情報のルール化は、リスクマネジメントを基礎としたサービス向上だけでなく、ケアマネジャーや現場の介護スタッフの負担軽減にも不可欠なものです。

三点目は、地域ニーズの発掘・必要サービスの見える化です。
情報ルールを基礎としたネットワーク化は、情報の見える化・サービスの見える化につながります。
今後は、「老老介護」「認認介護」「独居認知症」「介護虐待」など、一つの事業所、サービスだけでは対応できない複合的な困難ケースが増加します。その難しいケースを早期発見し、情報を集約・共有して、緊急避難を含めて、その地域全体の課題として、解決していかなければなりません。一つの事業所、一人のケアマネジャーに過度な負担がかからないよう、地域全体で取り組むには、「情報・困難ケースの見える化」が不可欠です。

また、ネットワーク化による全体の情報を蓄積することで、個別の事業者・個別のケースではなく、全体として「どのサービスが足りないか」「どんなことに困っているか」ということが見えてきます。それを地域ケア会議の中で話し合い、ルール改定を行うとともに、「必要不可欠」「緊急性が高い」という事業を増やしていくことになります。

これらは介護と医療との連携においても同じことが言えます。
「医療や終末期に関する高齢者・家族の意思への聞き取り・希望」
「ケアカンファレンスへの参加、医療行為・生活への影響・リスクに関する説明のポイント」
「緊急時、急変時の介護・看護スタッフの対応の検討」
「高齢者住宅のかかりつけ医と総合病院との連携の在り方」
など、効率化、透明化のためにルール化できることはたくさんあるはずです。
ネットワークというのは、一定の目的をもってルール化し、全員で共有化することで、その地域全体のチーム力をアップさせることなのです。
それらを取りまとめ、構築するのは、自治体のリーダーシップです。

 

 

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